他業界の勃興を参考に号

「やまさん」こと、おちゃのこ山崎です。

みなさんはゴールデンウィークをいかがお過ごしでしたでしょうか。いい思い出が作れたでしょうか。

海外に行かれた方は、食事代やホテル代などが日本より高くて驚かれたかもしれません。「昼食代2,000円は当たり前」と言われると、ますます若者が海外に行かなくなってしまいそうです。

さて、日本国内でずいぶん前からそういう思いをしてきた業界があります。それは出版業界の最下流に位置する書店業界です。

どういうことかというと、長い間インフレ率に見合わない売上の低成長に悩まされ続けていたのです。書店業界は再販制度で「定価」として売価が決められていますから、価格決定権がありません。さらに、取次店から見計らい配本で本が送られてくるために自由な発注もできません。そして、本の値段が世の中のさまざまなコストと比例せずに上がらなかったため、年々粗利が落ちていきました。書店の平均利益率は1%だそうです。

それが、どんどん書店が廃業していく理由です。労力に見合う収益が得られず、将来の見通しも暗いために、後継者に店を継ぐことができないわけです。そしてそれは数十年の単位で続いてきた業界構造に原因がありました。

他業界のことはみなさんにとって「対岸の火事」かもしれませんが、そこから経営のヒントを汲み取ることは可能だと思います。そういうわけで、今回は書店業界の内情に詳しく踏み込んだ本を紹介します。

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町の本屋はいかにしてつぶれてきたか 知られざる戦後書店抗争史

飯田一史・著/平凡社新書・刊

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「つぶれる」という表現はなかなか厳しいものがあったらしく、著者と出版社の間で「もう少しマイルドな表現にできないか」「いや、これでいく」というやりとりがあったそうです。著者は「消える」「なくなる」では、必死で働きながらも閉店のやむなきに至った書店経営者のやるせない気持ちが表現できないとして、「つぶれる」にこだわったと記しています。

このメルマガをお読みのみなさんの多くは小売店経営者であろうかと思いますが、同じ小売業でも、書店業界のことはあまりご存じではないと思います。ざっと説明しておくと、書店業界には次のような特徴があります。

(1)商品価格は再販制度のため自由に決められない
(2)仕入れは取次店からの搬入にほぼ依存するので自由にできない
(3)小売業界で最低クラスの粗利(22%前後)
(4)期間内なら返品できるが手間と労力が大変
(5)粗利率が低いため万引き被害は致命的
(6)取次店からのパターン配本で本を並べるため、金太郎飴的店舗になりがち
(7)かつては外商で30%ほど稼げたが今は困難
(8)兼業店舗に活路を求めたが兼業アイテムが安定しない
(9)儲からないので後継者を希望する人材が乏しい

「再販制度」というのは、メーカー(この業界では出版社)が決めた価格で小売りしなければならないというもので、書店を開業する場合はこれを守るとした契約書を取次店や出版社と交わします。それをしないと新刊書の販売がほぼできません。

仕入れですが、書店の店頭には毎日早朝に取次店のトラックが来て、シャッターの開いてない店先にダンボールを積んで行ったり、店の裏口から通路にダンボールを置いて行ったりします。店員は朝出勤すると、それを開梱して棚に並べるのが最初の仕事です。

しかし、その運ばれてきた本の大半が、その書店が注文したものではありません。見計らい配本といって、取次店が勝手に新刊書を送りつけてくるのです。もちろんその書店が注文したアイテムもありますが、注文した数量が満たされていることは稀です。

書店の粗利22%というのは、先進国の中で格段に低く、アメリカの約半分です。それが日本の本が世界の水準より安く売られている理由のひとつになっています。それを正当化するために出版社や取次店は、「返品できるのだから、発注リスクがなくていいだろう。本は廃棄ロスもほとんどないし、何もしなくても新刊書が毎日届けられるのだから、それを売るだけの楽な商売だ」と言います。

ですが、返品作業は楽な仕事ではありません。1冊1冊、本のスリップ(短冊とも言います。本に挟まっている栞のような伝票です)を見て、返品期限が近くないかを確認し、動きが悪い本を選んで棚から外していかなければなりません。それを伝票に記帳して、箱詰めして送る準備をする必要があります。

