ドイツミニカー倶楽部

カテゴリ:ホビー、カルチャー

ドイツミニカー倶楽部

自分で作ったネットショップなので、良いのか悪いのかわかりません。
知り合いに聞いても、お世辞半分で「いいんじゃない」などの返事が多く、改善点が見つけられません。
この機会に、いろいろご指摘をいただきたいです。
よろしくお願い致します。

モノを作って売る。

太古の昔、物々交換の時代から人類がやってきた、いわば商売の原点といえる行為だと思います。
最初は手と簡単な道具で、切ったり削ったり組み立てたりして、一つずつ作っては、それを欲しがる人に食料などなんらかの対価と交換していたのでしょう。

やがて、貨幣(お金)という知恵や、道具の進歩で量産ができるようになると、たくさん作って大勢の人に売り、多くの対価を得る(儲ける)という市場経済が作られてきました。

さらには、大勢の人力や、牛や、馬や、象や、ラクダなど動物の力を利用したり、水車や風車などを動力として使うようになりました。
産業革命以降、蒸気機関やエンジン、電気などの動力ができてからは、「大量生産・大量消費」の時代がやってきました。

ただ、モノがあふれかえる豊かな時代が続くと、人々は無駄な消費→廃棄に疑問を持つようになったり、みんなと同じ物を使うことがイヤになったりして、今度は「適量生産・適量消費」の時代になってきたと言われました。

現在もおおむねはまだこの時代といえるでしょうが、一部のより豊かさを求める人や、特定のモノにこだわりを持つ人は、よりニッチで限られたモノを求め、それに対応する「限定生産・限定消費」が生まれてきています。

車やファッションブランドの限定モデル、限定品などがそれですね。
最近では、食品や化粧品、洗剤やシャンプーなど、日用消耗品でも「限定品」はよく見かけます。
量産廉価品とは一味違う特別感、限定感が消費者・ユーザーの優越感をくすぐるのでしょう。

そして、そのさらに上をいくのが超限定品ともいえる「カスタム品」や「オーダーメイド品」「特注品」など、プレミアムなモノの世界です。
「個別生産・個別消費」と言ってもよいでしょう。

古くは、武士の刀剣であったり、名工の焼き物であったり、巨匠と呼ばれるような画家の絵画であったり、そこまで行かずともテーラーメードのスーツや、一点物で仕立てた着物であったり、注文建築の家や家具なども結構昔からある「個別生産・個別消費」のモノを扱う商売だといえるでしょう。

ただ、これらは一点一点、作り手が手間暇、労力をかけて作るモノなので、とにかく時間がかかります。
1日1品どころか月に数点、年に数点しか作れないなんてものも珍しくありません。

それでも、その労力や時間に見合う価格で売れて十分な収入が得られれば良いのですが、そうでは無い(儲からない)がゆえに廃れて、消えていったお店や業種も多いのです。

そんな中でも、生き残って、モノを作り続け、商売としても続けていけているのはどんなところなのでしょうか?

今回のお店は、そんな一点物やカスタム限定品、オーダーメイド品など「限定生産・限定消費」「個別生産・個別消費」のお店が参考にできそうな事例です。

ドイツの自動車の中でも大手自動車メーカーの標準的なモデルではなく、ALPINAとAMGといったチューニングメーカーの限定モデルに特化した、ドイツ人職人さんの完全ハンドメイド・ミニカーの専門店さんです。

第一印象:渋いけど、地味で控え目過ぎるお店だなー


EC仙人 太田

というのが第一印象です。

看板もテキストで「ドイツミニカー倶楽部」とあるだけで、キャッチコピーもサブタイトルも何もなし。

「当店はどんなお店なのか?」ということが中央の「いらっしゃいませ」のところの

「MINICHAMPSなどをベースにカスタムされたモデルを販売しています。製作は、ドイツの職人により、1台1台手作業にて分解、剥離、下地処理、塗装などを経て作られています」

という一文のみ!

グレーと白と黒という基調カラーのせいもあるのですが、渋くてクールだけどお店のアピールがほとんどなく、地味で控え目過ぎです。

「知っている人、わかってくれる人だけ来ればよい」という潔さなのかもしれませんが、これでは興味を持った初心者や将来の見込み客も足を(目を)止めて「詳しく見てみようか」という気持にはなかなかなれそうにありません(^^;)

「特定商取引法表示」を見ると、運営者は 法人でもなく
ドイツミニカー倶楽部 代表 上田 剛史
と店舗名・店長名のみで、お店のURL も alpina.ocnk.net で、よほど ALPINA がお好きなマニアックな店主か、ALPINA関係の別事業をやっているオーナーが趣味的に開いているお店なのかなぁ〜

ただ、ちょっと情報不足・アピール不足で、やや怪しさや不安も感じるなぁ…

という印象も持ちました。

→ 必要最小限でも、もう少しお店のコンセプト、こだわり、ターゲット客層、熱い思い、メッセージといったブランディングに必要な要素を入れ込んだ自己紹介文を考えましょう。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

