オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

できる大人の語彙力3553

日本語能力向上研究会・著/リベラル社・刊

499円(キンドル版・税込)/1,210円(紙版・税込)

電子版のほうがかなり安いので、抵抗のない方はぜひ電子版をお求めください。スマホやタブレット、PC、専用端末など、身近な機器で閲覧できるので、辞書的に使ったり、文章を書くときの参考に使ったりできます。

版元のリベラル社は名古屋の出版社。出版社は圧倒的に東京が多いのですが、名古屋というのは異色です。どんな出版社か気になる方は、こちらをご覧ください。
https://liberalsya.com

奥付を見ると、発行がリベラル社、発売が星雲社となっています。星雲社は取次口座を持たない出版社が口座を借りて本を流通させる時によく使う会社です。取次店は出版社の企画力をテストする意味で、口座を開設する前にこの会社を通すことを勧めています。

一般的な本では「はじめに」や「まえがき」が数ページあって、そこに本書の執筆の目的やどんな人に読んでほしいかといった著者の思いが記されているものですが、本書はそれに相当する部分がほんの少ししかありません。引用してみます。

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この本は、語彙力を「効率的」に強化することを目的として作られたものです。
日常生活・社会生活における、様々な場面に応じた言葉の知識を多く身につけておくことによって、理解力と伝達力は大きく広がっていきます。
語彙不足を「コミュニケーションのブレーキ」とさせないために、そして語彙を増やして世界を広げるために、本書のご利用をお勧めします。日本語能力向上研究会
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そして本書の使い方が同じページに載っています。それによると、本書に収録された語彙3553は、各メディアや一般書籍、高校・大学受験の現代国語などを抽出対象として選び出されたもののようです。そして、それらの語句は出現頻度と重要度によって4つのレベルに分けられ、掲載されています。「基本中の基本」「レベル1」「レベル2」「レベル3」の4つです。

本書は読み物的な流れではなく、辞書的な構成で作られています。そのため目次は非常にシンプルで、4つの要素しかありません。

・レベル1~3
・レベル2のみ
・基本中の基本
・索引

「レベル1~3」は章立てで分かれているのではなく、すべてのページが3分割されていて、上からレベル1、レベル2、レベル3となっています。同じページを上から下に見ていくと、下にいくにつれて難しい言い回しの言葉になっています。

なのでレベル1をずっと横に見ていってもいいし、上から下に眺めながらページをめくっていっても楽しい、そんな作りになっています。

そして、日本語にあまり自信のない方は、まず「基本中の基本」のページから見るといいでしょう。そこを読了してから、初めのページに戻って、レベル1を横に見ていくとだんだん日本語レベルが上達していくようになっています。

最後の索引には、本書に収録された3553語すべての掲載ページが載っていますから、ここで目的の言葉を探して意味を調べるといった国語辞書的な使い方も可能になっています。

すべての語句と意味には囲みがありますが、この囲みは「ことわざ」「一般語句」「カタカナ語」「四字熟語」でそれぞれ形が違います。形を覚えれば、その語句が何に属しているのかがひと目でわかります。

著者名ですが、これは無名のライターが数名で本を作る時によく採用する方法です。著者の名前で売る本ではないということで、それらしい団体名をでっちあげているわけです。

一応、奥付の上には著者名について簡単な説明があります。「社会人として恥ずかしくない仕事や暮らしに役立つ語彙や、日本語の使い方を正しく知ってもらうために活動する組織」ということです。やはり意味不明ですね。

では本文に入っていきましょう。まずは巻頭のお勧めに従って、「基本中の基本」から見ていくことにします。

最初のページに収録されているのは、次の語句です。
「頭をもたげる」「引きも切らず」「横行」「逐一」「威風堂々」「あらまし」「尻馬に乗る」「ヒューマニズム」「機知」「顧問」「あてがう」「ほうほうの体」「出来合い」「気を吐く」「高圧的」「アドバンテージ」

確かにこのレベルだと「知らない」という言葉は出てこないでしょう。このレベルにすべて目を通して、自分の国語力を確認することもできそうです。

次のページも見てみましょう。
「派生」「異名」「トレンド」「安息」「自暴自棄」「殺める」「あるまじき」「行間を読む」「溜飲が下がる」「命辛辛」「脂がのる」「適材適所」「感極まる」「謗る」「アブノーマル」「仮想」

え、「いのちからがら」と「そしる」が読めませんでしたか? そういうあなたは本書を購入して、ぜひ「基本中の基本」からお読みください。

ではもう1ページいきましょう。
「豊饒」「はからずも」「おくびにも出さない」「ストイック」「お茶をにごす」「十年一日」「一刀両断」「踏襲」「とん着」「一筋縄ではいかない」「大任」「効用」「漏洩」「メディア」「感慨無量」「よこしま」「虎の子」

「ほうじょう」は読めましたか? それでは巻頭に戻って「レベル1~3」の本文を見ていくことにします。

最初のページに出てくる語句は次のようなものです。
【レベル1】
「オーダーメイド」「林立」「おけらになる」「残党」
【レベル2】
「老いては子に従え」「彷徨」「瀟洒」
【レベル3】
「生殺与奪」「耳朶に触れる」「挙措」