そして22%の粗利なので、万引きをくらうと5冊分の売上が飛んでしまいます。しかも、万引き犯は写真集など高額書ばかり狙いますから、1冊やられると文庫を数十冊売らないと穴が埋められません。組織的な万引きグループに狙われたりすると、倒産の危機になります。

独自仕入れが難しいということは、同じエリアにある同規模の書店の棚が同じような風景となる結果につながります。取次店は客層や店の規模をもとにパターン配本をするためにそうなるのです。すると、差別化が非常に困難になります。熱心な書店が店内POPなどに力を入れるのは、少しでも差別化しようという涙ぐましい努力の結果です。

そうした苦しい状況を少しでも上向けようとして、かつては外商に力を入れる書店が多くありました。学校や企業、よく本を買う家庭を回り、新刊を薦めたり注文を取ったり、頼まれた本を届けたりしたものです。それが店の売り上げの30%に達する書店も少なくありませんでした。百科事典や全集本は、そうした営業努力でよく売れました。

しかし、本の値段が上がらないのに人件費や燃料費が高騰し、外商が難しくなりました。共稼ぎ世帯が増えて集金や納品が難しくなったことも背景にあります。特にアマゾンをはじめとするネット書店の台頭が致命的でした。

兼業書店という業態は、実はかなり多くあります。コンビニも主従関係は逆ですが一種の兼業書店と見ることができます。一番大規模なのはTSUTAYA書店でしょう。CD・DVDレンタルとの兼業で全国に店舗を増やしました。しかし今や毎月のように閉店のニュースが舞い込みます。書店とペアリングする業態が、書店ほど寿命が長くないのがネックです。昨今ではレンタルスペースやカフェとの兼業が新しいスタイルとして注目されています。

最後の「儲からない」という部分が「本屋がつぶれる」最大の理由です。儲からないために子供や店員に店を継がせることができず、店主の高齢化とともに閉店の道を選ぶというケースが非常に多くなっています。それにより、書店が1軒もない市町村がどんどん増えています。

と、ここまで私の知っている業界情報をまとめて前置きとさせていただきました。

本書はそうした書店業界の現状を過去からの歴史を明らかにしながら分析した1冊です。著者は「本が売れない理由を、かつてはマンガ喫茶やブックオフ、次いでインターネット、今はスマホとしているが、それは正しくない」と言います。本書が中心にしている「町の本屋」はそんな単純な理由ではなく、構造的な問題で危機に瀕したのだというのです。

それを全11章と終章に分けて解説したのが本書です。出版業界は専門用語が多く、他の業界ではなじみのない商取引が多いため、どうしても説明は難しくなります。そのため著者は「どんどん読み飛ばしてもらってかまわない」と言っています。その代わり、各章の最後におかれた「まとめ」だけは読んでほしいということです。

それでは恒例にしたがって目次から紹介していきましょう。

・用語集
・まえがき
・第一章 日本の新刊書店のビジネスモデル
・第二章 日本の出版流通の特徴
・第三章 闘争する「町の本屋」――運賃負担・正味・新規参入者との戦い
・第四章 本の定価販売をめぐる公正取引委員会との攻防
・第五章 外商(外売)
・第六章 兼業書店
・第七章 スタンドと鉄道会社系書店
・第八章 コンビニエンス・ストア
・第九章 書店の多店舗化・大型化
・第十章 図書館、TRC(図書館流通センター)
・第十一章 ネット書店
・終章
・あとがき
・参考文献

最初に「用語集」があるのは、著者ではなく編集部が用意したものだそうです。出版界は、所属するマスコミ界全体にそういう傾向が見られますが、自分たちの内実をあまり表にさらしたがりません。そのため、業界関係者だけに通用する専門用語や商習慣が多数あり、最初に最低限の解説をしておいたほうがいいと編集部が考えたのでしょう。

どんなものがあるかというと、「客注」「指定配本」「正味」「著作物再販制」「取次」「見計らい配本」「公正取引委員会」「独占禁止法」「雑協」「出版協」「書協」「TRC」「鉄道弘済会」「取協」「日書連」「日配」が項目の見出しです。ここで解説すると紙幅が尽きてしまうので、興味のある方は本書またはネットでご確認ください。

「まえがき」の冒頭には、私たちが当たり前に見てきた風景を「いまの10代には想像もつかないだろう」として、次のような描写があります。
***
かつて駅前の一等地に書店が必ず存在していた。
駅の売店に雑誌だけでなく、文庫や、文庫よりも一回り大きい新書サイズの小説(ノベルス)やコミックスが並べられていた。
多くの中高生がマンガ雑誌やファッション誌を書店やコンビニで買って読んでいた。
***

