プリシアター・ポストシアター

カテゴリ:本、雑誌

プリシアター・ポストシアター

ロングテール商品を今後2万点アップしていく予定だが、1日よくて10点で5年を要する。また、5000点までしかひとつのサイトで掲載できないようなので、思案中。 2万点からお客が必要な書籍を捜すのはこのままのサイトではきつそうであり、嫌気がさしそうだ。図書館の検索エンジンみたいなサイトにすべきだと考えたくなるし、そうあるべきなのかもしれない。

Go toキャンペーンといえばトラベル(旅行)とイート(飲食)の印象が強いですが、実はあとふたつ、「Go toイベント」と「Go to商店街」というものがあります。

コロナの煽(あお)りを受けて厳しいのは旅行業や飲食業だけではありません。

リアルな観客がチケットを買って見に来てくれるような、いわゆるエンターテイメント業界も「三密回避」でイベント自体が行えなかったり、行っても客席を半分以下に減らして行うなど、来場者減によるチケット収入も、またパンフレットやグッズ販売の収入も減って大変なようです。

ミュージシャン、スポーツ、演劇、落語や漫才、マジックから動物のショー、ストリップ劇場など、あらゆるエンタメ業界は客数減少に苦しんでいます。

また町の商店街も、スーパーやドラッグストアなど生活必需品のお店こそ賑わっていますが、衣類、呉服、宝石、書店、時計、インテリア雑貨、住宅設備、美容やマッサージなど多少の贅沢品、不急の品を扱う店、人との接触のある業種などでは、買い控え・消費の冷え込みや「三密回避」、長時間滞在回避の集客減で苦戦している店も少なくありません。

ぜひぜひ、読者の皆さんも、同じ商売人としてだけではなく、消費者・生活者としてきちんと感染症対策をとっているエンタメ業界や地元の商店では、積極的な消費をして経済を回していただきたいと思います。

さて、本日のお店はそんなエンタメ業界にかかわるリアルな町の商店のひとつで、現在はちょっとリアルでは集客減や催事の減少で苦しんでおられますが、ネットでの活路拡大に頑張っておられる演劇・エンタメに特化した古書店さんです。

それでは「ダメ出し!道場」、始まりです!

第一印象
よく見れば分かるけどよく見ないと分かりにくい店


EC仙人 太田

上部の本の表紙らしき楽しそうなイラストや左側のカテゴリーメニューにある「演劇」「劇作家」「伝統芸能」「ミュージカル」「宝塚」「舞台」「映画」「落語」「大衆芸能」「人形劇」「サーカス」「手品・奇術」「ストリップ」などエンターテイメント関連の何かを扱う専門店だということはなんとなくイメージできるのですが…

店看板にも、上部の説明や、中央の「いらっしゃいませ」のあいさつ文などでもイマイチわかりやすくは書かれておらず…

「パフォーミングアーツとその周辺に特化します」

うーん、何屋さんなの?

何を強みに、どんな店主がどんな商品を取りそろえているお店なのか?
初見の初心者さんにでもわかりやすい表現で自店紹介してほしいところです。

いくつかカテゴリー内を見ましたが、商品数もあまり多くなかったり、ゼロのカテゴリーもちらほら。見かけは期待大なのに、中身の少なさにガッカリ。

古書や古本、古いポスターや台本など、元は定価や売価が設定されていないような限定・レア品の手に入りづらい「資料」的な商品も多く、専門性が高い様子は感じられるので、そのあたりの「強み」をもっとアピールされたら良いのに。いや、してほしい、そんなお店ならぜひブックマークしておいて何度も宝探しに訪れたいのに。

そんな第一印象でした。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

店長の小林さんは64歳。高校時代にシェイクスピアの戯曲を読んだのをきっかけにハマり、大学時代にシェイクスピア英語劇研究会に誘われて英語の勉強と戯曲を両方できると芝居にハマり、どっぷりと浸ったそうです。

卒業後は旅行会社で働き、その後イギリスに留学し本場で芝居を見まくり、その後、オランダのアムステルダム、アメリカのニューヨーク、サンフランシスコ、そしてハワイに寄ってミュージカルやオペラなど年間で80本もの舞台を見て帰国されたそうです。

当時はネットなどなかったので、現地で情報を集め、自らチケットの予約、移動の手配などを行ってきた経験をもとに、ロンドンの興行チケット販売会社の日本での代理店業務を引き受けることに。

それを1989年から19年間行ったとのこと。その間、2001年の9・11、2008年のリーマンショックなどの逆風に耐えつつも…
旅行者の減少やネット普及での代理店利用者減少もあって、2009年に自主廃業されたそうです。

