VOILA'

カテゴリ:食品、飲料

VOILA'

2005年7月〜 ショップを始めて10年くらいになります。今まで売り上げは徐々に伸びてきていましたが、最近伸び悩んでいます。 最近レスポンシブデザインのテンプレートに変更したのですが、何かアドバイスをいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

テレビのニュース番組や情報番組を見ていると、「コメンテーター」や「解説者」といったいわゆる「専門家」の方がよく登場しますね。

犯罪捜査、原発事故や航空機事故など、理解するためには高度な専門知識を必要とするニュース等では、彼ら「解説者」が素人である視聴者にもわかるように噛み砕いて説明してもらうためにキャスティングされているはずなのですが…

中には基礎的な説明もなく専門用語を次々と羅列して、余計にわかりにくく説明してしまい、見かねたニュースキャスターが絶妙な例え話で「こういうことですか?」とまとめ、「はい、そうですね」となんとか着地するようなシーンをよく見かけます。

例えば政治家や経営者が、何か専門的なことを判断、意思決定しなければならない際には、その道の権威である専門家に詳しく解説してもらい、できるだけ正しい状況、情報の把握をし決断する必要があるので、説明の上手さよりも専門知識のレベルの高さや豊富さを優先すれば良いでしょう。

でも、「大衆」=「一般視聴者」の大多数に対して、大雑把でもアバウトでもいいから、短時間で概要・要点をわかりやすく解説する場合には、専門性の高さよりも「わかりやすさ」(説明の上手さ)を優先させるべきではないでしょうか。(^^;)

まぁ、その部分を補うことがMCキャスターさんや芸能人などのコメンテーターさんに期待されるところなのでしょうが…

これはネットショップでもいえることで、「専門店」はつい専門用語や外国語を並べ立ててしまい、一部のマニアには理解できても、「大衆」=「一般消費者」にはなんだかよくわからない…なんてサイトをよく見かけます。

例えば…下記はあるウィスキー専門店での商品説明の例ですが…
「カスクはペドロヒメネスのシェリー樽、ヨーロピアンオークのシェリー樽、ファーストフィルのバーボン樽を組み直したクオーターカスクで熟成された原酒をヴァッティングした後にヴァージン・アメリカンオーク樽で後熟したスモーキーでヘビーな味わい。まだ若い上にカスクストレングスなのでとてもパワフルです」

ここまでやられるともはや(笑)!
ウイスキー好きなマニアならすぐに理解できるのかも知れませんが…
初心者や門外漢には、ヴァッティングだのカスクストレングスだの、カタカナのオンパレードでもう「???」。
お酒の前に専門用語に酔ってしまいそうですね(^^;)

スモーキー、ヘビー、パワフルくらいならそんなに英語の得意でない日本人でもなんとなく「煙っぽい香りで重厚で、強い味わいなんだな」とイメージできますが、カスク(樽)、ヴァッティング(混ぜ合わせブレンドすること)、カスクストレングス(水で薄めない樽熟成そのままの濃い酒)などは、初心者のお客様を意識しての説明が必要ですね。

要するに、良い解説者、良いコメンテーター、良い専門家、良い専門店なら自己満足で上から目線の専門用語の押し付けではなく、初心者や入門者、新しく興味を持ってくれたお客様にもわかるような説明を心がけましょう! ということです。

さて、本日のお店は、大河ドラマ「西郷どん」で注目の鹿児島から…
ウィスキーよりももっともっと多くの方に飲まれてなじみ深い、珈琲、coffee…そうコーヒー(豆)の専門店さんです!

さて、初心者にもわかりやすいお店でしょうか!?

それではダメ出し!道場スタートです!

