AQua Star

カテゴリ:ホビー、カルチャー

AQua Star

観賞用の海水魚を輸入販売しております。 コロナによる空輸代の増加と為替相場でダメージが大きくなり、悩みです。 魚は死んでしまうと、0円なので大きな悩みとなります。

おちゃのこショップのお店の多くは、ネットで商品のご注文をいただき、それを宅配便を使ってお届けするいわゆる「通信販売」の業態のお店だと思います。
そして私にご相談に来られる会社やお店のほとんどは、ページの見せ方や、集客の方法、送料設定やポイントの付け方など、マーケティングテクニック的なご相談から始まることが多く、次にネット向け、通販向けの商品企画や商品開発などマーチャンダイジングの内容になります。

ただ、意外と忘れられがちですが、顧客満足度や、リピート率に影響するのが、梱包や配達時間の指定などの物流・配送品質です。

先日 Amazon で 木工用のある工具を購入しましたところ、こんなことが。
Amazonではよくあることですが…

商品の箱サイズの3倍はあろうかという大きなAmazon箱に、「これでもか!」というくらいの山のような緩衝材。

「環境に優しくないなぁ」と、ちょっとした罪悪感を感じながらAmazon箱から商品箱を取り出すと、「いや、緩衝材なんて関係ないやん!」っていうくらいに、中の箱はボコボコに潰れ、傷つき、穴が開いていました(苦笑)

幸い購入した物は頑丈な鉄製の工具で、中味には目立つ損傷はなく、使用には差し支えなかったので返品やクレームにはしませんでしたが…

そもそもの製品箱が ペラペラの薄い段ボールに、重い鉄製の工具が油まみれで薄いポリ袋に入れられただけで何の緩衝材も固定もされずに入っているだけ。コップに入れた水をこぼさないくらいにそーっと運べば、これでもキレイな状態で届くのかも知れませんが、一度でも箱が段差を通過したり、大きな振動や傾き、横倒しなどがあれば、重く角も多い中身の鉄製工具が容易に動いてしまい、あっという間に箱は損傷するだろーなーというのが想像される程度の梱包です。
(要はペラペラ、スカスカな箱詰め)

外のAmazon箱は無傷でキレイな状態で届いたので、これは明らかにAmazonの倉庫に入荷する前から傷んでいたか、倉庫内で箱を傷つけたか、いずれにせよAmazon梱包前の損傷ということでしょう。

商品を販売していたのは日本の会社さんでしたし、商品ページには特にどこの国製とは書いてありませんでしたが…ボロボロの製品箱には「Made in China」の文字。

まぁ、それは想定内でしたが、あきれるほどのボロボロの箱には思わず笑ってしまいました。

根本原因は製造元のメーカーの箱や梱包資材の選び方が悪いことでしょうが、それを輸入して商品として販売する店の検品や品質管理も、そしてそんなボロボロの箱の状態を確認しているはずのAmazon倉庫のスタッフもノーチェックで箱詰めして出荷する姿勢。

うーん、日本の通信販売の常識からすると考えられない低クオリティですよね。

まぁ、「届いて使えれば別にいいでしょ!」「クレームになった物だけ返金や交換すればいいでしょ!」

という程度の メーカー、商社、Amazon の 物流・配送クオリティとモラルの欠如は、悲しいかなもはや日本の通販の悪しき常識となりつつありますが…
Amazonショッピングは、当たりかハズレか、イチかバチかの通信販売。
一度で当たればラッキー、不良品に当たればアンラッキーで、返品処理で再注文。まぁ価格優先で急がない物ならそれでも良いでしょうし、それに妥協するユーザーも少なからずいると思います。

しかしながら、商品の品質に加え、一定以上の物流・配送クオリティも求めるユーザーもいますし、特に高級品やギフトなどの場合は、丁寧なお届け、お引渡しの完了まで含めての通信販売です。

大切な贈り物や高級品が、荷扱いの悪く不愛想な配達員によって乱暴に届けられたり、箱がつぶれたり汚れたりして届けば、直接的にはお店のせいではなくとも、今回の買い物が決して良い印象を持って終了し、「また利用しよう! 良いお店だった!」とはなりにくいですよね。

少なくとも私たちおちゃのこネットの通販ショップは、こんな低レベルな常識を是とせず、配送クオリティもお客様満足度やリピートに繋がると信じて営業を続けていきたいですね。

価格や配送スピードではAmazonには勝てなくとも、配送品質や最終的な顧客満足度では容易に勝てる余地があるのですから!
これを機会に自社の梱包や運送会社の選択、配送品質を見直してみてください。まだまだ満足度を高められる余地があるかもしれませんよ!