そして次に、1985年のアンケート結果が紹介されています。大阪の書店組合によるものですが、20代の4人に1人以上が「書店に毎日行く」と答えています。現在の「本好きがわざわざ行く」状況とは雲泥の差です。

出版業界は、1996年の約2兆6,000億円をピークに下降基調にあります。2020年以降は微増していますが、それは電子書籍が伸びてきたからです。紙の本と雑誌だけだと、まもなく1兆円を割り込むでしょう。

「しかし」と著者は言います。出版業界が最盛期を迎えようとしていた1980年代後半から、すでに町の本屋は年間千軒単位でつぶれていたというのです。出版業界が下降基調になるはるか以前から、町の本屋は経営が厳しかったということです。

なぜそうなのか。著者はその原因が出版業界の垂直的な取引関係にあると指摘しています。出版社が本を作り、取次店が流通を支配し、小売店は売るだけという川上から川下の関係が書店にすべてのしわ寄せを押しつける元凶になっているそうです。

実際、日本は書店業界が青息吐息ですが、欧米ではそうなっていません。なぜなら、向こうは粗利が日本の倍あったり、再販制度がないため売れ残りをバーゲン価格で売ったりすることができるからです。

また、日本の本は安いとよく言われますが、それは書店のマージンを抑えているから実現できていることです。出版社は売上を稼ぐための手段として、本の価格を上げることより、部数を増やす方を選びたがります。その結果、書店は売上を増やすためには増売しなければなりません。しかし店は拡張できず棚は限られています。どうするかというと、町の書店はロングセラー商品よりもヒット商品を並べようとします。ヒット商品を並べるスペースを広げ、ロングセラー商品は片隅に追いやられます。多くの書店が同じことをするため、ますます「金太郎飴化」が進みます。

欲しい本を書店で探さずネット書店で注文する人たちが口にするのは、「町の本屋には欲しい本が置いてないし、注文しても届くまで時間がかかる」という文句です。これは、新刊書や雑誌の配本に注力して、顧客からの注文に対応する効率的なシステムを構築するのを怠ってきた業界全体の責任です。

取次店は輸送コストを減らすことを第一に考え、物流システムを運営しました。なるべく効率的に本を届け、できるだけ返品が発生しないようにする。そこに焦点が合っていたため、顧客1人の発注する1冊の本を素早く届けることは二の次にされました。その結果、顧客はあちこちの書店で同じ発注をし、結果として返品が発生しました。

なぜ日本の企業ができなかった「本1冊の翌日配送」をアマゾンが実現できたかというと、アメリカと日本では出版の物流が違っていたからです。アメリカでは単行本と雑誌の物流は完全に分けられて別物でしたが、日本では一緒に配送していました。そのためにバラの本は雑誌の影に隠れてしまっていたのです。

町の本屋が苦しくなったもう一つの背景として、雑誌の凋落があります。雑誌は単行本よりもはるかに強くインターネットの影響を受けました。なぜなら、雑誌は収益の半分を広告で得ていたからです。そのため広告の出稿先が雑誌からインターネットに移ると、たちまち休刊、廃刊する雑誌が増えました。

町の書店は雑誌の売上に経営のかなりの部分を依存していました。いつ出るかわからない単行本と違い、雑誌は定期刊行ですから、熱心な読者は発売日に買いに来ます。それが来店動機となり、ついで買いで他の雑誌や単行本の購入を期待できました。ところが雑誌が減り、コンビニや駅の売店が雑誌販売のライバルになったため、書店経営が苦しくなったわけです。

「第一章のまとめ」をさらにまとめると、次のようになります。
・日本の書店業が昔から苦しいのは、本の価格が安くマージンが低いため
・出版業界では販売店である書店に価格決定権がなく、仕入れも自主的に行えない
・そのため薄利多売か兼業書店になるしかなく、どちらも楽な道ではなかった

以下、同様にして各章のまとめを概観してみましょう。

「第二章のまとめ」はこのような内容です。
・書店と取次の取引条件ではすべての点で書店が不利な条件になっている
・たとえば「委託販売」なのに委託期限よりも先に支払期日がくる
・取次は雑誌で稼いでいるため書籍流通は後回しにされがち
・書店が注文した本が頼んだ数だけ来ることは稀
・仕入れから支払いまで、書店は生殺与奪をすべて取次に握られていた

