「やまさん」こと、おちゃのこ山崎です。

今朝の埼玉県中西部の気温は5℃。5時前に用事があって外に出ましたが、しんしんと冷えた夜空に月と星が美しく輝いていました。もうすぐ車の窓ガラスが凍結する季節になります。そろそろ冬タイヤの準備をしなければなりません。

先日、警察のイベントがあって出席したのですが、ブラスバンドの司会者（もちろん警察官です）が振り込め詐欺の注意と共に、「1日の寒暖差が7℃を超えると風邪を引きやすくなる」と言っていました。昨日の寒暖差は12℃でした。どうりで風邪引きが多いわけです。

私の事務所の近くではまだ目撃情報はありませんが、近隣の町では熊が出没しているようです。埼玉県は群馬や栃木の山地とつながっているので、熊がやってくるのでしょう。低山しかなく、河川で他の地域と隔てられている千葉県には、熊は来ないそうです。ちょっとうらやましく思いました。

さて、今回のオススメ参考書ですが、ECの大先輩であるジェフ・ベゾスの語録を取り上げました。今や日本の年間予算よりも巨額の時価総額となったアマゾンですが、始まりは1冊の本の販売です。そこからどうやって今日の巨大企業を築き上げたのか、その一端がわかる本だと思います。

「とても自分とは比較にならない」と思うかもしれませんが、最初の一歩は同じはず。きっと参考にできる点があると思います。

版元のリベラル社は名古屋に本社がある1984年創業の比較的若い出版社です。文芸、実用、学習参考書、児童書などの分野で幅広い出版活動を行っており、本書は「○○の言葉」としてシリーズ化されています。

ほかには『人間関係の悩みを消す　アドラーの言葉』『自分を活かし成果を出す　ドラッカーの言葉』『リーダーとして結果を出す　野村克也の言葉』『逆境を乗り越える　渋沢栄一の言葉』『人を大切にし組織を伸ばす　稲盛和夫の言葉』などがあります。

本書の著者である桑原晃弥はこのシリーズでいくつもの著書があり、上記のシリーズはすべてこの著者のものです。他の著者が書いたものとしては『自分らしい生き方を貫く　樹木希林の言葉』『自分を愛し胸を張って生きる　瀬戸内寂聴の言葉』『好奇心のかたまりであり続ける　黒柳徹子の言葉』『めげずに生きていく　佐藤愛子の言葉』などがあります。

著者について軽く触れておくと、1956年広島県生まれで、慶應義塾大学卒業後に業界紙記者や不動産会社勤務を経て独立し、トヨタ関連の書籍やテキストの制作を主導するかたわら、ビジネス界のビッグネームの研究をライフワークとしているそうです。代表的な著書としては『スティーブ・ジョブズ名語録』（PHP研究所）、『トヨタ式「すぐやる人」になる8つのすごい仕事術』（笠倉出版社）、『1分間アドラー』（SBクリエイティブ）があります。

本書で取り上げられているジェフ・ベゾスについては、今さら解説の必要もないと思いますが、一応まとめておきます。

ジェフ・ベゾス（Jeff Bezos、1964年1月12日生まれ）はアメリカの実業家、投資家、宇宙開発者で、Amazon.comの創業者として知られ、現代のビジネスとテクノロジーの在り方を大きく変えた人物としてよく知られています。

出身はアメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキで、ブリンストン大学で電気工学と計算機科学を専攻しました。1994年にオンライン書店Amazon.comを設立し、1997年にナスダック上場。書店から総合ECサイトへ発展させます。

