食農舎

カテゴリ:食品、飲料

食農舎

リスティング広告してもさっぱり注文が来ない。

皆さん、「6次産業」という言葉はご存じですか?
日経新聞やビジネス系ニュース番組、サイトなどを見られる方なら聞いたことがあるかもしれません。

ご存じない方でも、1次産業、2次産業、3次産業なら小学校、中学校の社会科で習った記憶くらいはあるのではないでしょうか。

1次産業=農林漁業など原料を生み出したり捕獲したりする産業

2次産業=自然界から得た原料を加工して物を作る産業。工業、建築、建設など

3次産業=作った物を販売したり、サービスを提供する産業。小売、金融、旅行、医療など

では6次産業とは?
1+2+3=6で1次から3次までを一貫して行う産業のことです。

いわゆる「産直」は生産者が収穫した野菜や魚などをそのまま販売するので、厳密には1次+3次ですが、
野菜を調理、加工してから直接通販で販売したり、自社で収穫した魚介類をすり身にしてかまぼこを作って販売などすれば、1次+2次+3次で「6次産業化した」と言います。

近年、国(特に農林水産省)はこれを推奨しており、いろいろな推進策、支援策を行っているようです。

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さて今回のお店は農の分野の6次産業のお店。
1次産業(農業)+2次産業(加工製造)+3次産業(小売販売)までを一貫して行う事業です。

商品は自社で栽培・収穫された菊芋、えごま葉、柑橘などから加工・製造するお茶やジャムなどの加工品。それぞれの原材料由来の健康成分が魅力のヘルシー系自然食品たちです。

何から何まですべてをほとんどお1人で行うため大変お忙しいご様子です。

それでは「ダメ出し!道場」、始まりです!

第一印象:一見、産直ショップに見えるが…


EC仙人 太田

トップページ最上部は店名とメニューと4枚のスライド画像だけで、
1)食農舎へようこそ
2)お得な送料無料セット商品一覧 →おすすめ商品へのリンク
3)「ほんにょう」天日干し風景
4)シークヮーサーと河内晩柑 の写真

2枚目こそ、オススメ商品ページへのリンクとなっていますが、あとは何を意図しているのかがよくわからず、何のメッセージ性もない画像です。
ファーストインプレッションを感じる第1画面としては実にもったいないトップページです。

主力商品も不明、何が【強み】なのかも不明、
「ほんにょう」とは? せっかく興味をそそっても答えがわらない。クリックもできない…
(※「ほんにょう」とは稲の干し方の名前のようです)

せめて看板画像かその周辺に
「菊イモ、えごま、レモングラス、シークヮーサー、河内晩柑、巨峰、大麦、米などの注目の健康成分を美味しく加工した食品としてお届け!」

「農業生産から加工〜販売まで一貫の食農舎だから安心!」

「Made in JAPAN。 Made in 愛媛 の一品をお楽しみください!」

「食農舎は愛媛県から原材料農産物を全て農薬不使用で自社栽培し、生産〜加工製造〜販売まで一貫して行う6次産業のお店です。各産物に含まれる注目の各種健康成分をサプリではなく「食」として安心・安全に、美味しくお届けしたい! をコンセプトに2015年新規就農し始めた事業です!」

のようなコピー文を散りばめて、あまりスクロールしなくてもトップページに来た方が瞬時に特長やコンセプトを理解できるように端的に伝えるようにしたいところです。

また後のインタビューでわかったのですが、代表の武田さんは地元の大学で34年間も食品栄養学の先生として教えてこられた栄養学の専門家でもあるそうです。これは大きな【強み】ですので、

「栄養学の専門教授が地元愛媛で自ら育て収穫し、製造加工した健康成分豊富な自然食品のお店 食農舎」
のようなコピーが欲しいところです。

健康食品関連サイトは薬機法(旧薬事法)の制約のために、本来最も伝えたい商品の効果・効能の表現はできないので、成分の一般的な情報として科学的・薬学的・医学的な解説などをしているケースが多いですが、専門家ではない商売人の店主が専門的な知識もなくどこかのサイトからのコピペで胡麻化しているために、いいかげんなサイトも多いです。

それゆえ、栄養学の専門家として正しい科学的な情報を理論的に根拠を示しながら、かみ砕いてわかりやすく解説してあれば、お客様にとって信頼度は相対的に高まります。

ただ、詳しいがゆえに難しくならぬよう、「かみ砕いてわかりやすく!」が肝要です。

話を第一印象に戻します。

とにかく、何を(どんな商品や価値を)、誰に(どんな対象者に)売りたいのか? がイメージしにくい現状です。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