いつものようにお電話で店長の上田さんにインタビューさせていただきました。

上田さんは、実は本業は、車やミニカーとはまったく別の会社にお勤めで、このお店は副業というか趣味というか、それほど「めっちゃ頑張ってどんどん売上伸ばしたい!」というお店ではないそうです。

これだけ聞くと、「なんだかのんきだなぁ〜、それじゃ売れないよ〜」と思われる店長さんたちも多いかと思いますが…

このお店を開くに至った経緯をお聞きすると、もとは6〜7年以前にご自身の趣味で、お好きなロードバイク(自転車)のパーツなどを求めてeBayでショッピングをされていた際に、MINICHAMPSというドイツのミニカーブランドを知り、当初は eBayでそのMINICHAMPS製のドイツ車ミニカーを仕入れ、ヤフオクなどで販売してみたところ、当時は日本でライバルもなく、そこそこ売れていたそうです。

しかしながら、徐々に同じようなことを始めるライバルも現れ、価格競争になって利益の出ないケースも増えてきたとか。

そんな折に、MINICHAMPSをベースにカスタマイズしたALPINA BMWをハンドメイドしているドイツ人の職人さんとネット上で知り合い、メールのやり取りをしながら親交を深め、彼が来日して会いに来るほどに意気投合。

彼との親交、信頼関係ができたのもあり、またMINICHANPS既製品の価格競争に疑問を感じていたのもあって、そのドイツ人職人さんのカスタムメイドミニカーに特化して販売してみることにしたそうです。

経営上は別々で、あくまで仕入れ先としての取引ですが、事実上は二人のパートナー関係の上で成り立っているお店のようです。

特に広告宣伝や、SNSなどでの宣伝も行っていなかったとのことですが、ALPINA や AMG の実車オーナーや コレクター、過去に乗っていた方など比較的 リッチな層が検索や口コミで来店してくれるようです。

ただ、本当に1台ずつのハンドメイドなので、月に1〜2台ペースでしか作れず、納期も1年〜1年半待ちだそうですが、それでも良いからというお客様から、ちゃんと前金でご注文いただけているそうです。

ミニカーとしては高価とはいえ、1台が3万円弱ですので、売上・利益的には月数万円程度。ビジネスというにはあまりに小さく、副業としても趣味のお小遣い稼ぎ程度。

でも、上田さんもドイツ人職人さんも、利益なんて二の次で本当にこのカスタムミニカーを好きになって、1年以上待っても欲しいと思われるお客様だけに来てもらって、満足していただければ良いそうです。

(お二人とも別に本業と収入がおありなので)

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

上記インタビューの通り、そんなに売上や利益を求めてはおられないお店ではありますが、良い品質のカスタムモデルカーをちゃんと1台ずつ手作りしている良い店であることは、お客様にも正しく伝え理解していただきたいので…

まずは、
当店「ドイツミニカー倶楽部」とはどんなお店なのか?
何ができて、得意で、強みなのか?
逆に何はできない、苦手、やりたくないのか?
どんな職人が作って、どんな店長が経営・販売しているのか?
どんな思いでやっているのか?(熱い思いやメッセージ)

など、初見・初来店のお客様に自己紹介・自店紹介して、信頼し安心していただけるコンテンツをキチンと整備していきましょう。

法人でもないので、信用・信頼・安心していただくことは第一ハードルとして最重要課題です。特に前金(前払い)で代金をお預かりして納品は1年先という商売ですので、信頼いただけなければ始まりません。

そこが不安で、黙って去っているお客様も少なくないと思います。

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商品の仕様・詳細情報不足
ミニカーやモデルカーが好きで精通されているお客様には不要なのかもしれませんが、実車は所有していたり知っていても、ミニカーは実物を見たことがないお客様もいらっしゃいます。

例えばサイズは 1/43 のスケール表記だけですが…
「自分で計算したらわかるでしょ!」ではあまりに不親切です。

全長 105mm 全幅42mm 全高35mm など 詳細表記がほしいところです。
せめて「1/43 スケールだと 大体 100mm〜120mm 位の大きさです」とか、トップページに何枚か手に持った写真も載せるなど、大体の大きさのイメージはわからせて、イメージ違いは排除しておくようにしましょう。

届いてみて、「想像していたサイズと全然違った!」は不満足につながります。実物を見られない、触れない通販です。丁寧なサイズ表記やわかりやすい写真を心がけましょう。

重量もできるだけ計って掲載してほしいところです。

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比較的多くの日本人が見たり触った経験のある日本のプラモデルやミニカーと比較してみて、窓やミラー、ライト、タイヤやホイール、マフラーなど各部位の材質(窓やミラーはガラス? タイヤはゴム? ホイールはアルミ? マフラーは金属?)や、ハンドルは切れるのか? 車輪は回るのか? 左右に動くのか? ドアやボンネット、トランクなど可動部は動くのか? なども気になるところですが、情報がありません。