2000年に宇宙開発企業Blue Originを設立し、人類が宇宙で生活できる未来を目指します。

2007年以降、Kindle、AWS（Amazon Web Services）などを次々と展開し、AWSは世界最大級のクラウドサービスへと成長を遂げます。

2013年、「ワシントン・ポスト」紙を買収し、メディア再生に乗り出します。

2021年にAmazonのCEOを退任し、取締役会長へ。以降はBlue Originなどの新事業に注力しています。

それでは、最初に本書の目次を紹介しましょう。

第1章　イノベーションを起こし続ける
01　ユーザーに「これだ」と叫ばせろ
02　イノベーションのためには汗をかけ
03　袋小路を恐れるな、きっと道は開ける
04　アマゾンは人々の体験を便利で快適なものに変える
05　アイデアを生むには「機能」に注目せよ
06　「不便」や「非効率」にビジネスチャンスあり
07　アイデアがあるなら、まずやってみろ
08　「自分を食う」覚悟で事業に取り組め
09　慣れたやり方に固執しすぎるな

第2章　失敗を恐れず、まずやってみよう
10　イノベーションには失敗できる場所が必要だ
11　失敗なんか恐れるな
12　「変化」こそが「成長」の原動力
13　特大の成果には「迷走」が欠かせない
14　大企業こそリスク覚悟で挑戦せよ
15　試練を乗り越えて「本物」になれ
16　反対者には「なぜやってはいけないの？」と聞き返せ
17　失敗の可能性から目をそらすな
18　「やって見せる」を習慣にしよう
19　提案には「イエス」と答えよ

第3章　スピードこそ命
20　やり直せる決定とやり直せない決定がある
21　決断には「7割」で十分
22　アイデアは考え抜き、簡潔に伝えろ
23　「時間の単位」を変えて考えろ
24　お客さまにとっても時間は「大切な資源」だ
25　計画を立て、書き出せば視野が広くなる
26　急げ、しかし、準備は万全を期せ
27　チャンスに気付いても、行動に移す人は少ない
28　目的は見失わず、事業計画は臨機応変に
29　「時間がかかる」という言い訳に耳を貸すな

第4章　すべてはお客さまのために
30　お客さまに近い企業であり続けろ
31　「やりすぎでは」というほどの姿勢で取り組め
32　「競争」より「より良く」を追い続けろ
33　改革を怠らず、他社に追いつかせるな
34　お金を使う目的を見極めろ
35　見るべきは「ライバル」ではなく「お客さま」
36　答えは顧客が教えてくれる
37　悪い情報も伝えてこそフェアなビジネスになる
38　宣伝より顧客体験の充実を
39　「口コミ」を制する者が勝者となる
40　顧客というハンターを惹きつけろ
41　すべては顧客との「接点」で決まる
42　危機にあっても「自社の強み」は守り抜け
43　顧客の要望は「改善のヒント」
44　ロールモデルとされる企業を目指せ

第5章　長期の視点でものを見る
45　イノベーションには「長い忍耐」が欠かせない
46　長期で考えるからこそ「不可能」も「可能」になる
47　外の評価に一喜一憂せず内なる成長に集中しろ
48　「大きな事業」も「小さなアイデア」から
49　「3年先」を見つめて努力しよう
50　「ゆっくり、たゆまず」こそがスピードを生む
51　「時代の寵児」ではなく「永続する企業」を目指す
52　すべてを解決する方法は必ずある

第6章　利益より成長を
53　「未来」を「今」の犠牲にするな
54　素早く「成長」して市場を「支配」しろ
55　成長したければ大きく賭けろ
56　「投資家のため」ではなく「顧客のため」に働け
57　目先の利益より、事業の拡大を目指せ
58　アマゾンを買えないものがない場所に
59　二者択一より二兎を追え
60　「未来」のことも考えつつ「今」を戦え

第7章　優れた企業文化を
61　ベンチャースピリットを持ち続ける大企業であれ
62　「企業文化」をつくり、維持せよ
63　異議は決まる前に唱えろ
64　人材に妥協せず「能力の密度」を高めろ
65　「人材の採用レベル」を上げ続けろ
66　信じろ、世界は変えられる
67　懸命に働いて歴史をつくろう
68　不満を抱えたまま働くな
69　率先して「問題のホルダー」になれ
70　「現地現物」でデータの嘘を見抜け
71　順境にこそ「健全な危機感」を持て
72　闘うなら圧倒的なトップに立て
73　優れた企業文化こそが他社との差をつける
74　夢は壮大に、しかし地道な方法で

