藤沢しぇんろんオンラインショップ

カテゴリ:食品、飲料

藤沢しぇんろんオンラインショップ

今年の2月からおちゃのこネットさんを使い始めました。
ネットショップは、初めてです。
当社は、26年飲食店を経営していますが、2年前から飲食店だけの売り上げでは浮き沈みが激しく、経営が安定しないので、自社のレシピで商品化した油そばを販売できないかと思い、おちゃのこネットショップを始めました。
今年の4月から、ハム工房を作り、5月に食肉加工製造免許と、食肉処理業の免許を取得して、自社のハム、ソーセージ類を販売できるようになりました。
コロナの緊急事態宣言で、飲食店を休業していた時は、一日で80件近い売り上げがあり助かりました。しかし、その後は受注がどんどん減って、9月はたったの1件でした。
メルマガ配信や、SNSで宣伝しても、なかなか結果が出ません。コンスタントに売り上げが上がるショップにするのにはどうしたら良いか、何から始めたら良いか、悩んでいます。
どうぞよろしくお願いいたします。

「コロナで売上が減少」「コロナで赤字」「コロナで客が激減」
もうこんな声が溢れてしまっている2020年ですが…

そんな中でも新規オープンや「新商品を開発、販売開始!」
なんて前向きに頑張っておられるニュースもちらほら目にします。

最初はマスク関連商品であったり、消毒や殺菌など衛生関連品や「密」を回避するグッズだったりと、直接的なコロナ対策商品のニュースが多かったのですが、最近では、コロナには直接関係のない一般的な商売や商品の話題も出てきました。

ステイホームやリモートワークの増加など、「withコロナ」で変化したライフスタイルに対応したビジネスや商品に追い風を感じて、チャンスを見出した会社やお店が出てきているということだと思います。

今回のお店は、神奈川県藤沢市にある飲食店さんがコロナ騒動の直前におちゃのこネットでオンラインショップを始められ、緊急事態宣言下で実店舗は休業を余儀なくされましたが、その間に「ピンチはチャンス」と素晴らしい商品開発をされたお店です。

まだまだネット通販では経験も少なく苦労されているようですが、この2020年は将来への大きな可能性を得た転機になっているようです。

それではダメ出し道場、始まりです!

第一印象
おちゃのこショップだけで見るとよくわからないが…


EC仙人 太田

藤沢しぇんろんオンラインショップ さんは
https://www.fujisawa-shenlon.net/

おちゃのこショップだけを見ると…
まずはお店のキャッチコピーが

「湘南ふじさわで四半世紀。出汁を極めた油そばです」

販売商品は、自社開発製造の

油そばセット
ベーコン・ハム・ソーセージ詰め合わせセット
リンゴの北欧焼き(ケーキ)
ラー油

を売っている一見ではなんだか脈絡のない、よくわからないお店です。
辛口御免! (^^;)

トップページにも、ご利用案内にも、特定商取引法表示を見ても、会社やお店の自己紹介がなく、四半世紀とだけ言われても「何が四半世紀なの?」とまったくピンと来ません。

「お店について」をクリックすると、実店舗の飲食店のホームページが開くのですが…
↓↓↓↓↓
「純米酒料理屋しぇんろん」
http://fujisawa-shenlon.com/

こちらを見てようやく、「ああ、飲食店が四半世紀なのね」と気づく人もいるかもしれませんが、お店のページを見なければそれすらわかりません。

お店のページには…

「煮干しと鰹節で丁寧に出汁を引いています。地元湘南ふじさわ産の野菜を使ったお料理と、米と米麹で造った純米酒はとてもよく合いやさしい味わいです」

とあり、どうやら日本酒と出汁と地元の食材をウリにした和食系の印象。

写真を見ると、かなり美味しそう!
個人的には私の大好きな系統のお店で、近くにあればすぐにでも行きたい!(^^;)

そんな感じなのですが…

これまた、ぱっと見 だけでは 油そばやハム、ソーセージとの関連性はハテナ?

メニューのページをじっくりと見ていくと、ようやく
http://fujisawa-shenlon.com/ryouri.html

「名物油そば」とか「自家製ソーセージ」「自家製フランクフルト」などがあることから、どうやら「お店で評判になったメニューを通販向けに商品化したのかな?」ということが見えてきました。

もう少し読み進めると、なんと「ドイツ農業協会(DLG)主催の食品コンテストでゴールドメダル(金賞)」
おぉ、なんかすごそう、旨そう!