さて、今回のお店は、絶対に上記のような低レベルの配送なんかでは営業できない高いレベルの配送クオリティが求められるお店です。
それでは「ダメ出し!道場」始まりです!

第一印象:希少・高級な海水魚に特化した上級者向けのお店


EC仙人 太田

トップページに並ぶ商品(生体)は数万円〜数十万円するものがずらっと並んでおり、「日本国内で入手困難な珍しい海水魚を海外から直輸入している専門店です」
とのあいさつ文で、ひと目で希少・高級な海水魚に特化したお店だとわかります。

また、カテゴリーメニューや、その他メニューコンテンツに特に海水魚の種類や飼い方などノウハウ系コンテンツが見当たりませんし、2〜3生体の商品ページを見ても、産地とサイズが記してある程度で、潔いほどその魚種についての説明がない(^^;)

初心者を想定したお店では考えられませんので、魚種のことを十分に理解している上級者や、マニアをターゲットとしたお店であることがわかりますが、一方で初心者にはとても敷居の高いお店だという印象でもあります。

全体的には情報量が少なく、知識の乏しい初心者にはとても買う気になれない(買う決断ができない)お店、誰か上級者の知り合いやオススメや紹介があって初めて来られるお店かなぁという印象です。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

いつものようにお電話で、店主の中内さんにインタビューさせていただきました。
お店は2011年の開業後、間もなくおちゃのこネットにオープンし、既に10年。中内さんは本業は建築関係の会社を経営されており、当初は個人的な趣味として飼っていた海水魚の魅力にハマり、日本ではなかなか取り扱いのない希少な種をご自身が飼いたい! と海外の業者を調べて取り寄せているうちに種類も数も増え…ご自宅のガレージを飼育場兼ショップとして開業。

当初から、他店でも取り扱いの多い種ではなく、日本では手に入れにくい珍しい種に特化してこだわってやっていくとの信念を持って運営されておられるようです。

北米、南米、台湾、オーストラリア、ケニア、フィジー、バリなど、世界各国から直接、珍しい美しい魚種を捕獲して生きたまま空輸で輸入調達しておられるそうです。

ただこうした観賞魚の捕獲・販売をする各国業者の中には、魚にダメージを与える薬物を撒いて弱らせてから捕獲している質の悪い業者もいるそうで、そういう業者からの魚は日本に届く頃には弱っていたり、死ぬ確率も高かったりと、なかなかのリスクもあるようです。
そのあたりの業者の質の見極めや選定も、AQua Starさんのノウハウ・強みでもあるようです。

また、一概に珍しい魚=希少種や絶滅危惧種 というような訳ではなく、生体数としては十分にたくさんいても、生きたまま良い環境で日本に連れて来るのが難しいとか、通常は深海にいるので食料として漁獲されることはあっても、生きたまま引き上げて生体として輸送するのが難しいなどの理由で、レアという種もあるようです。

例)国産バラハナダイ【Odontanthias katayamai 】±12cm
販売価格: 428,900円
https://aquastar.ocnk.net/product/5108
1匹で40万円を超える国産のタイ! 素人にはビックリですが、これなど以前は100万円を超えることもあったそうです。最近は国内の捕獲業者が多く掴まえ多く流通させたために値崩れし、価格が下がったそうです。

------------------------------
上でも述べましたが、AQua Starさんの第一印象は、上級者マニア向けで初心者には敷居が高く、とっつきにくい店ですが、インタビューしたところ、「安価で多く流通している魚でもよい」という初心者の新規客をどんどん増やしたいわけではなく、珍しい高級魚にこだわりのある、高くても買ってくれる上級者の客層に、購入の際の候補にできるだけ多く入れてもらえるように認知度を高めていきたいというのが現在の優先課題だそうです。