第8章　ベゾスの人生観
75　未来のために何かを残せ
76　誰と付き合うかで人生は変わる
77　優しさが賢さを強みにする
78　良い判断のためにしっかり睡眠をとれ
79　「使いこなす」だけでなく「つくり上げる」能力を
80　人間の持つ「知性の力」を信じよう

目次を一読してわかるように、本書はベゾスの80の言葉を選び、8つのカテゴリーに分けて紹介したものです。1つの言葉を見開き2ページで紹介・解説しているので、どこから読んでも大丈夫です。

次に、序文である「はじめに」を見ていきましょう。

ここでは、著者・桑原晃弥がジェフ・ベゾスがアマゾンを創業した経緯と、その成功を支えた考え方を紹介しています。ベゾスの略歴についてはすでに紹介しましたが、アマゾン創業時のベゾスは30歳で、他のITファウンダーたちのような学生の年齢ではありませんでした。

彼はその時点でD.E.ショーという金融会社の副社長の地位にあり、冒険をしなくても食べていける境遇でした。しかし、「80歳になって人生を振り返った時、後悔したくない」という考えで起業を決断します。その時のベゾス自身が考えた成功確率はわずか10％でした。

アマゾンの大成功の鍵は、ベゾスの「3つの考え方」にありました。
・常に顧客中心に考える
・発明を続ける
・長期的な視点で考える
この考えを原動力としてビジネスを貫いたことが、日本の国家予算を超える1兆5000億ドル（2021年時点）の時価総額を生みだしたといえます。

そして著者は読者にこう語りかけます。
・先が見通せない時代だからこそ、試行錯誤を繰り返しながらアイデアを形にする「攻めの生き方」が必要である
・本書を読んで「これは知っている」と感じたら、「じゃあ、やっているか」と自問し、「これは良さそうだな」と感じたら、実際にやってみることを推奨する

では、本文に入っていきましょう。01、02と番号が振られているので、最初から順に見ていくことにします。

01　ユーザーに「これだ」と叫ばせろ
私たちがしなければならないのは、お客さまの代わりに発明することです。→「ベゾスレター」

「→」が付されているのは、その言葉の出典です。「ベゾスレター」というのは、アマゾンが1997年に株式を公開して以来、ベゾスが定期的に株主あてに送ったレターのことで、一般の企業が単なる年次報告書を送るところを、ベゾスは自身の経営哲学をにじませた経営方針、成果、将来戦略をまとめました。その内容は特に「革新・変化」「実験」「顧客価値」の観点から読む価値のあるものとされています。

この最初の言葉は、ともすれば「売れ筋を真似しよう」「お客さんが求めているものを置こう」と考えがちなネットショップオーナーに対して、ある種のショックとなるものかもしれません。

ベゾスの発想は、「お客さまがまだ気づいていない欲求を先回りして形にすること」でした。その結果、ユーザーは「これだ！　これが欲しかったんだ！」と叫ぶわけです。

たとえば、スマートスピーカー「アマゾンエコー」が発売された時、事前に「音声で操作する円柱型のスピーカーが欲しいですか？」と聞いたとしたら、誰も「欲しい」とは言わなかったはずです。

それでもベゾスは「便利になる未来」を信じて開発を進めました。そして、結果としてエコーは世界中で愛される商品になりました。

02　イノベーションのためには汗をかけ
社内でアイデアが生まれるプロセスというのは意外にぐちゃぐちゃなもので、頭に電球がともる瞬間などありません。→「果てなき野望」

