KiNiNaRu

カテゴリ:ホビー、カルチャー

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2021年3月よりおちゃのこネットでサイトをオープンしたのですが、お客様のアクセスが伸び悩んでおります。 具体的にどの箇所をどうすれば良いか等は解らない為、ご助言頂けましたら幸いです。

「マスとニッチ」という言葉はご存じでしょうか?
商売やビジネスの世界では、
マスマーケティング ←→ ニッチマーケティング
のように反対の意味で使われますが…

「マスマーケティング」が世界規模や全国規模といった大きな市場での大量生産、大量流通、大量販売なのに対して、

「ニッチマーケティング」は小規模市場での少量生産、少量販売という意味なのですが、隙間産業、隙間市場的な、弱者の仕方ないマーケティングのニュアンスでイメージされてきました。

言語的にも「マス」はマスコミ、マスメディア、マスプロダクションなどに使われており、大量とか大衆とか、数や量が多い意味が感覚的にもわかりやすいですね。

一方の「ニッチ」のほうは、語源はラテン語で「鳥の巣作り」を意味するNidusからフランス語でもNicher「鳥の巣、巣を作る居心地の良い適所」というニュアンスがあったようですが、英語になる際に「Nest(鳥の巣)」と「Niche(ニッチ)」という別の単語に分かれ、日本語に翻訳される際に「隙間」と訳されたせいで、ちょっとマイナスで後ろめたいニュアンスの言葉になってしまいました。

世界中が高度経済成長で大量生産、大量流通、大量消費が当たり前であった20世紀が終わり、早20年以上を経て、大量生産大量消費から多品種少量生産、多様化適量消費の時代になってきました。

巨額の資本で大規模な工場を持ってしまっているような大企業は、効率の観点からそれでもまだマスマーケティングを続けなければなりませんが、彼らもマスからスモールマス(それなりに大きな市場だがやや小規模)に多様化対応してきたり、子会社を増やしてニッチ市場に出てきたりしています。

多くのおちゃのこショップさんは中小零細企業が多いため、もともとマスマーケティングで競争をしているところは少なく、基本はニッチマーケティングだと思います。

現代は、ただ「隙間」を狙った「ニッチ」ではなく、本来の意味の自店にとって本当に居心地のよい「ニッチ」市場を狙って、外敵から身を守りながら生き残っていきたいですね。

さて、本日のお店はアニメのキャラクターグッズやタレントさんグッズを企画・製造する企業が直営するお店。あまり有名ではない正にニッチなキャラクターのグッズから、世界的に有名なタレントさんのグッズまで、マスなのかニッチなのか? はまだわかりませんが…

ネット販売も2021年3月からおちゃのこネットで始めてまだ1年弱という若い若いお店です。
それでは「ダメ出し!道場」、始まりです!

第一印象


EC仙人 太田

最上部の「キャラクターグッズ・アニメ・マンガ・ドラマのグッズ通販」のテキストや、大きなスクロールバナーのいろいろなキャラクターグッズの画像、下に並ぶそれぞれのアニメやドラマなどのタイトルバナーなどの印象で、アクセスして来た人にはひと目でキャラクターグッズサイトらしい印象は受けると思います。

ただ、星の数ほどあるアニメやドラマやタレントさんのキャラクターを分母にすれば、ほんの18種類の作品カテゴリーの限られたグッズだけでは、品ぞろえもまだまだ十分とは言えない印象です。

業種的には、「お店に」来るというより、作品やグループやキャラクターそのものが好きなお客様がキャラクターに惹かれてピンポイントで商品ページやカテゴリーページにアクセスして来るタイプのお店だと思うので、特にトップページに注力する必要はないのかもしれません。

しかし、メーカー直営店であることや、作品や版元、ライセンシーから正式に認められた公式グッズ販売の正規店である点は、もっとわかりやすくアピールされるのが良いと思います。(もったいない)

海賊版やコピー品、違法商品も出回りやすい業種でもあるので、今更ながらかも知れませんが、お客様がひと目で安心できるお店であることはしっかりとアピールしていきましょう。

また、正規品、公式グッズ店であることから、できればカテゴリーバナーや各作品カテゴリーページの上部タイトルバナーには、作品のキャラクター画像を掲載できるように版元に許可を取って画像を用意してほしいところです。

例)「ホリミヤ」という作品のトップページバナーでは、キャラクター達の顔の画像が載っているのに、カテゴリーページでは作品タイトルだけで、キャラクター画像は一切ありません。商品がぬいぐるみなどと違ってアクセサリーなので、商品画像一覧にもキャラクター画像が見られず、ファンとしては寂しく物足りないのではないでしょうか。