第一印象…競争激しい業種に「強み」のアピールが弱くもったいない


EC仙人 太田

ご懸念の「レスポンシブデザイン」に関してはPC、スマホともデザインクオリティでは問題ないと思います。

それよりも、コンテンツや商品の構成、魅力や強みのアピールなど、中身のほうに多くの課題があると感じました。

コーヒー、お茶、お酒などは嗜好品であり、また近所のスーパーや量販店で簡単に手に入る商品でもありますが、ネット上でもとても多くのお店がひしめき合っている超競争業種の一つです。

それだけに、近所に買いに行けばその日のうちに手に入る物を、わざわざ遠方のネットショップからお取り寄せするには、それなりの動機付け、「特徴」、「魅力」や「強み」が必要です。

よくよくお話を聞いて、商品ページを一つ一つ見ていけば、ようやくヴォアラさんの「強み」はいろいろな国、産地の「小規模農園」に特化して、コーヒーの国際品評会の審査員もしている社長自らが、その年、そのシーズン毎に異なったコーヒー豆を買い付け、自社で焙煎し販売している、鹿児島県内に(カフェはない)豆だけの実店舗を4店舗展開されている正に「コーヒー豆の専門店」であることだとわかりましたが…

しかしながら、トップページにはこれらの「強み」のかけらさえも見当たらず(アピールできておらず)、初めて来店(アクセス)されたお客様には、どんな特徴のお店なのか? 何が「強み」なのか? がすぐには伝わらず、実にもったいない限りです!

事実、私もお電話で直接お話をお聞きするまで、「小規模農園」の豆だけをシーズン毎にセレクトして販売していることなどまったくわかりませんでした。

現状では、新規客の方にはよほど時間に余裕があって、積極的に新しいコーヒーや新しいお店を探している方以外は食いつきにくい(新規客を捕まえる確率が低い)サイトだと思います。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

社長さんとネットショップの担当者である川井田さんにお電話でお話をお伺いしました。上でも述べましたように、ヴォアラさんは小規模農園さんの豆に特化して毎シーズン、それぞれの産地のいろいろな農園の異なった豆を販売されているとのことで、ずっと定番の物というのは基本的にはないそうです。←これは意外でしたし、特にどこにも記されていないので気づきませんでした。

その年、そのシーズン毎に、良い物をセレクトしている、いわばコーヒー豆のセレクトショップのようなお店のようです。

また、コーヒー専門店にはよくある、焙煎度合(豆を炒る深さ)は選べませんが、その豆の特徴とその日の気温や湿度などに合った最適な焙煎をヴォアラさんが見極めて行っているとのことです。
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これはQ&Aのページには書いてありますが、個々の商品ページには焙煎度合についての説明や説明ページへのリンクもなく、わからず不親切な印象になってしまっているのはもったいないです。

現状のネットショップの売上は、ほとんど、鹿児島の自社店舗や、ヴォアラさんの豆を使った東京にあるカフェなどで知った「実店舗」でのお客様を主とするリピーターさんたちがメインで、注文件数や売上は月間600件〜700件、月商400〜500万円(社長に掲載許可頂きました)と、実績はなかなかのものです。商品の良さを物語っていると思います!

ただ、リピーター相手の現状からは、今のサイトの情報量やコンテンツでも十分かも知れませんが、今後、より売り上げを伸ばしていくには新規客の獲得もやっていきたいし、それが大きな課題ですね。

ヴォアラ珈琲について
https://www.umaicoffee.jp/page/115
のページにある社長のプロフィールの中に小さく「コーヒーの国際品評会の審査員もしています」という控えめなアピールが。実はスゴイこと=「強み」なのに…!

この1行だけでも、新規のお客様に一瞬で「この店の目利きは間違いないだろう!」と思わせられる「強み」なので、電話インタビューの際にも「ぜひトップページや看板にアピールすべきです!」と申し上げたのですが…

九州男児、薩摩隼人!? の実直で控え目な気質からか!?
「あまりそういうのは…」とのお答え。(^^;)
お気持ちはわかるのですが…
こと、ネットで新規のお客様には、初来店(初アクセス)時に
「このお店(の中、商品)をじっくり見てみよう!」
と思わせられなければ何も始まりません!