でもここであらためて、オンラインショップのほうに戻って見てみても、トップページにはその受賞のことなどひと言も書かれていない…(汗)
この「ダメ出し!道場」への申し込み文にも書かれていない…
(商品ページには小さな文字の説明文で書かれていました)

う〜〜〜〜〜〜〜ん。

謙虚なのか、鈍感なのか? 単にズボラなのか?
こんな強みをアピールしないなんてもったいなさ過ぎますよね(^^;)

これはダメ出しの し甲斐があるお店だなぁ〜(笑)

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

前述のようなトップ
ページの謙虚過ぎるもったいない印象から…

ダメ出し申し込み文にあった、
「コロナの緊急事態宣言で、飲食店を休業していた時は、1日で80件近い売り上げがあり助かりました」

はいったい、どんなところから、どんな人たちが注文してくれたのか?
すごく不思議で気になり、ぜひ聞いてみようと思い、ネットショップ店長の羽鳥真理子さんにインタビューのお電話をしてみました。

まずは、お店の成り立ちから。

おちゃのこネットには今年2020年の2月から出店で、ネット通販はこれが初めてとのことですので、まだ本当に初心者オンラインショップさんですが…

本業の飲食店は開業が平成7年(1995年)。営業26年目の地元に根付いた人気店のようです。ネットショップ店長の真理子さんと夫の祐司さんとで始め、現在は息子さんと真理子さんの妹さんの4人で切り盛りされている家族経営のお店だそうです。

店名の「しぇんろん」は、開業当時はまだ小さかった息子さんが大好きなアニメ「ドラゴンボール」に出てくる、7つのボールを集めると出現する、どんな願いも叶えてくれる「龍」の名前 「神龍(しぇんろん)」から名付けたそうで、今でこそ日本酒メインの和食を中心としたメニューですが、当時は中華料理をメインとする定食屋さんだったこともあって、「しぇんろん」はマッチしている店名だったようです。

しかしながら長い間には、店主であり料理人の祐司さんが縁あってある酒蔵元の社長に出会い、日本酒のことを学んだり、和食の本格的な出汁や無添加の料理法を研究、追求していく中で、メニューも業態も変化し、今のようなお店になったそうです。

店主の祐司さんは、その前は弁当や総菜などの製造販売会社で調理人の修業もされていたので、中華、和食だけでなく幅広い料理の知識や経験もおありで、日本酒と和食を中心にしながらも洋食、肉料理、デザートや菓子などのメニューも作り、地元でも愛されるお店として人気のようです。

元々、中華の店だったこともあり、ラーメンや炒め物などもあり、中でもオープン間もない頃にまだ全国的にもブーム前の「油そば」を開発し、お店の名物メニューとなった(来店者の多くが注文する)のを、数年前から通販商品化できないかと研究して、粉の配合から見直し、ゼロから作ってくれる製麺屋さんの協力の元、全粒粉を使った美味しい麺ができたので、令和元年ついに通販商品化が完成し、それを販売しようと、おちゃのこネットに出店したとのことでした。

つまりオープン時はとにもかくにも「油そば」を売るためのオンラインショップだったんですね!

でもこれだけにとどまりません。

実は2年前からは、調理師専門学校を出て15年間ほど外の飲食店で修業してきた息子さんが加わり、コツコツと研究開発していた自家製のハムやベーコン、ソーセージなどを、2019年に開かれたドイツ農業協会(DLG)主催の品質競技会に出品したところ、みごとに燻製ベーコンが金賞、フランクフルトが銅賞を受賞。

DLGコンテストは、ほとんどが食肉加工のメーカーが出品するような135年以上も続く世界的にも権威あるコンテストで、日本の一飲食店が金賞を受賞するのは本当に快挙のようです。

その際の審査員を務められた畜産食肉加工研究のエキスパートである日本人のある大学教授の紹介で、なんと地元藤沢で、オリーブ油を搾った後の果肉を飼料として与えて育てている「ふじさわオリーブ豚」の畜産家と出会い、その大学教授の勧めもあって、共同でオリーブ豚を使ったハムやソーセージの工房《青空ミートハウス》を設立開業し、たった数か月で商品化。

ネットショップはオープン間もない所に、コロナ騒動で実店舗は休業と、一気に逆風が吹いたものの、ピンチ(休業で暇)をチャンスに変え、新規事業に注力し、一気に商品化、事業化されたとのこと! 世の中がコロナで先行きが見えず、不安に包まれる中、その決断力、集中力、行動力は本当におみごとです。

と、ここまで、一気に書き連ねましたが、皆さん付いてこられていますか?
(^^;)

私も電話インタビューをしていて、あまりの情報量とエピソードの豊富さに「ちょ、ちょっと待ってください、…ってことは〜…」と、何度も確認しながら聞き進めました(^^;)