将来的には今の何倍かの飼育場も含めた実店舗を、車での交通アクセスの良い立地でオープンさせたいのと、海外の上級者富裕層の開拓をしていきたいとのことです。

現在でも海外から1匹100万円を超えるようなレア種の注文が入ることもあるそうで、大きな可能性を感じておられるとのことです。

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

プロショップとしてのノウハウやアドバイスの充実
------------------------------------------------------------
全体的に、商品である魚種の商品ページでの情報が少ないのですが、例えば飼育方法(水質、温度、環境、餌など)は珍しい種であればこそまだ100%といえる確立したものが明確でない種も多く、明記すると、「その通りにしたのに死んだ」などというトラブルになる確率も高くなるので、あえて積極的には表記していないそうですし、上級者ならその辺も理解の上、自分で調べたり学んだりしながら試行錯誤して飼育していくのがある意味当たり前らしく、個別に質問があれば、「この種は当店ではこのような餌や環境で飼育しています」というように、あくまで参考情報としてお答えされているようです。

そのリスクヘッジは理解はできますが、お客様目線でプロショップとして見た際には、今の情報量はあまりに少なく、頼りなくも見えますので、上記のようにインタビューのお電話で私にご説明いただいたような内容を前もって記載しておくのが良いと思います。

「この種は生態がまだ不明な部分もあり、100%この飼育方法が正しいとはいえませんが、あくまで当店ではこの種はこんな環境や水温や餌で飼育しています。こんなところに気を付けています。こんな様子を注意しましょう」など、信頼度を高めるためにもプロショップとしてのアドバイスはもう少し期待したいところです。
あくまで珍しい魚を手に入れるだけの店なのか、珍しい魚を買う楽しみやノウハウや満足度まで手に入れられるプロショップなのか、専門店としての姿勢が問われるところです。

------------------------------------------------------------
【SNS や Youtube の活用度、スキルアップ】

オープンが10年前ということで、まだ当時は雑誌・専門誌とホームページ、ブログなどテキストと静止画が中心でしたが、現在では特にこうした「趣味」の領域ではYoutubeやSNSでの動画によるノウハウを含めた情報発信と口コミ拡散が重要なマーケティング要素になってきています。

現状は自社サイトとおちゃのこショップからのブログリンクと、Facebookでの入荷情報程度の情報発信と、無音声、無編集でテロップもなしのYoutube動画をときどきという程度の情報発信なので、「認知度を高めたい!」にはなかなかつながっていないと思います。

AQua Starさんの Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCA7InSkkCuFA3l_dmXkefDQ/featured

AQua Starさんの Facebook
https://www.facebook.com/AQuaStar5059/

お電話インタビューの際にお話ししましたが、最近では動画でのアピールが当たり前になってきましたし、生き物だけに動画で動く姿は、お客様にとっても静止画の写真の何倍もの価値があると思います。

動画撮影や編集も、今や高額なビデオカメラや編集用の高価なパソコンやソフトなどを用意しなくても、最近のスマホやタブレットであれば安価に動画に文字入れしたり編集する環境が容易に作れるようになってきました。

中内さんはまだちょっと古いスマホをお使いとのことでしたが、これを機会にぜひスマホの機種変をして動画編集アプリをダウンロードし、動画での説明や紹介のレベル・クオリティアップに挑戦してみてください。

------------------------------------------------------------
オススメアプリはVLLO と VITA ←アプリストアで検索してください。
無料で、初心者でも比較的簡単な編集、テロップ入れ、BGM入れなど商品説明には十分なレベルの動画編集・作成ができます。どちらもiOS版、Android版ともあります。

その他にも、有償、無償でスマホ用のさまざまな動画編集アプリがありますので、自分が使いやすいものを見つけてみてください。

顔出しや、声での説明やナレーションがどうも苦手! というお店は、BGMとテロップ文字入れだけでも、商品のどこに注目して見てほしいかがずいぶんとわかりやすくなると思います。

海外向けを意識されるなら、Youtube は世界標準ですので、動画説明欄やテロップに「海外発送可能」とか、英語説明文や英語のハッシュタグ表記を入れておけば、アピール度がうんと高まると思います。