自らの意思で時間と交通費なりガソリン代なりをかけて実店舗まで足を運んでくれて、説明や香りを感じたり、試飲もできる実店舗のお客様とは明らかにテンションが違うのです。

「なんだかよくわからない」と思われたら、クリック一つで即、お店を出て行かれるのです。

また、社長は現在、「定期通販」=定期的にコーヒーが届く売り方を実現しようと努力されているとのことで、これも商品の良さ&自信に裏付けられたリピーター対策になると思いますが、新規獲得策ではありません。

一方で、広告費はかけない会社方針であったり、コーヒー豆の内容量は250gと1Kgしかなく、お試しセットですら容量が大きい!
https://www.umaicoffee.jp/product-list/124
最も安いものでも250gの3種セットで3800円。

「お試し」といっても新規客にとっては量が多く、好みに合わなければ無理して飲み切るか、処分するか。いずれにせよ「満足度」ではなく「不満足度」になってしまいます。

また、プロにとっては今更ながらなのかも知れませんが、一般論、常識レベルのコーヒーの知識や情報、ウンチクといったコンテンツもありません。

とにかく「新規客」に対する戦略、商品、コンテンツがほとんどないのです。
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担当者さんへのインタビュー
担当者の川井田さんは実店舗のうちの1軒の店長さんで、社長からは川井田さんがネットショップの責任者とご紹介頂いたのですが…

ご本人によるとネットショップの担当者になった理由は、川井田さんの前職がデザイン系のお仕事で、PhotoShopやIllustratorといったグラフィックソフトが使え、画像加工やバナー制作、ページ更新ができるスキルをお持ちだったから、ネット担当者に任命されたとのことでした。

現在は実店舗の接客や店舗管理などの合間に、お店の片隅で商品登録や撮影、画像加工やページ制作を行っていらっしゃるとのこと。

受注対応や梱包出荷などの通販業務面は、川井田さんの居るお店とは別の本店のスタッフが行い、商品企画は社長や川井田さんを含めた他店の店長たちと相談しながら決めていくとのこと。

実際、バナー画像やページデザインのクオリティは十分に高く、デザイン制作担当者としては適任者だと思いますが、ネットマーケティングや通販業などは正直ご本人もよくわからず不安だし、実店舗の仕事のかたわらで週末など実店舗が混む日には手を付けられないとか、悩んだ時にネットショップのことをわかってくれる相談相手がいないなど、孤独感もあるように感じました。

これは川井田さんに限らず、企業でのネットショップの担当者にありがちな状況で、経営者が注意を払わなければならない点ですし、担当者も積極的かつ頻繁に経営者と情報共有、報・連・相して行く必要があります。

「強み」を生かしネット通販に合った新規顧客獲得の戦略を!】


EC仙人 太田

私はヴォアラさんのコーヒーを買って飲んだわけではないのですが、リピーターの多さ、売上、鹿児島の商圏規模で実店舗、しかもカフェのない豆販売だけのお店を4店舗も経営という実績から、その商品の品質、味の良さがうかがい知れます。

実店舗では好きなだけいくらでも試飲できるそうなのですが、ネットショップにおいても新規顧客に「まずはお試し」のハードルを下げ、買いやすく、いろいろな種類の豆を試してもらってお好みに合う豆を見つけてもらうような戦略、戦術が必要だと思います。

お電話でいろいろお聞きした中で、こんなアイデアが出てきました。
ヴォアラさんでは1杯分ずつカップにペーパーフィルターをセットして淹れられる、個別包装された「ドリップバッグコーヒー」という商品があり、そのラベルシールをオリジナルデザインで作れるサービスがありました。結婚式の引き出物やギフトなどで人気があるようです。
https://www.umaicoffee.jp/product/1047

現状はバッグ詰めは業者さんに一括で依頼しており、豆の種類を選んだりはできないようなのですが…
社長にお電話で聞いてみたところ、このドリップバッグ詰めは、やろうと思えば個々のコーヒーで自社内でも可能とのことでした。

そこで「今販売中のコーヒーを全種類このドリップバッグで用意できれば、一度に10種類〜20種類でもいろいろな種類のコーヒーをお試し購入していただけますね!」とご提案。

お一人のお客様、カップルやご夫婦のお客様、ご家族のお客様あたりを想定し…
1パックずつ×●種類、2パックずつ×●種類、4パックずつ×●種類の3パターンくらい用意。
種類が多いので一度に全種類飲んで比較はできないでしょうから、1種類ずつ飲むごとに、お客様自ら特徴や評価を記入してもらえるようなテイスティングシートを用意、同梱して、それぞれの味や香りなどを忘れないように記録していただき、最終的に自分の好みの豆を選んでいただけるようにしたり、何らかのクーポンを同梱して、次回のリピート追加注文を促すような戦略商品ができれば、新規顧客獲得〜リピーター客を作れるようになると思います。