でもその間、ライバルの興行チケット業者と差別化を図るために、演劇の台本やパンフレットなどをオプションとして仕入れていたのがやがて商品となっていて、2007年にスタートしていた古書店を本格的に取り組むことに。

その後借りた事務所兼倉庫を実店舗として経営しながら、各地の古書祭りイベントなどにも催事出店して頑張っておられるようです。

ただ、実店舗や催事では演劇などの書籍や資料などはあまり売れず、他の一般書が売り上げの中心なので、今後はもっとネットで演劇系・パフォーミング・アーツ(演じる芸術)全般を売れるようにしていきたいとのことで、ヒントを求めて「ダメ出し!道場」にご応募いただいたようです。

ネット店に出されている商品数はまだ1,000点ちょっと。(それでさえ、おちゃのこショップの中ではかなりの品数ですが)
バックヤード倉庫にはなんと2万点以上はあるとのこと!

ただ問題は、冒頭の申し込み文にもあったように、実業の片手間での商品ページアップでは1日に10点程度がせいぜい。このペースでは2万点アップには2,000日(5年半)もかかってしまう…

現在64歳の小林さん。あと11年、75歳くらいまで頑張ろうと予定されているそうですが、その貴重な11年のうち5年もかけて、ズルズルとなかなか売れないまま商品登録に費やしていては時間がもったいな過ぎますし、売れない期間が長引くほど運転資金的にも厳しくなってくるかもしれません!

しかし先立つモノ(資金)もコロナ下でなかなか厳しいのも現実。なんとかしなきゃと思いつつ、行き詰まっているのが現状のようです。

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

まずは、スマホ対応を万全に!
おちゃのこさんに相談して、早めにレスポンシブ対応のスマホ対応ページにテンプレートを変更しましょう!

その上で、以下は体制面、商売の中味のダメ出し。

古書店や中古品店などは、小林さんも書かれているようにロングテールなビジネスモデルです。
ロングテールとは、わかりやすくいえば、1点物などが大量に陳列されている、いわゆる多品種小ロット型の店舗で、1点1点の売り上げは細いけど、多く連なる、グラフ化した時に恐竜やトカゲのしっぽのように細く長ーいイメージなので「ロングテール」といいます。

ロングテールの逆はヘッドといい、例えば行列のできるケーキ屋さん、レストランなどは少品種だけど上位(ヘッド)のヒット商品が売り上げの大半を上げるもので、少品種大量生産で大きな売り上げを作るモデルです。

一般的にロングテール戦略を取るようなビジネスモデルでは、とにかく豊富な品揃えで、迅速・低ランニングコストなど効率的なロジスティクス(物流)、そしてそれらをスピーディーに少人数、低コストで実現する、ITCシステムが必要です。
つまり人手はかけないけれど、物流とシステム面と多品種の在庫を検索性よく低ランニングコストで大量の注文をさばけるような大きなシステム投資が出来るか否かが成否の分かれ目といっても過言ではありません。

典型的なのがAmazonであったり、ASKUL、ZOZOTOWN、ヨドバシなどですね。
そこまで行かないにしても、ブランド中古品販売店などでもとにかく効率的に商品検品、撮影、説明文作成、入力、ページアップを分担し、流れ作業で日々大量にこなしていけるようなお店が生き残っています。

なぜなら…
ケーキ屋さんなどは、例えば商品単価は500円でも、人気商品は毎日、何百個、何千個も注文がくれば1商品が数十万円、月に数百万円、と売り上げを作り、それに加えて長くヒットすれば、その商品ページが延々と売り上げを作ってくれます。

でも、中古品店、古書店などはほとんどが1点物なので、例え単価が1万円でも、1ページ作ってアップして1件注文がくれば、もうその商品ページは1万円止まり。それ以上の売り上げを生んでくれません。

要するに、売上を上げたければ、どんどん商品登録をして、新たな商品ページをアップし続けなければ売り上げも伸びないのです。
手作業での1点1点の商品登録では実に非効率な業態なのです。

ですので、正論でダメ出しするならば、
「1日10点で2万点アップするには5年もかかる!」なんて言っている時点でネットの古書店は向いていないと言わざるを得ません(激辛)。
とはいえ、そう見放しては「ダメ出し!道場」の意味がないですね(^^;)

