猪狩人

カテゴリ:住まい、インテリア

猪狩人

猪罠とその部材を販売しているショップです。
25年前に金物店としての将来に不安があり、ネットショップを始めました。当初は猪罠はホームセンターには販売されていないニッチな商品としてネットでの成果はそこそこありました。
しかし近年では競合店が増え、売り上げを維持することが大変難しくなってきています。
悩みは、力を入れているメインのおちゃのこサイトでの売り上げが伸びないことです。アクセス数が多くても売り上げに繋がってないことが多く、何か原因があれば改善したいのですが、原因がわかりません。よろしくお願いします。

唐突ですが、今回は猪(イノシシ)の話から…

私の住む兵庫県には「猪名川(いながわ)」という川が流れており、その名の由来になったかどうかはわかりませんが、上流域の町村には猪肉を使った「しし鍋料理」をウリにする飲食店や宿が何軒かあり、地元の名物になっています。

その周辺のスーパーに行くと、イノシシのお肉もよく見かけます。もちろん、猪は野生動物ですので、スーパーには、たまたま猟があってお肉が入荷した時だけしかありませんが。
飲食店や宿は安定して材料を確保できなければ経営できませんから、一定の量は定期的に入荷できるのでしょう。

神戸観光に来られ、六甲山に登ったことがある方のなかには、山頂展望台の柵の外に、餌をもらいにやって来る野生のイノシシ達を見たことがある人もいるかもしれません。

六甲山以外でも、東西に長く山と海の間が近い阪神間では、山から海への川や水路がいくつも流れているのですが、その水路にもよくイノシシが出てきます。
日向ぼっこして寝そべったり、水浴びしたり、遊んだりして、周辺の住人や観光客からパンやお菓子などをもらって餌付けされてしまっている光景が見られます。

とはいえ、野生動物ですので危険ですし、人や町に慣れてしまって、恐れて逃げずに近づいてくるようになると、時々は柵を超えて町に出てきたりして、畑や庭を荒らしたなどということも起こります。

私も、長年、兵庫県は猪が多いんだなぁくらいに思っていたのですが、昨年末にたまたま見たNHKの「サイエンスZERO」という科学番組で、猪の被害に関する特集をやっていました。
それによると、過去30年間で、日本全国の野生イノシシの数はなんと約25万頭→88万頭と3倍以上に増えているのだとか!
それに伴って縄張りが密になり、猪達が人里や町に出てきたりするようです。

また、地方や山間部の農村などは(人間の)高齢化と過疎化が進み、畑と山の間の里山と呼ばれる緩衝域の山林の藪の伐採や草刈りがされなくなり、本来は警戒心が強く、あまり姿を見せたがらないイノシシも、藪や草むらに姿を隠したまま田畑の傍まで近寄れてしまうので、美味しそうな作物に気づいたり見つけやすくなってしまっているのだとか。

そして、本来は粗食でどんぐりやミミズなど低カロリーな食料でほどほどのサイズに成長し、そこそこに繁殖していたものが、高カロリーな作物や餌付けによって短期間で大きく成長し、通常4年で50kg程度のところ、160kgにも成長するような個体も出現しているとか。
それに伴って、一度に産まれる子供の数が増えたり、繁殖力が高まったりして、個体数がより増えているのだそうです。

イノシシ以外でも全国各地で、ムクドリ、シカ、アライグマ、サル、クマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ、キツネ、タイワンリス、イタチ、テン、マングース、モグラ、ネズミ、スズメ、カラス、ヌートリア、ブラックバス、ブルーギル…

日本に生息するいろいろな野生動物によるさまざまな被害があり、今では各自治体に獣害対策の部署があるのは当たり前になってきていて、それぞれが補助金を出して猟師さん、猟友会や業者さんによる駆除をしているのだとか。

イノシシに限って言えば、ただ体の大きさだけで大人だと思って駆除をしても、実は成長が早く大きくなってはいても、まだ繁殖前の若い個体も多く、警戒心が強く賢く育った大人の猪はなかなか捕まらず、毎年多くの子を産むので個体数がなかなか減らないのだとか。

野生イノシシ88万頭が多いのか少ないのかピンとこなかったのでちょっと調べてみると、日本での食肉用の豚の飼育数が約900万頭なので、その約十分の一もの数が野生で山に住んでいる!
そう考えると、かなり多いことがわかるのではないでしょうか。