続いて「第三章のまとめ」にいきましょう。
・戦前の書店業は書店に課せられた制約が安い運賃と人件費に支えられてバランスしていたが、戦後はそのバランスが崩れた
・書店団体は書店負担の軽減と本の定価アップ、マージンの増大を訴え続けてきたが、それらはほとんど実現しなかった。むしろ公正取引委員会から団体としての交渉が独占禁止法に抵触すると警告され、交渉力と求心力を失った

「第四章のまとめ」です。
・1953年に本の定価販売が合法化された
・1970年のオイルショック時に公取は各種業界の値上げに介入したが、本の値上げは認めなかった。そのため三省堂が倒産した
・取次が大手書店への傾斜配本を強めたため、中小書店の金太郎飴化が進んだ
・公取は著作物再販制の見直しをたびたび行ってきたが、本音は「再販はなくしたい」だった。そのため再販制度は次第に骨抜きにされてきた
・定価販売が中小書店を守るためには中小書店が生き残れるような価格とマージンの設定が必要だが、日本ではまったくそうなってこなかった

「第五章のまとめ」はこのようになっています。
・1960年代後半には、外売員1人で月に延べ600世帯が最低ラインという書店の外商が行われていた。だがさまざまな理由により外商はしだいに下火になっていく。それでも地方書店では1970年代に外商が3割、1980年代には2割を占めていた
・外商の衰退によって書店は店の外に本を売る流通チャネルと、出先で顧客と直接情報交換をする機会を失い、衰退への道が加速した

続いて「第六章のまとめ」です。
・利益率の低い書店業では、別の商品・サービスとの兼業を行うのが長きにわたって当たり前の選択肢だった。書店は時代に合わせて兼業商品を変えてきた
・大店法の1973年制定、1979年改正を背景に郊外に大型スーパーが出店し、ロードサイド書店が登場した。1980年にはビデオ・CDレンタルとの兼業で郊外型書店が爆発的に増加する
・町の本屋は1980年代後半から2000年代にかけて年間1,000店規模で閉店。続いて郊外型複合書店がネット視聴の普及によりビジネスモデルが崩壊し、閉店が相次ぐ

第七章は「スタンドと鉄道会社系書店」の話ですが、そのまとめはこうなります。
・1970年代には市中のスタンドや駅の売店での雑誌の早売りによって、町の書店が生命線であった雑誌の需要を食われてしまう。そのため書店団体は「同一地区同時発売」を業者や取次に呑ませた
・鉄道会社は1970年代初頭から系列書店を展開し、町の本屋と衝突した。しかし2010年代以降には採算が合わなくなり、それらも数を大きく減らしていく

第八章の「コンビニエンス・ストア」は次のようにまとめられています。
・1980年代になるとコンビニエンス・ストアが町の書店の脅威となった。コンビニ1店1店は小規模なフランチャイズ・チェーンであるため大店法の規制を受けず、町の本屋の近くにも次々に出店した。その一方でFC全体では大きな購買力を持つため、取次からは好条件で本や雑誌が仕入れられた
・コンビニは雑誌やコミックス、文庫といった回転率の高い商材のみを扱い、町の本屋の売り上げを奪っていった。1992年にはセブンイレブンが売上金額ベースで出版物小売業界のトップに立つ

第九章の「書店の多店舗化・大型化」のまとめはこうなります。
・戦前には「書店は書店組合への加入が必要」「書店を新規出店するには近隣書店の合意が必要」といった組合規定があったが、戦後それらは違法とされた。そのため同一商圏での競争が激化した
・1970年代から大手書店のチェーン店化が始まった。1990年代から大型店舗出店に関する法改正が進み、チェーン書店が経営する「メガ書店」が出現する。大型書店は近隣の中小書店を駆逐していった

第十章の「図書館、TRC(図書館流通センター)」には一般の人が知らない業界の裏話が出てきます。まとめはこんな感じです。
・戦後、GHQの指示により戦前とは異なる新しい図書館が出現した。だが日本が独立を回復すると図書館の予算が削られるようになり、町の本屋よりも図書館のニーズを満たすことのできるTRCが登場した。TRCは町の本屋に代わって図書館への出版物流の中心となった
・日書連はTRCと対抗するために国会議員への陳情を行い、政治問題化させた。だが、図書館から町の本屋への注文は復活しなかった