プリシアター・ポストシアターさんでもできそうな、いくつかの解決案、改善案を考えてみましょう。

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まずは【案1(人を雇って商品アップを早める)】

出費をしたくないからと、1人で1日10点ずつ5年を費やす場合、仮に自分の報酬をかなり低く見積もって年間200万円としても、5年で1,000万円かかります。

でも例えば初年度に人を2人雇って時給1,000円で8時間、月に20日程で16万円×2人で32万円。年間240日で2万アイテムなら1日83アイテム。専業なら十分できそうですよね。

32×12か月=384万円 かかりますが、1年で2万アイテム出品した状態で商売ができます。5年1,000万円に比べても600万円以上のコストと4年間の時間が節約できます!
5年ダラダラと目立たない費用をかけて販売機会を損失し続けるか、1年間初期投資はかかるけど早く2万アイテムで販売機会を増やすか?

早く増やせば早く売上がアップする確率も増えますよね。

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【案2(自分でやるけど、商品ページアップはせずに目録だけ作成)】

インタビューによると、倉庫で古書や資料は箱に入った状態で整理もされておらず、山積みとのことで、それを箱から出して整理しながら1冊1冊撮影して商品登録をしていく作業が大変とのこと。

であれば、商品撮影や商品ページ作成はあえてせずに、
まずは…とにかくお客様に検索して見つけてもらえるように、片っ端から箱を開けては
品番、書名(資料名)、概要(出版年、価格、人物名など)キーワード、価格
だけを書き出し、一覧表を作り、テキストで出力してフリーページにアップしていく。
毎日少しずつ書き足しては上書き更新していく。

お客様にはとにかくこのページでページ内検索して必要なものがあるかどうか見つけてもらい、あれば品番で問い合わせしてもらい、問い合わせが来たものだけ撮影して写真を送るか、商品登録して注文できるように運用する。

これなら1日10件ではなくその何倍かは書き出しできて、もう少し短期間で2万冊の目録一覧だけは作れるのではないでしょうか。

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【案3:(案2)を人を雇ってもっと短期間で実現し早く売上UP】

これなら2人〜3人で1日200冊分書き出せば、100日400冊なら50日でできちゃいますよ!

しかも倉庫の整理と箱ごとのインデックス作成(どの箱に何が入ってるか)も頼めば目録ができるので、今後の運営に大きな効率アップになると思いますよ!

総評

ずばり、プリシアター・ポストシアターさんは、古書や古い台本やチラシポスターなどの演劇や舞台関連の資料を膨大に持っていることが最大の強み!

その強みをダラダラと小出しにしていては、なかなか認知もされなければ、受注にも繋がりません。

モノづくりで新商品を生み出すことはできないのですから、とにかくバックヤードにある品をネット上に出さなければ売ってないのと同じです。

資金がないことを嘆いたり言い訳にしていても始まりません。
零細ショップは零細ショップなりに…
お金がなければ労力を!、
労力がなければお金を!
お金も労力もなければアイデアと運用の工夫を!

スモールショップの生き残る道はそれしかありません。

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そして、演劇やミュージカルなど舞台、エンタメ業界の関係者やそれを目指す研究生、大学生、教授や講師、研究者の方々、趣味のコレクターたちにしっかりと認知されれば、とても魅力あるお店なのではないかと思います。

ただし、そのためには1日も早く、膨大な倉庫の宝の山をネットに出すことと、それを認知させるためのSNSでの情報発信が必要だと思います。せめてtwitter アカウントのひとつでもあれば…
気に入ったお客様がリツイートして口コミで広がっていく可能性は高いのではないかと思います。

実店舗も幸いエンタメ業界人や学生も多い東京にありますし、膨大な商品がネットで検索できるようになれば、実店舗への集客や問い合わせもきっと増えていくと思います。

まずは、短期間での目録、一覧の作成とアップ。わかりやすい自己紹介、検索や問い合わせの説明など基本の充実を急いで頑張ってみてください!

最後になりましたが…申し込み時の質問

> おちゃのこでは5,000点までしかひとつのサイトで掲載できないようなので、思案中。

とありましたが月額3,000円のベーシックプランでは標準で5,000点ですが、オプションで最大3万点まで掲載可能。

月額1万円のアドバンスプランなら5万点まで掲載可能ですので、十分ではないでしょうか。
月商何百万円、何千万円を目指されているショップさんであれば、月額3,000円〜1万円の投資を惜しいと考えているようではダメ!
と最後にもうひとダメ出ししておきます(^^;)

成長段階のお店は「コストパフォーマンス」の発想ではなく、「先行投資」の発想が優先的に必要です。

以上、ダメ出し!道場 でした。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。