エンジンルームや内装(インパネ回りやシートなど)の再現性とか、ボディ下部の様子なども写真が見当たりませんが…
その辺も見たいところです。

仮にそこまで細かくは作られていないのであっても、前もってお知らせしておかなければガッカリ感やクレームになり得ます。

できるだけ詳細な情報掲載を心がけましょう。

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シールや塗装などもお手入れ・清掃の方法としても

水拭きやアルコールスプレーなど大丈夫か? などの情報もほしいところです。お客様目線で専門店・プロショップとして見た時にはまだまだお客様の気になりそうなかゆいところに手が届かない情報不足な現状だと思います。

総評

インタビュー時にお電話で店長さんにはお話ししたのですが…
いくら、売上や儲けはそんなにこだわらず、趣味程度で運営されているお店であっても、お客様にとってはプロショップ・専門店であるはずです。

まずは、「当店はどんなお店でどんな思いでどんな人が運営しているのか」の自店紹介と、「何ができて、何ができないのか。ウリ・強みは何なのか」を明確に表示していきましょう。

上田さんとドイツ人の職人さんの交友・信頼関係と彼の技量がコアコンピタンスなお店です。

肝心の手作り・ハンドメイドの部分の説明や写真がまったくないですし、お二人の関係性や、それぞれのプロフィールやメッセージなど…
できればお二人の写真や、工房での製作スナップ、ファンのお客様の実車とモデルカーの一緒に写った写真など、イメージ作り、演出面はまだまだ改善の余地ありだと思います。

あまり儲からないことにそんなに手間や労力をかけていられない…という心理もおありかもしれませんが…

では、もっと儲かる手段や方法も考えましょう。

例えばナンバープレートのカスタムは別料金で高くとるとか、汎用的にディスプレイできて、比較的数量を作るのが容易なタイヤ&ホイールをまとめて作って販売するとか。

お二人の間で許容できる範囲で、もっと売上・収益が上がるアイデアを考えて実行しつつ、お二人が楽しいショップ運営ができることを考えないと、だんだん継続がしんどくなってきます。

継続する、運営し続けるためにはもう少し儲けても良いのではないでしょうか?

また、1台ずつ手作りという工芸品のような製造販売のビジネスモデルとしては、商品価格が安過ぎると思います。
3万円のミニカーと思えば高くても、1台数日〜数十日かかる作品を作る工芸だとすると、数十万円で売れるような案を考えたほうが良いのではないでしょうか。

幸い、ドイツ人職人さんは別にALPINA、AMG だけでなく、トラックなども作られるそうですし、スーパーカーやレーシングカーなども作ろうと思えば作れる技術はお持ちの方のようですね。

中途半端に3万円で売れる程度のことと考えての現状の商品だと思いますが、逆に金型から起こしても完全オーダーメイドで右ハンドルバージョンも作りますとか、オーナーさんのナンバープレートまで完全再現しますとか、可動部分も再現します、金箔貼りしますなど、きめ細かいオーダーメイドまでやって1台数十万円〜100万円超えなんてのもやれば、富豪と呼ばれるようなリッチな方々から特注品オーダーが入る可能性も十分あるのではないかと思います。

その辺の可能性の幅を広げる検討も、ぜひお二人でなさってみてください。
月2台、年間数十万円のお小遣い稼ぎ止まりにしておくのはもったいないレベルのお店だと思います。

せっかくの「限定生産」「個別生産」ができる職人のいるお店です。
どうせ限定・個別生産するなら、もっと高額で売れるプレミアムなモノを作ってみてはいかがでしょうか。
ビジネスのポテンシャルも、もっともっと大きい可能性を秘めておられると思います。

今後の新しい戦略立案などお手伝いが必要な場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

以上、「ダメ出し!道場」でした。

あとがき:パラリンピックを見ていると、人体のトレーニングによる進化だけでなく、競技用の義足や義手、車いすなどの開発競争も重要な要素だとか。各競技やチームに専属のエンジニアやメーカーのサポートがあり、正に人体とメカ用具とのハイブリッドな競技なんだなぁと思う。特に最近のハイテク素材、軽量化に加え、将来的に動力も内蔵した用具(パワードスーツ的な)使用も認められれば、オリンピックを超えるタイムや成績のパラアスリートも続出してくるのではないだろうか。それが一般の市場にもフィードバックされれば、障害者だけでなく、高齢者や筋力の少ない人をサポートしたり、職人さんのサポートをするような用具、道具ももっと生まれるかもしれないですね。

重い物を持ちあげる補助をするパワードスーツ的な装身具はすでに実用化されていますが…

SFアニメや映画のような極端なサイボーグ化じゃなくても、もっとナチュラルで無理なく取り入れやすいオーダーメイド・カスタムな人体サポートメカ(装身具)はどんどん生まれてくるでしょうし、きてほしいですね。

チーターより早く走れるシューズとか、イルカより早く泳げるアシスト機能付きの足ひれとか、誰でも3mジャンプできる用具とか、完全自動運転で階段も登れる車いすとか、自動10倍ズームの超軽量メガネなど…早くできたらいいなー。

最近、紙の書類やチラシでも文字が見えにくいと、つい2本の指でズームしようとしてしまう太田でした(^^;)

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。