第十一章は、みなさんが一番興味を持つであろう「ネット書店」です。まとめはこうなっています。
・2000年代に入ると雑誌市場が急落したが、同時にアマゾンに代表されるネット書店が書籍の売り上げを食い始めた。アマゾンは日本の出版物流では収益的に不可能と考えられてきた「個人宅への迅速かつ無料または安価での配達」や、「客が予約した本をほぼ確実に発売日に届けること」を実現した。日本企業はまったく対抗することができなかった
・アマゾンが出版社と直取引する場合のマージンは40%といわれる。これは日本の書店の倍近いが、アメリカではごく当たり前のマージンである
・アマゾンのポイントサービスは定価販売を崩すものだが、公取はこれを問題視しなかった。町の本屋がポイントサービスを導入することは現実的でなく、アマゾンとの差は開く一方となった

最後の終章は、本書全体のまとめになっています。見出し項目だけ列記します。
・書店業の構造を決める4つのファクター
1.出版業界の垂直的な取引関係
1-1.出版社との関係
1-2.取次との関係
2.兼業商品・外商
3.小売間競争
4.法規制
・時代によるうつりかわり
明治~昭和初期(戦前)
1940年代~1950年代
1960年代
1970年代
1980年代~1990年代
2000年代
2010年代
・不易と流行

最後の「あとがき」で、著者は次のように書いています。
***
本屋は死なない、終わらない、消えないと語る人たちはたくさんいる。
本書は希望を描くつもりはない。かといって先がないとも思っていない。いまが絶望的なら、戦後、町の本屋はずっとそうだった。
***

そしてこのように続けます。

***
仮に日本の出版産業がうまく変われずハードクラッシュしても、また誰かが違うしくみを作り出す。寡占取次がなく、定価販売ではない国、それでも市場が堅調な国はいくらでもある。すべての書店、出版業界人を救うシステムはどこにもないし作りようもないが、どんな制度やビジネスモデルであっても、人類は文章を読み、書き、売り、買うことをやめない。
***

ぜひ本書をお読みいただき、「自分がこの業界で生きていくなら、どんな手を打つか」を考えてほしいと思います。ご自身が属する業界とは大きく異なる世界だからこそ、思考実験の場としてふさわしいのではないでしょうか。


 

EC仙人のダメ出し!道場
EC仙人
太田哲生

今回は、店長さんがお忙し過ぎてなかなかご連絡がつかず、いつものお電話でのインタビューができなかったため、通常の「ダメ出し」はお休みさせていただき、コラム回とします。 今回のテーマは、「新規顧客とリピーター」について。

ここで、商品企画へのアイデアとヒントです!

今さらながら、と思われるショップさんも多いかとは思いますが、あらためて考えてみてください。

あなたのお店は、新規客とリピーター客、主にどちらで成り立っていますか?

ネットショップ(ECサイト)における「新規客」と「リピート客」の売上比率は、業種やビジネスの成長段階によって異なりますが、目安としては以下のような比率が一般的です。

一般的な平均的比率(売上ベース)
新規客30~40% :リピート客60~70%

立ち上げ期
新規客70~90% :リピート客10~30%
顧客基盤がまだ小さいため新規に依存

成長・安定期
新規客30~40% :リピート客 60~70%(もっと高い店も)

新規オープン間もない店舗さんなら当然、新規顧客比率が高いと思いますが、1年、3年、5年、10年と続いているお店になってくると、新規客よりもリピーター顧客がメインで成り立つようになります。

新規店は、広告費やオープンキャンペーンなど、お店の認知、集客、新規獲得にやや高めのコストをかけてお客様の固定化を図ります。
ベテラン店になれば新規客獲得コストを減らしても多くのリピーター客で十分な収益が得られるようになるということです。

私の経験上、顧客獲得コストはネット通販ショップで1人当たり、少ない店でも数百円~、多いお店では数千円程度かけているお店も珍しくありません。(各店の平均商品単価や客単価により違う)

飛行機が飛び立つ際にはエンジンの回転数や出力を上げて短時間に多くの燃料を使って離陸し、高度を上げて安定した飛行ルートに乗せるようなイメージです。

飛行機は燃料を惜しんで出力を下げれば飛び立てませんし、飛び立ってもすぐ失速して墜落してしまいかねませんが、オンラインショップでは墜落まではしなくとも、安定した飛行ルートに乗せるまでに時間がかかり過ぎれば、赤字が続いていずれ燃料切れ(運転資金切れ)となってしまいます。