既に上で少し触れましたが…
まったくサイトには書かれていなかったのですが、代表の武田さんは地元愛媛の大学で34年間、食品栄養学を教えてこられた先生だったそうで、定年退職してから新規就農し食農舎を起業されたそうです。

昨年からは奥様も同じ大学の先生から定年退職されて加入し、お2人で頑張っておられるようです。現在7年目で愛媛県内の半径1時間圏内の道の駅やスーパー、産直ショップなどに委託販売の形で展開され、着実に業績は伸びているようです。委託販売ということで、すべてご自身で車を運転し配達・陳列・差し替えなどされているとのこと。

元々ご実家が農家だったそうですが、特には農業ノウハウを伝授されたわけではなく、子供の頃からの見様見真似の感覚と独学で今の農園はすべて武田さんがゼロから作っていかれたとのことです。

昔の栄養学では炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素だけで、今のような食物繊維やポリフェノールなど、それらに属さない成分や、腸内細菌との関係や、それにより体内の免疫システムがコントロールされているような仕組みは比較的新しくわかってきたことのようです。

年々教え子たちにアトピーなどアレルギー体質の生徒が増えている様子など、武田さんのその辺りの研究・興味から、最初は特にオメガ3とか6とか、いわゆる油・脂質の種類の摂取のバランスに何か要因があるのでは? と注目し、健康成分として注目されていたオメガ3であるαリノレン酸が豊富な「えごま」栽培とその加工品であるえごま油、えごま葉茶からスタートされたそうです。

その後、免疫を司る腸内細菌にとって有効な栄養になるイヌリンという成分を多く含む菊芋(キクイモ)を栽培し、それを加工・焙煎しお茶として美味しく摂取できる菊いも健腸茶を開発。

その他、シークヮーサーや河内晩柑 といったかんきつ類や、レモングラス、巨峰、大麦など、その含有成分が注目されている農産物を次々と無農薬で栽培し、加工商品化しておられます。

栽培や加工の設備投資やWEBサイトの外注開発費なども国や県の各種助成金などを活用しながら、できるだけ低予算で取り組んでおられたようですが、現在のWEBショップサイトの製作費は、お聞きした限りでは内容と比較するとちょっと高額な業者さんだったようで、現在はご自身でメンテナンスされているようです。

ただ、お仕事の範囲が農作物生産〜加工品開発〜製造〜営業〜卸売〜小売〜物流配達に加えてパッケージや広告宣伝まですべてお1人でとあまりにお忙しいご様子で、
「1日10分でもページ改善や修正はできそうですか?」の質問に、「それができなくて困っている」とのお返事でした。

ネット販売を始め、有料のリスティング広告を行ってもなかなか注文がこないことなどお悩みのようです。

具体的なダメ出し…


EC仙人 太田

第一印象でも書きましたが、せっかくの6次産業(生産→加工製造→販売)なのに、肝心の原料農産物の写真がありません。生育状況の写真も、花や葉やイモや果実などの収穫時の写真も、加工製造時やパッケージ段階の写真もなく、すべてを自社で行っているという最大の強み部分をほとんど示せておらず、もったいない限りです。

収穫前のえごまの葉が茂った畑の様子や、摘み取る前の葉の姿、加工の過程。
河内晩柑やシークワーサーの花はどんな色や姿なのか?
実が段々と育って熟していく様子。
果皮がお茶になるようですが、果肉や果汁はどうなるのか? どんな風味なのか?

各種原料の「乾燥」は天日干しなのか? 乾燥機なのか? 火で焙るのか?

菊芋は「焙煎」とあるが、浅煎りなのか深煎りなのか? その程度や理由は? 風味や栄養成分の量など、なんらかの試行錯誤があったのでは?

なぜ生芋ではなくお茶にしたのか?
生芋の販売はしないのか?
生産者だからこそできる生葉、生果実、の限定販売などもやれば、大きな魅力の一つになり得ると思います。

「海外産原料でブラックボックス的に製造された他社のお茶やサプリとは違うのだ!」ということを証明し、アピールできるポイントだからです。

またサプリではなく「食」としてお届けしたいという思いも、肝心の「食品」として口に入れる直前の姿(お茶ならカップや湯飲みに煎れた様子や水色)もありませんし、茶葉の色や姿も見られません。

各種お茶類
https://www.syokunosya.jp/product-list/2

お客様目線で見れば、ただ代わり映えのしないパッケージ写真がずらっと並んでいるだけで、煎れたお茶すら写っていないですし、茶葉の様子もわかりません。生の原料の収穫時の写真や姿など付加情報もありません。ストーリーも思いも表現されていないですし、「食品」として最大の魅力であるはずの「美味しそう!」や「食べてみたい!」という好奇心もまったく起きません。

単に「イヌリンが摂取したい」とか、「オーラプテンが摂りたい」だけを意識して購入されるのでは、よくある右から仕入れて左に売りさばく単なるサプリショップとさほど変わりありません。(それでは食農舎の存在意義が示せていない!)