イノシシは何万年も前から日本に住む野生動物で、自然の生態系の一部ですから、むやみに狩猟して駆除すればよいとは思いませんが、本来なら狼などの天敵や、粗食でのサバイバルで大人になれる数が限られていたイノシシが、人間社会との距離が近くなってしまったがゆえに、高栄養で繁殖力が強くなり増えすぎた側面もあるわけです。
人間が狼の代わりの天敵となって、ある程度数を減らししたりしつつも、餌付けを止めたり、山と町の間の緩衝域を整備して畑を荒らしてしまうような距離に近づけない工夫などもして、徐々に適正な数にしていくようなことも必要ではないでしょうか。

さて、唐突にイノシシの話を長々としましたのは、今回のお店が、イノシシを捕獲する罠の専門店さんだからです。
狩猟など縁のない方には「???」なお店かとは思いますが…

あなたや親戚、知人、友人の市町村で、獣害で田畑や庭を荒らされているような話を聞いた際には、ぜひ思い出して市町村の担当者さんに教えてあげてください!(^^;)

それでは「ダメ出し!道場」始まりです!

第一印象:何の店かはすぐわかるが、どれを売りたいかが??


EC仙人 太田

看板の猪のイラストや、「猪狩人」という店名、罠、狩猟などの文字で、何を専門に売る店なのかは一瞬でわかり、大きな文字とコントラストのはっきりした色合いで、わかりやすいキャッチコピーのバナーも、レスポンシブル対応されてスマホでも見やすいページも…ここまではとても良いのですが…

メニューカテゴリーの商品名を眺めると何種類かあって、それぞれクリックしてみるとそのまた下に何種類かあって、価格もいろいろ違うようで、部品売りもされていたり…

うーん、わからん。

さて、いざ、どんな種類の商品(罠)が何種類あって、どう違って、価格や、機能や、使い勝手などの比較をして購入を検討しようとすると…

初見で実物や類似品でさえ見たことのない客には、
どんな仕組みでどう動くのか?
大きさや、仕様の違いや、価格差や、耐久性や消耗品や、使う場所や、シチュエーションや、セットの仕方など…

いろいろと比較検討項目がありそうだなぁというところまではわかるのですが…

とにかく、情報がごちゃごちゃしていて、あちこちに情報がとっちらかっていて、そこから先がわから〜ん! 決められ〜ん!

これは、私が猪を掴まえようなどと思ったこともないド素人だからわからないというのもあるかもしれませんが、猟師さんや害獣駆除の自治体職員さんや業者さんであっても、見たことのない商品であれば、同じようにわかりにくいと感じました。

ショップ内に書いてあるお店のモットー
「使いやすさよし、品質よし、価格よし」
は、そうだと思うのですが…

「比較説明が極めて悪し!」
というのが第一印象です。

申込文のコメントにもある
「アクセス数が多くても売り上げに繋がってないことが多く…」
はこのあたりが原因で、お客様も、理解しようとあちこちクリックしてサイト内のページを渡り歩いて比較検討するけれど…

途中で疲れたり、「結局よくわからん!」となって帰ってしまう方が少なくないのかなぁと感じます。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

いつものように、店長の木下美恵さんにお電話でインタビューさせていただきました。

おちゃのこ店は2016年からですが、会社は先代であるお父様が昭和18年(1943年)に創業され、もうすぐ80年という地元の島根県川本町では老舗の金物店さんで、工具、農具、資材などを幅広く扱っていらっしゃるとのこと。

全国各地の傾向と同じく地方の過疎化、高齢化の波の影響で、経営は決して楽ではないようですが、先代が亡くなられた後を継いで、別事業を経営される夫様と一緒に商品や商売の幅を広げながら頑張っておられるようです。

木下店長は、日本のネットショップ黎明期の二十数年前頃から独学でホームページ制作を勉強され、当初は趣味のホームページ作りからお店のホームページも作られて、金物店の商品をと幅広く掲載・販売されていたようです。
しかし、島根県の地方物産に特化したモールに出店した際に、何かに絞って専門店化してやったほうが成功しやすいと聞き、罠の専門店を始めたそうです。

猪罠という商品は、先代社長が50年ほど前に地元猟師さんの相談を受けて、バネでワイヤーの輪を絞って脚を締めて捕まえるタイプの足くくり式の罠「シシハンター」という商品を開発。特許取得して、ネット時代が始まるよりかなり以前から販売されてきた、知る人(猟師さん達)ぞ知るヒット商品のようです。

なので、主にターゲットとなる客層は全国の狩猟免許を持つ猟師さん達で、専業、兼業、猟友会会員などだそうですが、時には、自治体の害獣被害対策の担当部署からの相談や注文もあるようで、こうした団体や組織からのまとまった注文も今後は期待していきたいそうです。