テイスティングシートには品評会審査員である社長のノウハウを込めつつも、素人や初心者でも簡単に記録できるような工夫を入れたシートが作れれば、お客様にとってはいろいろ飲んでみては評価記入していくことがヴォアラコーヒーの楽しみの一つにもなると思います。

ヴォアラさんに限らず、お茶やお酒などのお店でも、種類が多い商品ジャンルのお店では、お客様の「あれこれいろいろと試してみたい願望」は強いものです。

実店舗では試飲や試食で数種類は試せますが、意外にもネットショップでそれを行っている店はあまり多くありません。特にお酒は酒税法の縛りで小売店が勝手に瓶を開け少量ずつ小売りすることができないのですが…
お茶やコーヒーの場合は小売店がその手間さえ惜しまなければ、競合他店への大きなアドバンテージになるはずです。

商品とその味に自信のあるヴォアラさんならなおさら、とにかくまずは安くて手軽に多くを試せる「お試しセット」を手がけるべきだと思います。

その他…具体的なダメ出し


EC仙人 太田

ヴォアラ珈琲について
https://www.umaicoffee.jp/page/115
初めてのお客様へ
https://www.umaicoffee.jp/page/109

上記2つのページに分かれているのですが、
初めまして! いらっしゃいませ! のお客様に、ヴォアラ珈琲のこだわりやコンセプト、特徴、強みを1ページにわかりやすくまとめるのが良いと思います。

井上社長や川井田さんが、初めて実際にお会いする方に最初の1分でヴォアラの自己紹介をするとしたら、何をどんな風にお話しされていますか?

A4用紙1ページのパンフレットに収まるくらいのボリュームで、簡潔に短時間で伝わるように考えてみてください。

その他、気づいた点


EC仙人 太田

●ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル、コロンビア、メキシコ、ケニア…など産地がさまざまですが、文字だけでなく国が違うことをわからせるために、すべてのサムネイルメイン画像に国旗を入れたり、大陸地図に☆を入れたりなどの工夫があれば、よりいろいろな国や産地の商品があることがひと目でわかりやすく印象付けられると思います。

●数多くの生豆を販売されていることは、専門店の中でもアドバンテージがある点だと思いますが、
https://www.umaicoffee.jp/product-list/177

「焙煎についてのご質問は受け付けておりません」と一刀両断するような表現ではなく、「焙煎についての個別のご相談、ご質問はご対応できかねます。生豆は焙煎の経験がある方や、ご自身で焙煎を楽しみたい方、チャレンジしてみたい方へおすすめいたします」のような穏やかな表現にしたり、焙煎についての一般的な解説コンテンツを用意したり、焙煎に関する専門書を紹介したりされると良いかと思います。焙煎機に関しては、現在は数十万円する高額なものしかないので、数千円〜数万円クラスの焙煎機や手段も紹介して選択肢を広げてあげると、楽しみたい方が増えると思います。

総評

リピーターによる注文、売上実績は大したものだと思います!
その下支えがあるうちに「新規顧客獲得の勝ちパターン」を築くことが肝要です。

とにもかくにも、オンラインショップ=通信販売業であるということを改めて意識して、その上で新規のお客様をどう惹きつけるのか? どうすれば試してもらえるのか? どんな商品(豆の種類だけでなく、個別の量やパッケージ、組合せなど)が通販に適しているのか?

新規客獲得 → リピーター → ヘビーユーザー → 大ファン
と顧客を育てて行くプロセス、道筋を満たすような商品やサービスをどう考えていくか?

などなど、表面的な見た目やテクニック論よりも「通信販売業」としての成功モデル、勝ちパターンを作り上げていくことのほうが優先順位が高いと思います。

商品そのものやプロとしての専門性の深さ、レベルの高さは同業他社に比べても秀でたものがあると思います。通販業、特にネット通販業としての業態に合わせた体制や商品企画、マーケティング戦略を築いていければ、まだまだ大きく成長できるお店・企業だと思います。

担当者のスキルからネットショップは任せた、ではなくネット通販事業をどう育てていくか? ネット通販向きの商品はどんな構成にするか? という観点で、全社横断的なネットショップチームを築いていかれることをおすすめします。戦略立案に悩まれたら、いつでもお気軽にご相談ください!

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。