総評

「ダメ出し!道場」申込文にも「魚は死んでしまうと0円なので大きな悩みとなります」とありましたが、死着(お届けした時には死んでいる状態)はAQua Starさんの商売にとっては死活問題。
仕入れ(輸入)に関しては各国の仕入れ元を信頼するしかないですが、お客様への発送に関してはAQua Starさんの責任です。

詳しくいろいろとお聞きしていると、実は配送のノウハウにはAQua Starさんの「強み」なのでは? というようなノウハウがあることがわかってきました。

生きた魚の配送での大切な要素は、私のような素人考えでは、温度が最優先かなぁなんて漠然と思ったのですが…
実は最重要ポイントは「時間」だそうです。いかに短時間(翌日午前中)で届けるか、着実に在宅で受け取ってもらうか。翌日午前中受け取りまでを保証範囲としてお客様に念押し確認を徹底されているようです。

下記の温度や酸素などの要素も短時間配送が大前提。
十分な酸素量と適正温度が維持できる間に届けること。

その前提で適正温度維持のために夏は保冷剤、冬は簡易カイロで保温。

多少コスト高になっても、お届けまで酸欠にならないだけの十分な酸素が含まれた水と「大き目の袋+箱」で酸素容量を確保した梱包をなさっているそうです。

もちろん、荷扱いの丁寧なヤマト運輸の利用なども、当たり前ですが配送ノウハウのひとつでしょう。落とされたりひっくり返されたりすれば衝撃で魚が弱ったり死ぬ確率も高くなってしまいますので、単に運賃が安いからといって運送業者を選ぶわけにはいきませんね。

仕入れ(輸入)に関しては各国業者に依存するしかないですが、それでも事前にしっかりとした契約内容や、梱包方法など、できるだけ厳重な指示や依頼、指導、信頼関係の構築なども「強み」といえるノウハウのひとつでしょう。

珍しい、希少な種を捕獲して輸出してくれる業者探し・調達はもちろん重要ですが、生きたまま確実に受け取り、元気で健康な状態でお客様にお届けし、死亡率を極力減らすという「配送のクオリティ」は、 AQua Starさんの「強み」であり、そこを高めることで死着率を下げて損失を抑え、信頼感・顧客満足度も上がる。
そこに利益率を含めた経営効率の重要な要素があると感じました。

ただ、当たり前のように行われているこれらのことも、説明やアピールをしないと、購入前のお客さまには伝わりませんし、死着リスク=不安要素にしかなっていません。

ちゃんと最善を尽くしていることをしっかりと説明してこそ、「よし、AQua Starさんで買おう!」と注文のハードルを越えてくれやすくなるのだと思います。

お客様が本当に求めているのは「死着リスクの際の返金保証」では決してなく、「この店ならきっと生きて元気な状態で届けてくれそうだ!」という期待感と安心感だと思います。

AQua Starさんはそれだけのことをやっているお店だと思いますので、あとはぜひその点の上手なアピールと表現の方法に意識して、改善なさってみてください。

ご懸念の コロナ禍の影響による原油価格上昇、運賃上昇によるあらゆるコスト上昇は世界的な流れで、自分たちの努力でどうにかなる問題ではありません。経営を維持するためには利益を確保するために適切な範囲での販売価格の値上げも必要かもしれません。

ですが、死着率の低減はダイレクトに損失を減らし、利益率に影響するはずですし、「死着率が低く、状態の良い元気な魚が届くお店!」だという信頼や口コミや評判は長い目で顧客を増やし、利益を向上することにつながると思います。

今一度、当たり前だと思っている「強み」を見直し、商品説明や配送サービス説明を充実させつつ、SNSやYoutubeを活用してアピールを行い、プロショップとしての認知度を高めていってください。

また、これらを通じてお店のヘビーなファンが多くなり、コミュニケーションが増えれば、これらのファンが営業(口コミや紹介)してくれる機会も増加していくと思います。

AQua Starさんはまだまだ伸びしろの大きいお店だと思います。

今後の戦略や方針など迷われましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

以上、ダメ出し!道場でした。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。