オススメ参考書~読んだら即実践してみよう!

松下幸之助 7つの「修羅場」

竹内一正 著 アスキー新書

790円 (税込)

以前に本コーナーでご紹介した著者のアスキー新書2冊目です。前の本は「ジョブズvs松下幸之助」でしたが、今回は松下幸之助1人に焦点を絞り、偉大な経営者に訪れた7つの大ピンチと、彼がそれをどうやって切り抜けたかを解説しています。

前にもご紹介したかもしれませんが、著者は松下電器、アップルコンピュータ(現・アップル)、ゲートウェイといった内外の代表的ものづくり企業に籍を置いた人物。現在はビジネスコンサルタントとして著述や講演に活躍中です。

内容は、タイトルの通り「7つの修羅場」を7章で展開し、前書きと後書きが付されています。以下、章のタイトルを引用します。

壱の修羅場「不況との戦い」
弐の修羅場「外圧との戦い」
参の修羅場「ライバルたちとの戦い」
四の修羅場「時の変化との戦い」
五の修羅場「新技術との戦い」
六の修羅場「価格破壊との戦い」
七の修羅場「理不尽との戦い」

それぞれの章の中には、松下幸之助と松下電器だけでなく、その時代に起こったたくさんのエピソードがちりばめられており、さながら「ミニ昭和産業史」といった趣です。昭和の大恐慌で工場の職員を半分に減らす必要があった時、松下幸之助が打ち出した「半日操業、あとの半日は全員で営業」という驚天動地の解決策。強気で住友銀行の口座を開設した2ヶ月後に、それまでのメインバンクが倒産したという幸運。第1章のエピソードを読んでいるうちに、どんどん物語に引き込まれていきます。

第2章では松下幸之助が戦後、GHQによって公職追放の処分に遭い、そこからどのように復活したかが語られます。東奔西走してGHQの非を唱えた腹心の部下や、1万数千にもおよぶ署名を集めてGHQに提出した松下労組の活動は、彼が非情の人ではなかったことをうかがわせます。そしてオランダ・フィリップス社との提携交渉。各上の相手に対して、幸之助は「経営指導料を払え」と詰め寄ります。

第3章では、ラジオと電球の開発苦労話が紹介されます。安売りを要求する販売店に対し、幸之助が論じた「適正価格の必要性」は、デフレに悩む現代のサプライヤーたちにとって、ぜひとも参考にすべき論でしょう。

第4章では伝説となった「熱海会議」が紹介されます。ここで幸之助は「経営者は最高のエンターテイナーであれ」と自ら壇上で一世一代のパフォーマンスを見せます。そして松下がなぜコンピュータ市場から撤退したのかの謎が解き明かされます。

以下は省略しますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。伝記として読んでも、経営の教科書として読んでも役に立つ、おすすめの好著です。


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