個人経営レベルのスモールショップではなかなか初期投資で思い切った広告宣伝などが打てず、オープンしたけど客は来ずでジリ貧になって閉店するお店が多いのも事実です。

一方、十分にコストをかけて広告宣伝や集客を行っても、来店客がちゃんと買い物をしてくれて、その後、再度また購入をしてくれるいわゆる「リピーター」「お得意さん」「常連さん」になってくれなければ、常に高めの集客コストをかけ続けていかなければならず、これまた長続きしません。

つまり、新規客を早めにリピーターとして固定化、常連客化していかなければ安定した健全経営になっていかないということです。

ちょっと分かりやすく、近所のスーパーマーケットや、飲食店、ヘアサロンなどをイメージしてみましょう。

地元に新規開店したスーパーA、新規オープンの案内チラシを周辺の住宅地にポスティングしたり、新聞折り込み広告を入れたり、駅前や人通りの多い場所で配布したりして宣伝します。オープン特売で玉子1パック10円! とか、お米1kg100円! など赤字覚悟の特売などを案内し、まずは来店してもらうことを優先して集客します。

でも、行ってみたら特売品以外は近隣の他店と比べてほとんど安くなく、品揃えなどもあまり特徴がない…では2回目はないかもしれません。でも、このスーパーAは近隣のスーパーBやCに比べるとお惣菜コーナーが充実している! とか、遠方の漁港に仕入れルートがあり鮮魚コーナーが鮮度がバツグンに良い! などの強みや特長があれば、その魅力を知った一部の客はBやCから流れて、このスーパーAをメインに利用するリピーターになってくれる。

ちなみにこのスーパーA、店員さんが高齢のお客様に話しかけて笑顔で会話しているシーンをよく見かけます。馴染みになればなかなか浮気せず裏切らないシニア層の心をしっかり掴まえているようです。

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地元に新規オープンしたカフェA。立地も良くなく資金も不足で広告もほとんどしていません。近隣にも喫茶BやカフェCなどがあり競合も多いエリアですが…

1年後のカフェAはいつも満席です。理由はいつも笑顔で好感の持てる店主の記憶力と心配りにあります。この店主さん、常連客が来店すると、前回の会話を覚えていて「〇〇さん、先日お話しされていた旅行の計画、どうなりました?」などと笑顔で名前を呼び自然に話しかけます。さらに常連客の好みを記憶し、「いつものカフェラテに今日はシナモンを少し加えてみましょうか? シナモンは末梢血管を再生させるらしいですよ」「今日のケーキセットには旬の大粒マスカットをオマケしています!」などといった小さな提案やプチプレゼントを提供します。お客様は「自分を覚えていて、気遣ってくれる居心地の良い場所」としてつい寄り道したくなるお店として賑わうようになりました。
店主からの提案でドリンク+αで客単価も上がっています。

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ヘアサロン激戦区にある美容院では、施術後数日経ったらスタイリストが直接お客様にDMメッセージを送り、「髪型の具合はいかがですか? 何か気になる点はありますか?」などと確認し、お客様からは言い出しにくい不満を埋もれさせないようにして、不満があれば無料で調整します。この「アフターケア」の姿勢が、黙って去るお客様を減らし、お客様の信頼を生み、安売りせずとも9割以上の高いリピート率を達成しているそうです。

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地方の古い住宅地エリアの便利屋Aでは、20年以上前から「お客様カルテ」を作成しています。依頼のあった件だけでなく、訪問の際にそのお家で気になっていること、修繕やリニューアルしたこと、間取りや照明器具、電球の数や水周りの設備や配置、老朽化状態、庭木や雑草の状況、エクステリアの錆や塗装の傷み具合などを聞き出し、大掛かりなリフォームではなく簡易な修繕で済みそうな点を「お客様カルテ」に記しておいて、定期的に電話やメッセージなどで「お困りごと、修理、修繕など気になることありませんか?」とお声をかける。修理、修繕だけでなく、家族構成、生活の様子、趣味、最近の出来事まで会話を通じて聞き出して記録。お客様に寄り添い自然に話せるよう準備しています。