同じく、「極主夫道」とか「ワールドトリガー」、「うらみちお兄さん」などもタイトルバナーのみで、キャラクター画像がまったくないのは正規品専門店としては寂しいです。

また、作品やキャラクターのファンなら知ってて当たり前かも知れませんが、単なる自販機サイトではなくメーカーのアンテナショップとして、一段高いレベルのショップとしてアピールするならば、作品に関する情報をもう少し充実させたり、業界ならではの裏情報(法的にも、守秘義務的にも問題のない範囲で)やエピソードなどがあれば、ファン達に一目置かれるショップとして口コミされたり、ブックマークされたりする確率が高くなると思います。

ちょっと検索すればわかる程度の情報ばかり。
ちょっと検索すれば同じ物を売っている他店がすぐ見つかる。
KiNiNaRu(きになる)さんならではのスペシャリティ(特別感)は残念ながらあまり感じられません。

「買ったモノ」は覚えていても、「どこで買ったか?」は残念ながらすぐに忘れられてしまう程度のお店と言わざるを得ません。


 

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

おちゃのこショップの店長兼、ネット直販事業の責任者でもある北村さんにお電話でお話を伺いました。

KiNiNaRu(きになる)さんはこのオンラインショップの店名ですが、運営母体は 「有限会社イントゥコーポレーション」という大阪のキャラクター雑貨の企画製造・卸売業の会社です。

ファンシーショップ、玩具店、雑貨ショップやゲームセンターなどへのBtoB主体で創業2005年から17年目。

ネット事業責任者で店長の北村さんは、実は2年前の入社で、その前はご自身でキャラクター・ライセンスグッズの企画をする事業をされていたそうですが、転職して来られ、新商品の企画とネットでの販売を手掛けられたそうです。このお店のキャラクター商品の企画も北村さんが入社してから手掛けたものが多いようです。

北村さんと部下の担当者さんと二人三脚でおちゃのこショップやネット直販の事業を試行錯誤、チャレンジさせてくれる自由な雰囲気の会社・経営陣であるようです。

ただ、まだ明確にネットでのマーケティング戦略や目的は出来上がっている訳ではなく、なんとなく初期の目標として月商100万円超えとアンテナショップとして傾向や情報収集を行っている段階だということです。

出店して半年後には世界的な大人気の韓国のアイドルグループ BTSのキャラクターブランド TinyTan のマスクなどの大ヒットで、既に目標はクリアしたとのことですが、それは自社企画商品ではなく、韓国メーカーから正規店として販売ライセンスを得た、いわばテストマーケティングとして扱った商品だそうです。

売上数字的には嬉しくはあるが、自社企画の本流商品ではないので、自社企画商品で成果を上げていくにはどうすれば良いかを模索中とのこと。

母体がメーカーであり、商品を企画しライセンス元への交渉をして契約し、製造工場探しや手配、海外工場品なら輸入手配など、自社工場は持たずしてできるだけ小ロット・短納期で在庫リスクを最小に抑えたモノづくりしてきたノウハウが「強み」のようです。

何かヒントを得られればと、今回「ダメ出し!道場」にお申し込みされたとのこと。

ただ、コロナ禍以降の中国工場での人件費高、原油高騰や一部欧米での需要増大で、石油燃料費、材料費などコスト高、運賃の高騰、コンテナ不足での納期遅れなどなど逆風も増えています。

世界的な環境保護やSDGs、脱プラスチック、脱炭素の大きな潮流など、アクリルやプラスチック、石油製品多用のキャラクターグッズ業界にとっても、顧客の意識変革で逆風必至の未来があります。

北村店長さんとお話をしていると、このお店の目先の収益だけでなく、少し先の未来を見据えた、会社全体にとってプラスを生み出すきっかけになるネット事業のポテンシャルをお持ちではないかと強く感じました。

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

いくつか気付いた細かな点をダメ出しします。

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売れ筋の TinyTan のマスクですが…

例)「TinyTAN」BREATH SILVER QUINTET マスク(ZenBlack) 1pcs
販売価格: 759円(税込)
https://www.kininaru-goods.com/product/49

これは単品で 1パッケージにマスクが2枚入った商品だと思うのですが、商品仕様には単品(2枚入)と記されているものの、商品説明文の冒頭には「こちらの商品はBOX(2枚入×7袋入)になります。※TinyTANのキャラクターオリジナルポーチ(デザインはランダム)とストラップ付き!」と書かれてしまっています。

恐らく、下記7pcsBOX(14枚入り)の商品説明文
https://www.kininaru-goods.com/product/46
のコピペをして消し忘れだと思うのですが、数量だけでなくオマケのポーチやストラップも付いていると勘違いさせてしまう可能性があり、勘違いしたお客様から大クレームになる可能性もあるので、大至急修正してください。