もともと猟師さん達は、それぞれの罠の仕掛けや狩猟ノウハウを秘伝としていて、あまり人に教えないものだそうです。しかし当店の罠はシンプルで、セットも比較的簡単、価格も安めで、何より軽いので何セットも持って山に入るのも楽なため、多くの猟師さん達に好評を得たようです。

むやみやたらと山林原野を走り回る猪を、追いかけて銃で仕留めるなんてのは大変ですし、危険です。かといって、かかれば逃げられないけれど重くて大きな檻タイプの罠を担いで山に入るなんて無理ですよね。

それに、イノシシ研究の専門家によると、警戒心が強く、頭も良く、記憶力や判断力に長けた大人のイノシシは、檻式の罠に子供や仲間がかかるのを見ると、音やその大きな罠を覚えるので、二度と近づかなくなるそうです。

繁殖能力のない子ばかり捕まっても、繁殖力のある大人のイノシシを捕まえないと、結局、数は増えて被害は減らないそうです。

その点、軽量で安価な当店の足くくりタイプの罠なら、イノシシの通り道に何か所か仕掛けておくにも効率的ですし、万一、子イノシシや違う動物がかかったとしても、大きなケガをさせずに逃がしてやることができます。

さて、歴史あるお店の歴史あるヒット商品ですが、改良を重ね3年前には、「シシカブー」という新型の罠を販売開始され、好評のようです。(現在のイチオシ主力商品)

それまでは強い力でセットが必要だった「横弾きバネ」という部分を、非力な女性であってもセットできるような「押しバネ式」に変え、また足で踏むと作動する仕掛けの踏板部分を、一級建築士さん考案のシンプル・低価格だが確実で簡単な物に改良したそうです。

「シシカブー 使い方動画」
https://youtu.be/TdVXCiZfd54
↑↑↑↑↑
この動画を見れば、私のような初見の素人でも仕組みや動きがすぐにわかっていいですね!

シシカブーは従来品に比べ、地面の浅いところにセットできるため短時間でセットできますし、地面が固く深い穴が掘りにくいところなどにも向いているようです。

一方、一度イノシシがかかって暴れたりすると、押しバネというバネ部分が変形して使えなくなる(バネ交換が必要)というデメリットもあるようです。

つまり、バネ部分は丈夫で繰り返し使え耐久性の強い「横弾きバネ」タイプと、簡単だけど耐久性は低い「押しバネタイプ」、仕掛け部分は浅い穴でも安易に素早くセットできる「シシカブー」タイプと、やや深く穴を掘ってそこに踏み込ませることでしっかり脚を深く入れさせる「パイプ筒」タイプがあって、あとはその組み合わせや紐の長さなど細かなオプション、選択肢があるようです。

しかし、言葉や文字でいくら説明されても、見たことのない商品はなかなかわからないですよね(^^;)

「百聞は一見にしかず」

写真や、イラスト、そしてできれば動画で見せていきましょう!

総評

商品は間違いなく良いモノだと思います。
ですが、とにかく、ごちゃごちゃわかりにくい!

なので…「猪狩人」さんにおける最優先事項(1番目)は…
とにかく商品の一覧比較表を作って、種類と機能や長所・短所と価格の違いをひと目でわかるようにすること。

お客様のニーズや目的、予算に応じられる商品のグレードやバリエーションがあることは、専門店・メーカーとして良いことでもありますが、一方で、その違いや向き不向きなどを簡単に短時間で理解させられないと「よくわからん!」「めんどくさい!」になりかねません。

家電や、パソコンや車などのカタログなどを見ると、個々の商品の説明とは別に、ラインアップの比較表が必ず付いていますよね。

それを見れば、例えばパソコンなら、画面の大きさ、CPUの種類、メモリーやディスクの容量、サイズや重量、付属品やオプションの違い、そして価格も一覧で比較でき、自分の求める条件に合っていそうか、メリット、デメリットも検討しやすくしてあります。

売れ筋やイチオシ商品は先に見せ、特別な仕様や上級者向け製品、高級仕様品は後ろに載せるなどもよく見かけますし、わかりやすいですね。

イノシシ罠においても、パソコンみたいに「初心者向け」「熟練者向け」とか、
「バネのタイプ」
「仕掛けのタイプ」
「ワイヤーの長さ」
「バネの耐久性や強度(簡易さ優先か、耐久性優先か)」
「仕掛ける場所や条件(平地、畑、田んぼ、山林、岩場、雪山、掘る必要の有無)」