シニア層が多いエリアだけに「自分のことを本当に気にかけてくれている」と感じたお客様は、さまざまな「困りごと」を相談してくれるようになり、良心的な価格で繰り返し利用しやすい便利屋さんとして繁盛しているそうです。

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リピーターを作るために重要なのは、「商品やサービスだけを売る」のではなく「お客様と関係性を構築する」という視点です。一時的な売上より、お客様との長期的な絆を優先する経営姿勢が、結果的に持続可能な事業成長につながります。

お店とお客様の関係は「友情」に似ています。初対面で生涯の親友になることはまれです。信頼関係は時間をかけて、会話を通じて、互いの価値観を理解し、約束を守り、困った時に相談しやすく、手を差し伸べてくれることで構築されます。

店もまた、顧客との「友情」を育てるように、一貫した価値提供、誠実なコミュニケーション、期待以上のサービスを通じて信頼を積み上げていくのです。

お互いが相手を「いい奴なんだよ」と思い合える関係。

顧客:「この店、本当にいい店なんだよ!」
お店:「このお客様、本当に素敵なお客様なんですよ!」

というような関係になれたなら、お互いにとてもハッピーで長いお付き合いになりますよね。(必ずしもお客様とお友達になれということではありません)

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こういうお話をすると、若いオンラインショップの店主さんたちは「でも、それってリアル店の話ですよね」と、ネットは違うとおっしゃいますので、ネット店の例も。

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東京郊外の酒店Aは町の小さな酒屋さん。リアルでは親の代から地元の飲食店への配達がメインでなんとか成り立っているが、薄利な常用酒の販売だけでは正直あまり儲からず苦しい。個人宅への御用聞きや配達はすっかり減っていた中、ネットでワインを売るようになって徐々に新たな顧客が増えていたが、ネットのワインショップは競合も多く頭打ちに。

酒飲みの顧客は新しい物、珍しい物好きなので、他店で珍しいワインがあれば黙って浮気してそちらで購入。その頻度が増えれば自店での買い物は減ってしまう。

そこで定期的にファン向けに有料のオフ会(試飲会)を開くように。珍しい物好き新しい物好きの近場の客が多く参加し、いろいろなワインを少しずつ試飲しながら、チーズやハムなど加工品も試食させ、ソムリエやインポーターをゲストに招いたり、ウンチクや知識欲も満たす会にしていきました。

そして何より、店主と実際に会って一緒に飲んで笑い合う時間を共有することで深い親近感+信頼感が得られると、次回からはメルマガやSNSで新しい品をオススメすれば、この店主の勧めるものならぜひ飲んでみたい! 食べてみたい! とネットでのリピート注文も見込めるようになりました。小さなお店で常に幅広い品ぞろえは難しいが、オススメ品に集中して在庫を持って販売できるので、資金繰りや商品回転率も見通しやすく経営も健全化しました。

そして何より、オフ会参加者はお店の宣伝マンになってくれるので、SNSや友人、知人への口コミで新規客も増えていく良い循環に。

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現代はスマホとネットのおかげで情報があふれ、検索すれば膨大な文字や画像、動画などの一方的な「情報」は簡単に手に入ります。

一方で、お互いのリアルタイムの表情や声、雰囲気(気持)を感じながらのQ&Aや会話はどうしてもネット店では得られにくくなっています。

お客様も、お店に気を遣わず自由にいつでも商品を見て回れる一方で、詳しいウンチクやエピソード、上手な使い方、活用法、事例など、サイトに書ききれていない情報は得られずにいます。そして常連客としての親近感や扱いの良さも感じられずにいます。

だからこそ、個々のお客様と生の声で通話をしたり対面して会話することで、「物品を購入する」に加えて「大事にされている」という「満足感」や「関係性」は別の付加価値になり得る時代とも言えます。

特に「都市部で一人暮らし」のお客様は、たとえ人口の多い所に住んでいようとも意外と「孤独」であったり「寂しさ」を感じていたりする人が多い時代です。

「買い物」を通じてお店の人と温かい会話や触れあい、気に入った商品という共通項について、「客」という大切にされる立場で会話することは、「直」でのコミュニケーションが苦手な人でも話しやすい状況なのです。

オフ会のようにお客様の輪を作ってその中に店主も加わる形なら、押し付け感、押し売り感も出にくいですし、お客様もお店だけを向かずお客様同士の会話や繋がりも得られる。別に顧客間の繋がりは求めない方は、お店との対話だけ楽しめば良い。