いかがですか? レベル3の「じだ」や「きょそ」は読めない人も少なくないと思われます。以下、同じような感じでページが進んでいきます。

次のページです。
【レベル1】
「同工異曲」「鼓舞」「細大もらさず」「労を厭わぬ」
【レベル2】
「耐性」「ガイドライン」「草案」「十把一絡げ」
【レベル3】
「偉丈夫」「喫緊」「不得要領」

昔、「こぶ」を「こまい」と読んで恥をかいた出版社の社長がいましたが、レベル1と2の語彙は正確に読めるようにしておきたいですね。ちなみに「じっぱひとからげ」「いじょうふ」は間違いやすい読みですからご注意を。

「ガイドライン」のような外来語がはたして日本語の語彙かどうかは見解の分かれるところでしょうが、日常語になっている外来語は日本語として扱ってよいというのが著者グループの考えなのでしょう。

もう1ページ見てみましょう。
【レベル1】
「追悼」「レア」「背信」「重用」
【レベル2】
「徒手空拳」「意に染まぬ」「静謐」「兼備」
【レベル3】
「大事の前の小事」「論客」

「ちょうよう」は間違って「じゅうよう」と読んでしまうと「重要」と区別がつかなくなります。レベル2の「せいひつ」は意外と読めない人が多かったりする言葉です。静かで落ち着いていることを表す語句ですね。

では次にページのすべてがレベル2で埋められたところを見ていきましょう。このページがあるということは、著者グループが本書に掲載する語彙を集めた時に、レベル2の語彙が多かったことを意味します。

最初のページです。
「瞠目」「意訳」「セキュリティー」「不条理」「性悪説」「頓死」「四方山話」「つぶしがきく」「弛緩」

いきなり「どうもく」が読めずにまごついた人はいませんか? 「目をみはる」という意味で、「瞠目すべき光景」などと使うと、少しインテリっぽく見られます。

「とんし」は急にあっけなく死ぬこと。「よもやまばなし」はいろいろな話題のことを指します。「つぶしがきく」は「ある仕事をやめても、他の仕事でできる能力があること」ですが、ときどき意味を取り違えて使っている人がいるので気をつけましょう。

次のページにいきましょう。
「風紀紊乱」「頒布」「鈴生り」「遁走」「歳時記」「想念」「戯作」「百出」

いきなり「ふうきびんらん」という読めたとしても書けそうにない言葉がでてきました。「世の中や男女の仲がだらしなく乱れていること」ですが、まず使うことはなさそうです。

「はんぷ」は間違って読む人が結構いる言葉です。「品物や資料などを広く配ること」です。

「すずなり」は漢字で表記することがあまりない言葉です。「果実がたくさん群がりなっていること」で、転じて人が大勢集まっている様子を表現する言葉としてよく使われます。

「げさく」は間違って「ぎさく」と読む人がいるので注意が必要です。「たわむれに詩や文を作ること」なので、職業作家は戯作家とは言いません。たまに、洒落でそういう表現を使う人はいますが。

少しとばして先のページを見てみましょう。
「気質」「デリカテッセン」「撞着」「初動」「ハイパー」「新機軸」「千編一律」「末枯れる」「立志伝」「持って回った」

「かたぎ」は「きしつ」と読んでも意味は通りますが、ここは昔ながらの読み方ができたほうがスマートです。「どうちゃく」は「つじつまが合わないこと」で、「自家撞着」は自己矛盾の状態を示します。「contradiction」という同様の意味を持つ英単語が添えられています。

「うらがれる」は、おそらく正確に読める人のほうが少ないのではないかと思われる言葉です。「冬が近づき、草木が枯れるさま」を意味します。「die down」という英訳が載っています。英語にはカタカナが振られているので、苦手な人でも読むことができます。

先にいきましょう。
「軽佻浮薄」「格式ばる」「色を正す」「先達」「安普請」「尋ねあぐむ」「上申」「激高」「大車輪」

「けいちょうふはく」は「軽くて薄っぺらいさま」を表す熟語で、英語は「frivolous」だそうです。「佻」の字は、この言葉以外では目にすることがあまりない漢字です。

「いろをただす」は正確な意味を知っている人が少ない言葉です。「あらたまった顔つきをする」という意味で、「色を正して謝罪する」のように使います。英語は「look serious」で、こちらのほうがわかりやすいですね。

「たずねあぐむ」も意味を取りにくい言葉です。英語の「at loss how to reach~」を見たほうがわかりやすいかもしれません。「目的の場所がわからず、どうしたらよいか迷う」ことです。

最後にあと1ページ。
「ドメスティック」「執刀」「遍歴」「迷妄」「少年老い易く学成り難し」「猪口才」「古老」「加虐」「詰め腹を切る」

「めいもう」は「事実でないことを事実と思い込むこと」ですが、昨今のフェイクニュースに踊らされている人がまさに迷妄ですね。英語は「delusion」だそうです。

「ちょこざい」は「赤胴鈴之助」の世代の人なら「猪口才な小僧め、名を名乗れ!」「赤胴鈴之助だ!」というやりとりで記憶している言葉でしょう。今は使われているシーンをほとんど目にしません。意味は「小生意気なこと」で、英語は「impertinent」です。

「つめばらをきる」は「とらなくてもよい責任をとらされること」で、違う意味で覚えている人は注意しましょう。

以上、本書のごく一部分を紹介しました。興味があったら、ぜひご一読をオススメします。


 

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