など比較検討項目があるはずですので、これらを横軸に比較表をぜひ作ってください。

今の猪狩人さんはなんとなく「シシカブー」がイチオシだとはわかるのですが、それ以外の物との明確な機能や目的や向き不向きの違いや動きなどがよくわかりません。価格比較も個々の商品ページに行ってメモしないとわかりません。

左のメニューからはシシカブーが押しバネ式で、シシハンターが横バネ式(?)かと思えば…
「シシハンター」と検索してみると
「猪狩人(シシハンター)シシカブー」という商品が見つかる…
https://www.shishiwana.com/product/95
https://www.shishiwana.com/product/111

シシカブーとシシハンターの違いとは? ん? もうパニックです(苦笑)
とにかく、何種類あって、違いが何で、それぞれ幾らなのか?

これを3秒でわかるくらい明確に1画面でわかるようにする!
これが最優先事項だと思います。

そして2番目はシシカブー以外の商品の説明動画も同じように1分以内の物を用意すれば、すぐに違いを理解してもらえると思います!

そして3番目。個々の商品の写真の上に矢印や赤〇の囲みを入れて文字載せし、パーツの名前や機能や消耗交換部分もわかりやすく表記していきましょう。
なにせ多くの方は初めて見る商品です。どこがどんな用途でどんな機能をもつ部品なのか、全体を見せられただけではわかりません。

「使ったら1回でバネ部分が壊れた」も、事前理解がなければクレームや不満になりますが、押しバネは使うと交換が必要な消耗品だと事前に理解してもらっておけば、クレームどころか最初から予備の押しバネを同時購入する人が増えて、客単価がアップすることに繋がる可能性も高まると思います。

またできれば、思い切って左メニューのカテゴリーは見直して、

*シシカブー(押しバネ式くくり罠)
*ヨコバネ式くくり罠
*小動物用
*消耗品、交換部品など
*その他

の5大分類カテゴリー程度に大きくわかりやすくして、お客様を迷子にさせない改善をオススメします。

「使いやすさよし、品質よし、価格よし」
そして「比較説明も極めてよし!」にしていきましょー!

以上、ダメ出し!道場 でした。

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後書き:
上でも述べましたが、イノシシ以外にも、モグラ、ネズミ、スズメ、カラス、ムクドリ、シカ、アライグマ、サル、クマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ、キツネ、タイワンリス、イタチ、テン、マングース、ヌートリア、ブラックバス、ブルーギル、カミツキガメ…

日本に生息する数多くの野生動物によるさまざまな被害があるようです。
最近では外来種が定着化している例も増えていますよね。

都会に住む方は、カラスやスズメ、ネズミの害くらいしか知らないかもしれませんし、追い払う、近寄らせない程度の対策しか知らなかったりします。
「駆除」つまり殺処分するというと、動物愛護の観点から「かわいそう」「ひどい」と思われて、SNSで非難炎上するなども見られますが…

農家や漁師さんなど直接的に被害を受けている方々にとっては深刻な死活問題ですし、時には噛みつかれた、襲われてケガをしたり命を落とす方が出たりもしています。

農産物、水産物被害は都会で暮らす人々の食料品の価格高騰や入手困難にも繋がっています。それほど広くはないこの国ですから、野生動物と人間社会の接点で起きるトラブルや悲劇(人間にとっては獣害、動物にとっても命がけのサバイバル)を少しでも減らしていけるように、皆が正しく知って、考えて、行政への働きかけや自然保護や環境整備などのボランティアなどもして行くことが必要だなぁ…とつくづく思いました。

私も、動物は大好きですし、できることなら殺されて駆除されるなんてことは見たり聞いたりしたくはないですが、被害に遭って苦悩されている方々の立場になれば、ある程度は「しかたない」とも思います。

人間は太古の昔より、魚や野生動物、そして家畜など、生き物の命を頂いて(食べて)生きてきました。都会の人とて日々、牛や豚、鶏、魚、野菜などの命を頂いて生きているはずです。
人間だけじゃなく生物は皆、他の命を頂いて(食べて)次の命に繋いでいくものです。

害獣として駆除された命もちゃんと責任をもって頂きながら考えていきたいですね。コロナ騒ぎが明けたら、ぜひイノシシやシカの料理をご家族で食べて考える機会にしてみてください。

参考:NHK「サイエンスZERO」
「“害獣”イノシシ研究最前線 科学の力で共生の道を」

https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020111043SA000/index.html

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※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。