オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

スベらない商談力

小森康充 著 かんき出版

1,470円 (税込)

「根性営業」という言葉があります。「名刺を100枚もらうまで帰ってくるな!」「今日のノルマは飛び込み50件!」といった勇ましいかけ声とともに、体力と気力で当たって砕ける古典的な営業手法を指します。

多くの若者は、いや、若者に限らずほとんどの人たちが、このタイプの営業を嫌がります。そのために面接で「営業以外なら何でもやります」などと答える人が出てくるわけです。入社してすぐに辞めてしまう人の中には、この種の営業を強制されて嫌気がさしたケースが多いといいます。

著者は新卒でP&Gジャパンに入社しましたが、たった一人で和歌山県全域を担当することになり、この「根性営業」で疲れ果ててしまいます。もともと無口でぶっきらぼう、態度の大きかった著者にとって、営業の仕事は気力と体力をすり減らす以外の何者でもありませんでした。そして、ついに病気になり、1ヵ月も寝込んでしまいます。

そんな著者が生まれ変わったのは、ボブ・ヘイドンという世界的なトップトレーナーとの出会いでした。体力や根性で結果をもぎ取るのではなく、「相手の心の窓を開く」という作業でロスのない商談を実現する方法を教わったのです。その教えを忠実に守った結果、著者はP&Gジャパンのトップトレーナーとして、20年勤めることができました。

本書はそんな著者が営業マンに限らず、すべての「商談をする人」に向けて書き下ろした、「相手の心の窓を開く方法」です。これさえ身につければ、自分の思いが相手にうまく届かず、気力や体力をすり減らしてしまうことがなくなります。そして商談そのものが楽しくなり、豊かな人脈を形成することができるようになるでしょう。

本の構成は6章立て。以下、章のタイトルをご紹介します。
第1章 お客さまとの信頼関係を築く
第2章 お客さまを深く理解する
第3章 お客さまとの関係をぐっと深める
第4章 お客さまのニーズをクリエイトする
第5章 お客さまの利点にフォーカスする
第6章 商談成立!効果絶大テクニック

本文はライトグリーンと黒の2色刷り。要所に図解や表が挿入され、重要な部分は太字になっています。読み物というよりは、参考書のイメージです。難解な専門用語はいっさい使われておらず、非常に平易な言葉で読者に語りかけてきます。

たとえば第1章では、簡単なエピソードの中にボブ・ヘイドンの言葉が引用されています。「人と人との信頼関係は、正直で誠実な態度をとること、相手の話をしっかり聞くこと、接触する回数を重ねること、相手をチャンピオンと思うこと、その4つで決まる」というものです。

ここでいう「チャンピオン」とは、アメリカのカルチャーにおける言葉で「宝物」や「すばらしい人物」の意味だそうです。実際に、ボブは世界企業のトップトレーナーであるにもかかわらず、著者の目の前で意固地な上司と気の強い女性社員の対立を解きほぐしてみせます。

興味深い表現方法として、お客さまとの会話のステップに応じて、窓のイラストが添えられている部分があります。窓の開き加減がそれぞれ違っていて、お客さまの心の窓がセールストークによってどのくらい開いているかがわかるようになっています。これは自分でもやってみたくなるはずです。

全体としてはコーチングと自己啓発書のエッセンスが入ったビジネス書ですが、「上から目線」の本ではないために、誰でも気軽に参考にできるでしょう。すべての社会人に勧められる好著だと思います。


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