他の単品のページも確認の上、修正してください。

商品の数量と価格や付属品・オマケは、お客様の購入判断に大きな影響を与える項目ですので、2人でダブルチェックするなど慎重に登録・確認しましょう。

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モバイルサイトでのトップページ バナーのリンク切れ
https://www.kininaru-goods.com/phone/

上部の横スクロールバナーの
・ぐるみん 会員登録 バナー
・ホリミヤ バナー
がリンク切れでクリックしてもページへ行けません。

その他モバイルサイトでは表示されていないバナーもあるようです。

ご確認のうえ、修正してください。

総評

サイトのデザインや、メニュー構成、ちょい足しアイテムのコーナーを設けて客単価UPを図るなど、オンラインショップとしての基本的なスキルや要素は十分できています。

単なる小売店通販ショップの自販機的な小銭稼ぎのオンラインショップとしてなら十分かもしれません。

ただ、貴社はメーカーであり、キャラクターを選び、商品を企画し、本業の卸ビジネスのためにもいろいろとテストマーケティングを仕掛け、価値を創造していける(行くべき)会社です。

当おちゃのこショップの目的も、目先の収益だけで満足してはもったいないと思います。

BTS のTinyTan グッズヒットは悪くはないとは思いますが、あくまで海外他社品の仕入れ小売販売であり、本質の強みを生かした事業とはいえません。経験値としてのタレントグッズチャレンジや海外ライセンシーグッズチャレンジとしてはノウハウや成果は得られたことでしょうが、あらためて目的を意識すると…

当サイトは自社企画品に特化して、メーカーとしての可能性開拓やブランド価値を高めることに注力したほうが良いかと思います。
商売として売れる人気の高いマスの商品を捨てるのはもったいないと思われるなら、それは別ショップを立ち上げて小売スタッフに任せれば良いですし、事業責任者である北村さんやメインのスタッフはあくまで「自社の強みを生かした居心地の良いニッチ」を次々と成功させて離陸させるような、他社が真似できない勝ちパターンを見つけたり作り出すことに時間やコストや労力を集中させるべきではないかと思います。

マスマーケティングが悪いと言うわけではありません。
ただ資本力による大量生産や大量仕入れ、薄利での大量販売のための物流投資など、マスマーケティングには価格競争や納期競争に勝ち抜くための資金が必要です。

これらは一般的に大企業や業界リーダーの取る戦略で、体力や資金力のない中小企業には利益を圧迫し、労力・気力を消耗させ長続きしない傾向が強いのです。

自社で新商品を企画・製造(手配)できて独自性の高いモノを生み出せるイントゥコーポレーションさんなら、きっと本当に居心地の良いニッチを見つけ(生み出せ)ることができると思います。

アニメやキャラクターもすべてが「鬼滅」や「進撃」や「呪術」や「ワンピース」のような大ヒットマスマーケティング作品のキャラクターではないと思います。
地味だけど知る人ぞ知る、コアで熱いファンを持つ作品やキャラクターは次々と生まれてきているでしょうし、そういった良いニッチのキャラクターからグッズを企画して、それぞれに居心地の良いニッチ市場を作り出しているのが貴店貴社ではないでしょうか。

また、お電話でもおっしゃていたように、グッズ業界もプラスチック、アクリルや化学繊維、石油製品には飽き飽きしていることや、SDGs、エコ、脱プラ、脱炭素、正に新しいサスティナブル(持続可能)なキャラクターグッズへのチャレンジや、期待感もあると思います。

今までの安価なグッズをとにかくたくさん作って売るというモデルだけではなく、少数、少量限定生産や名入れ・ロゴ入れなど、オーダーメイドのプレミア感のある高単価のグッズ企画など、KiNiNaRuさんだけで買えるキャラクターグッズで、仕入れ販売だけの通販サイトと差別化し、生き残って行くチャレンジをしてほしいなと思いました。

過去にも何度も「ダメ出し!道場」で述べていますが、検索すれば楽天やAmazonや多くのショップで見つかる品番商品、型番商品は、所詮は価格競争になりやすく、お客様もどこで買ったかは重要ではなく、いくらで買ったか? どこが早く届けてくれるか? の競争になるだけです。

そのために、高いリスティング広告やSEO対策費をかけて上位表示されても、明日には順位が入れ替わるかもしれませんし、上位表示されても安い店で買われてしまうのです。

そうではなく、中小オンラインショップは、いかに競合他社、他店と差別化して高くても売れる(買ってもらえる)ような商品やサービスを生み出して認知・認識してもらえるかが勝負です。

それが難しいお店なら仕方ないですが、KiNiNaRuさんにはそれができる北村さんや会社のノウハウや取引先のネットワークがあるのですから、ぜひチャレンジなさってみてください。

今後の戦略や具体策などを立てられる際はまたぜひご相談ください。

以上、「ダメ出し!道場」でした。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。