個人名や、企業名や企業秘密に当たるようなこともいろいろとお話しいただいたのですがここでは省略させていただいています。

そして、油そばも、化学調味料不使用にこだわったタレですし、ハム工房も豚肉、塩、スパイスのみでハムやソーセージに一般的に使われる発色剤やリン酸塩など化学的な添加物を一切使わないどころか、砂糖までも使わず、肉本来の旨味と安全にこだわった商品づくりをされています。

どうですか?
ここまでのお話を聞くと、がぜん、食べてみたくなりませんか?(笑)

しかーし! これらの正に「強み」となるエピソードやこだわりについて、トップページには一切バナーや大見出しもなければ、キャッチコピーもない!(苦笑)

どないなっとんねん! 謙虚過ぎてもったいないにもほどがあるわっ!
(^^;)

思わず関西弁でツッコミ入れたくなりました(笑)

とはいえ、不思議なのは、申込文にあった
「コロナの緊急事態宣言で、飲食店を休業していた時は、1日で80件近い売り上げがあり助かりました」の文章。

コロナ下で、なぜ急にそんなに売れたのか? 誰が買ってくれたのか?

実店舗の常連客さん達が、お店のピンチを助けようと口コミでみんなで買いに来てくれたのかな? などと思ったのですが、そうではありませんでした。

救世主 息子さんの活躍です!(^-^)
息子さんが個人的にやっていた twitter でつぶいたところ、それがバズリ(うまく拡散され)一気に全国から注文が入ったとのことでした。

緊急事態宣言のころ、さまざまな飲食店やお店がピンチの窮状をツイートし、それを見た人々が、少しでも助けにと情報を拡散してくれたり、注文してくれたりする救済行動があちこちで話題になっていましたが、つまり、運良くバズって「コロナ救済特需」が起こったということだったのです。

急激な注文増でパニックになったお店も、受注を止め、しばらくは製造と出荷に追われたそうですが、その後数週間ですっかり注文が収束し、最近は注文も少なく、お店の公式Facebookアカウントで宣伝したりしてもほとんど反応もなく、悩まれているとのこと。

その後、息子さんは個人アカウントのtwitterだったこともあり、継続してお店の宣伝をツイートしたくないとのこと(苦笑)

とにかく現在はなかなか売れない状況に悩んでの「ダメ出し!道場」への申し込みだったようです。

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

はい、ここまでちゃんと読んでいただいた勘の良い読者の店舗さんなら、もう重要なダメ出しポイントはある程度お気づきかと思います。

自分の店のことは見えにくいし、気づきにくいけど、よそのお店の「ダメ」は意外とわかるんですよね(^^;)

そう、この しぇんろんさんの最大のダメ出しは、自社の強み、自社商品の強みや特徴をトップページや商品名など、まず最初にお客様が見るところでアピールできていない点です!

商品ページの説明文には一応書いてある…でもそれじゃダメ!

商品画像や商品名や大見出し、まず目にした時点で興味を惹きつけられなければ、商品ページにもきてくれないし、小さな文字で書かれている商品説明文なんて、わざわざクリックやスクロールして読んでもらえるなんて思ったら大間違いの大甘です!

街を歩いても、新聞や雑誌を見ても、ネットを見てもあふれかえる情報や広告宣伝を見ていて、いちいち細かい文章まで全部読みますか?

人間の脳は、まず、姿形や大きさや色で瞬時にモノを注意・注目すべき物とただの景色とに振り分けます。

ファーストルック(初見)で興味や注意、好奇心などを起こせなければ、もうただの景色に過ぎません。

食べ物屋さんの場合なら、まずは美味しそうな写真は当たり前ですが、それすらも氾濫する広告宣伝で見慣れた現代人には写真+αとなるような強烈に興味をそそられるようなキャッチコピーやキーワードがなければ「おっ! 何何?」「詳しく知りたい!」とはならず、つまりは商品説明なんて読んでももらえないのです。

しぇんろんさんの 油そばの場合ならまずは、
「湘南で25年・人気居酒屋で必ずみんなが注文する絶品油そば」
とか、
「ミシュラン・ビブグルマン掲載の人気店で注文率No1の絶品油そば」