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https://www.syokunosya.jp/product/20
乳酸発酵菊いもは原材料だけ見ると「菊いも、海水塩」となっており、ただの塩漬けにも見えますが、あえて商品名に「乳酸発酵」と付けているのに、肝心の「乳酸発酵」させている過程や、それによる何らかの味や風味の変化(酸味や旨味?)栄養価の変化など、「健康成分を食としてお届け」をぜひとも実践していただきたいところです。

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インタビューでは「えごま油」も商品としてあるとのことでしたが、ショップページに掲載されていないことに気づかれましたが、すぐに掲載ができないようです。
外注さんでの製作だったためか、お忙しさがゆえか…。
ページ修正などWEB更新の作業がすぐにはできないご様子です。

食農舎さんへの一番のダメ出しはここかもしれません。

実店舗なら、「あ、あの商品出してない!」と気づけば、5分後には倉庫から持ってきてすぐ陳列するはずですが(WEBでも10分もあればできるはず)。

精神的に、WEB更新が 苦手意識や億劫なものになっていると、なかなかページのクオリティが上がらず、クオリティが上がらないと、転換率(来た客が買う確率)が低いままなので、いくら広告費をかけて集客しても注文に至りません。

総評

上記 各商品のダメ出し部分でも書きましたが、食農舎さん自身で決めたコンセプトであり強みであるはずの
「六次産業で栽培生産〜加工製造〜販売まで一貫」

の過程を、イラストこそあれ産品も、商品内容や調理例など現物写真や映像は何も見せておらず、「お客様に見て知って感じていただこう!」がまったくできていないのが現状です。

繰り返しますが、これではそこらの仕入れ販売だけの健食小売店と同じように見えてしまっていますし、「本当に生産してるの?」と疑念を持って去って行くお客様もいるかもしれません。

今一度、初めてのお客様の気持ちと目線になって、「見てみたい、知りたい、(安全や安心、信頼を)感じたい!」という部分をできるだけ写真や動画で見せていってください。

主力の菊芋、えごま以外の、かんきつ類や、レモングラス、巨峰や、塩や砂糖、はちみつなども、できればトレーサビリティを明示していけば、より安心・安全・信頼の食農舎というブランドが確立していくと思います。

個人的には塩は愛媛産の物、糖分は果糖ブドウ糖液糖のような工業品ではなく、植物由来の自然派の糖分を使ってあれば商品クオリティがもっと高まると思います。

また今はまだ集客に焦るより先に、ショップ全体の情報充実を優先してクオリティを上げる段階です。農作業と同じくらいの優先度でページ修正改善作業も行う必要があると思います。

なんでもかんでもご自身でやりたいというお気持ちもわかりますが、だからこそ進んでいない、できていないのならば、費用をかけてもそこを行ってくれる外注さんを見つけて、お金で時間を買いましょう。

お金がかけられないのならば、厳しいですが寝る時間を削ってでも、自身でコツコツやるしかないと思いますが、それも長く続くと健康を害したり、全体のスピードダウンでマイナスなので、できれば地元で小回りの利くデザイナーさんを見つけておくのが良いと思います。別に高額な大きなデザイン会社でなくとも、個人のフリーランスのWEBデザイナーさんならネットで探せますし、会って打ち合わせできる愛媛の近隣でも見つかると思います。

撮影や写真がちゃんと提供できそうなら、遠方のデザイナーさんでも比較的安価にお仕事依頼できると思います。必要なら人材探し、業者探しもお手伝いします。

さて、今後の展開として…
インタビューでおっしゃっていた商品ラインアップを増やすことや、自社配達の範囲外への卸販売の可能性や新たな販路開拓など、誰をターゲットにどんな商品案をなど、まだまだ課題もありますが、同時に大きなポテンシャルもお持ちの食農舎さんだと思います。

人材探し、体制作り、今後の戦略や展開アイデアが必要な時はぜひお気軽にご相談ください!
以上、「ダメ出し!道場」でした。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。