オフ会まではなかなか、と思われるお店でも、電話や通話アプリでぜひ「会話」を隠れたお店の付加価値として「お客様と関係性を構築する」ことでリピーターを増やし、お店の経営も健全化させていってください。結局、常連客や上得意客は親友と同じで、一人ずつ丁寧に接して作っていくしかないのです。網で小魚を一度にたくさん掬うようにはいきません。

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毎回会話はできないまでも、例えば注文ごとに手書きのサンキューメッセージカードを同梱し、カードには購入した商品について「この商品にはこんなエピソードがあります!」とか「こんな組み合わせでこんな楽しみ方もあります!」などの提案があれば、ただ届くだけに+αのほっこり感が与えられたり、「●●様のお好みだと、こんな商品も気に入っていただけるかも」と無料サンプルや、次回クーポンを添えた提案などもリピート促進に繋がると思います。(商品お届け時は開封率100%のDMチャンス)

出荷=ただの物流作業になっているお店は今一度見直してみましょう。

デジタルでの買い物体験にも「人間味」を加えることで、顧客からは「自分を実際の人間が大切に扱ってくれている」という感覚を与えてあげられるようになります。

「どうせ、ITによる自動化で人の意識なんてなく出荷してるんでしょ」と顧客も思っています。だからこそ、個別の人間としての認識や扱いは比較的簡単に満足感を与えやすい時代とも言えるのです。

無味乾燥したドライな接客が当たり前になってきた昨今、特に都会ではコンビニなどでの「笑顔もありがとうもない接客」に慣らされた消費者は、期待以上の人間味のある接客には感動すら覚えてくれます。

「顔も合わせないネットショップだからこの程度で良い」と思わないところにチャンスがあります。

ひたすら、安売り!、薄利多売!、自動出荷、常に新規客獲得!の消耗戦は効率重視の大手さんにお任せして、中小オンラインショップは適正利益で適量販売、お客様と良い関係による満足度を築いた上で、しっかり儲けて健全経営を目指していきましょう!

あなたのお店がリピート率が上がらないようなら、商品やページのクオリティを見直すと同時に、効率を重視し過ぎて「顧客との対話」という面倒から逃れるようなオンラインショップ経営になっていないか? 今一度顧客目線で自店を見直してみてください。

「お店チェック」や「ダメ出し」を受けてみたいショップさんは、いつでもお気軽にご相談ください!



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さて…
オンラインショップの本質は表のホームページからだけでは見えない接客や、梱包、配送、そして商品そのもの等、「裏」の強みや弱み、そして個別の事情によるのが当たり前です。
実際に、「売れる・儲かる」という部分は、実はこの見えないところにこそ本質的な秘密や課題があるものです。
この「ダメ出し!道場」の企画は、公開という性質上、あくまで表から見たお店の印象や、そこから類推できる範囲の改善点をお客様目線でご指摘するものですので、ご理解ください。


このコーナーでは、テンプレートのカスタマイズについて、実際のサンプルページを元に紹介していきます。

皆さん、こんにちは。おちゃのこネットの刑部です。

今回のデザイン道場は、先日リリースしたSOLD OUT画像のフォント追加と文字サイズ追加をご紹介します。
これまでになかった、フォントNotoやRobotoなどのフォントを追加しています。
カスタムパーツのフォント変更を利用されている方は、SOLD OUT画像の文字も揃えることができます。






管理画面から設定する

商品管理在庫表示・通知設定在庫切れ商品欄で「SOLD OUT」画像を表示するにチェックを入れるとSOLD OUT画像設定欄が表示されます。

追加フォント
・Noto Sans (ゴシック体)
・Noto Serif (明朝体)
・Roboto
・Montserrat
・Playfair Display

※テキストに全角文字が含まれている場合、Roboto、Montserrat、Playfair Displayは使用できません。

追加フォントサイズ
・極小

 

なお、お問い合わせは下記ページからお願い致します。

https://www.ocnk.net/contact/index.php

編集後記

今回取り上げた参考書の出版社である平凡社は、私が新卒で最初に勤めた会社です。わずか2年半で経営不振のため希望退職に応募するハメになってしまいましたが、そこで学んださまざまなことが今の自分に生きています。そのことに感謝して、毎年6月のOB会には必ず出席するようにしています。今年もその時期が近づいてきました。
(おちゃのこ山崎)

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