出典の『果てなき野望　ベゾスとアマゾンの創業神話』はブラッド・ストーン著、井口耕二訳で日経BP社から2014年に発刊されています。ベゾスの人生とアマゾンという企業がどのように誕生し、成長していったかを詳細に描いたノンフィクションであり、ベゾスとその家族を含めて300人以上へのインタビューを経て生まれた名著です。

この言葉は「よいアイデアを思いついて頭に電球がともる瞬間などない」と断言したもので、「何かいいアイデアないかな～」とつぶやいている人に冷水を浴びせる効果があります。

実際に、アマゾンの革新は突然のひらめきからではなく、地道な実験と修正の積み重ねから生まれました。ベゾスにとってイノベーションとは、試して、失敗して、また直すことの繰り返しの果てにようやく形になるものでした。

つまりベゾスは「汗をかかない人間には、いいアイデアは訪れない」と言っているわけです。

03　袋小路を恐れるな、きっと道は開ける
行き詰まらずしてイノベーションはあり得ない。→「イノベーションのDNA」

この出典は『イノベーションのDNA　破壊的イノベータの5つのスキル』（クレイトン・クリステンセン　ジェフ・ダイアー　ハル・グレガーセン著／櫻井祐子訳／翔泳社刊）ですが、この書籍はジェフ・ベゾス1人の伝記ではありません。ベゾスをはじめ、イーロン・マスク、マイケル・デルなど多くのイノベーターたちにヒアリング調査を行って書かれた本です。その本の中のベゾスに関する部分から抜き出したのがこの言葉です。

「もう打つ手がない」「これ以上伸びない」と諦めそうになる瞬間。その時こそが発見の入口なのだというのがベゾスの主張です。

アマゾンはまさに試行錯誤の連続でした。Kindleの初期モデルは技術的な制約だらけで、社内でも反対意見が噴出していました。それでもベゾスは「必ず本の未来を変える」と信じて進み続け、結果として電子書籍市場を開拓しました。なにより重要なのは、行き詰まっても挑戦し続けたことです。

ベゾスのこの言葉は、「袋小路に見える局面は、次の道が見つかるまでの過程」と言い換えることができそうです。

04　アマゾンは人々の体験を便利で快適なものに変える
人間は易きに流れるものさ。楽なことほど、もっとやりたいと思うんだ。→「グーグル秘録」

この言葉の出典である『グーグル秘録―完全なる破壊者―』（スティーヴン・レヴィ著／井口耕二訳／日経BP社刊）もまた、ベゾスについての伝記ではありません。この本はGoogle創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、エリック・シュミットらの行動原理や企業文化、経営哲学を描いたノンフィクションです。

しかしベゾスはGoogleの初期投資家の1人で、1998年頃に約25万ドルを投資している関係で、本書にたびたび登場します。この言葉は、そこからとられたものです。

ネットビジネスでは、とかく価格競争や広告運用に気を取られがちですが、ベゾスは創業当時から一貫して「便利さ」を追求していました。紙の本の不便さを解消してKindleを生みだしたのも、「読書をもっと楽にしよう」という考えからでした。

ベゾスはお客さまが「またこの店で買いたい」と思う瞬間は、商品そのものよりも買う体験が心地よかった時だと見抜いていました。すなわち、便利さこそが最大のマーケティングだということです。

05　アイデアを生むには「機能」に注目せよ
本は未来永劫、死んだ木に印刷しなければならないなど、どこにも書かれていません。→「果てなき野望」

ベゾスは「形よりも機能」を重視しました。ビジネスではともすれば形の改善に意識が向きがちですが、商品の本質は機能にあります。そのことをベゾスは理解していたので、Kindle開発の時に「本は紙に印刷しなければならないものではない」と言い切ったわけです。

まだ本書のほんの冒頭部分しか紹介できませんでしたが、ネットショップ運営のヒントになる言葉がちりばめられた本です。ぜひご一読をお勧めします。