サブ見出しには、
「国産全粒粉のこだわり麺に天然出汁の利いた無化調のタレ」
といったキーワードを入れ込む。

ハム工房の商品に関しては、
「本場ドイツのDLGコンテスト金賞受賞の工房が豚肉・塩・スパイスだけで無添加にこだわって作る藤沢オリーブ豚のハム・ソーセージセット」

「本場ドイツ人もびっくり! DLG金賞受賞! 豚肉・塩・スパイスだけの無添加にこだわって作る藤沢オリーブ豚のハム・ソーセージセット」

サブ見出しには、
「ふるさと納税返礼品にも選ばれた藤沢の逸品!」
のような地元での評価がうかがい知れるようなキーワードも入れておきたいところです。

「DLGコンテストとは?」「DLGとは?」などは、興味を持ってくれた人がクリックした先の商品ページで詳しく読んでもらえばわかるように説明しておけば十分です。
まずは商品名やトップページ上部のバナー画像見出しには、これらのキーワードやキャッチコピーをうまく入れ込みましょう。

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そして! 全体的にですが、食品ショップなのにトップページにある写真は全部商品パッケージ写真だけ。ガッカリです。

食欲こそ最大の動機付けなのに、「おいしそう!」「食べたい!」という欲求をそそる写真は1枚もない(泣)

調理、盛り付け、できれば箸やフォークで持ち上げて口を開けて入れる直前のような、シズル感のあるよだれの出そうな旨そうな写真をイメージカットとして、トップページにも商品ページにも入れ込みたいですね。

なんなら動画も欲しいくらいです。
グルメ番組でも食べる直前のお箸で持ち上げた湯気が出ているような映像って必須ですよね! ああいうのを参考に、ぜひ動画や写真を全商品で撮り直して用意してください。

今も商品ページにはかろうじて盛り付け写真はありますが、色味もどんよりして暗く、まったくおいしそうに見えませんし、盛り付けて時間もたって冷めて乾燥しているかのようにさえ見えます。かえってマイナスです。

食品店にとって美味しそうな写真や動画は生命線、あって当たり前、なかったり悪ければ注文率はガクッと下がるモノだと思ってください。

人間の脳はパサパサや色の悪い食物は避けるようにできているのです。

総評

今回は食に関してはベテランで魅力的な商品をお持ちなのに、ネット販売に関しては初心者で基本ができていない、正に「宝の持ち腐れ」のもったいない典型のようなお店です。

でも、商品は良いだけに(しかもリーズナブル!)その本質や魅力が伝われば「まず1回買ってみよう!」にはつながりやすいお店だと思います。

味は食べていないのでまだなんとも言えませんが、25年の業歴の中で、人気メニューである油そばと、ハムやソーセージの本場のドイツや専門家達を納得させた味であるならば、きっと本物の味でしょうし、一度食べさせられれば、一定数以上の採算に乗るリピート率にはつながっていくのではないでしょうか。

食品店はリピート客が重要です。
そのためにはまず新規客に、「一度試しに買ってみよう!」と思わせ、食べてもらわないことには始まりません。

コロナ特需のような一時的な注文を期待するのではなく、食品のお取り寄せ通販属性を持つ、日常的に美味しいものを通販で買ってくれる習慣を持つリピート客を着実に一人ずつ増やしていくことが肝要です。

そうした属性のお客様は自分で買うだけでなく、気に入った商品は家族や親戚、友人などに贈り物として注文してくれる確率も高いから、なおさらです。

そのためには、今回指摘した「強み・魅力を気づかせること」は当然ですが、1回目を試しやすい、買いやすい「お試しセット」、
例えば、新横浜←→藤沢 食べに来たと思って運賃分往復(1180円)と、お店で食べる値段(550円)で1730円のところ、「1500円ぽっきり送料込みお試しセット!(おひとり様1回限り)」とか。

実際の電車賃などと比較しつつも割安感を出して、送料だけ確保できれば商品利益は度外視してでも食べていただくような「1食お試しセット」をできるだけ安価に作って販促するようなことも、チャレンジを検討していただきたいと思います。(商品にリピートの自信があるならばぜひ)

前回の「ダメ出し!道場」でも申し上げましたが、
成長段階のお店は「費用対効果(コストパフォーマンス)」の発想ではなく、
「先行投資」の発想も優先的に必要です。

赤字でも、リピート客獲得コストとして試食や試供品を安価に販売している会社も通販業界では多く見られます。リピート注文に自信がある商品力・会社の勝ちパターン。

本当に味に自信があるのなら、リピート注文が期待できるはずです。
まずは食べてもらうために利益を削ってもお試しセットの企画、チャレンジをぜひ検討してみてください。

もし、万一、お試しセットを買ったお客様から思うほどリピートがないならば、商品の質や価格設定などなんらかの問題点があるとわかります。

ネットショップの世界でも神龍(しぇんろん)はいきなりは現れてくれません。コツコツとドラゴンボールを1つずつ集めて通販事業成功の夢をぜひ叶えてください!(亀)

以上、「ダメ出し!道場」でした。(^^;)

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。