大阪ウエルダー

カテゴリ:ファッション

大阪ウエルダー

利益率が低いため販売価格を上げたところ、アクセス数は変わらないのに売り上げが上がらなくなった。 今の価格でいくか、以前のような同業他社より安い価格にして、薄利多売に戻すか迷っています。 よろしくお願いいたします。

「謎の玉」

先日、家のポストに1通の封書のDMが届いていました。
封筒は派手な色合いで、健康うんぬんのキャッチコピーが印刷されており、ひと目で健康食品か健康グッズ系のDMだとわかりました。

いつもならそのままゴミ箱にポイっと直行なのですが、封筒を手に取ると何か小さな「異物」が入って膨らんでいます。

「ん? 何だろう?」

つい気になってその場で開封してみると、直径1cmくらいのまだら色の「謎の玉」が出てきました。

一瞬、飴ちゃん(キャンディー)か試食サンプルかな? とも思いましたが、袋もなく裸で入っているので不衛生ですから食品ではなさそうです。よく触ってみると、どうやらゴムボール(いわゆるスーパーボール)のようです。

「これは何だろう?」

気になって何か説明がないか? と同封のパンフレット類を広げて探してみましたが、どこにもこの玉についての説明はありません。

「あっ! なるほどー! ヤラレタ〜(苦笑)」

DM送り主の思惑にまんまとひっかかってしまいました(^^;)

皆さんはもうおわかりですね?

この「謎の玉」の目的は…
そう、封書のDMを開封させ、中身のチラシやパンフレット類を目に触れさせることにあったんですね。

どんなに創意工夫を凝らして創り上げたチラシやパンフレット類であっても、まずは開封して目に留めさせなければ読んでももらえません。

1通数十円〜百円程度のコストをかけて印刷し、折りたたんで封筒に入れ、全国に発送するDMですが、その多くは読まれるどころか未開封のままゴミ箱行きです。

そこでこの業者は考えたのでしょうね。
複数の郵便物の中でポストから手に取った瞬間、「ん? 何これ!?」とアテンション(気付いて)もらえ、「何が入ってるんだろう?」と開封してもらえ、「この玉は何だろう?」と説明を求めて同封書類にひと通り目を通してもらえる。

そうすれば、少なくともチラシに印刷された商品写真や大きな見出しだけでも見てもらうことができ、商品に潜在ニーズを持ったお客さんなら興味を引き起こして注文や問い合わせに繋がる確率が高まるわけです。

「謎の玉」の説明や意味はわからないままでも良いのです。
むしろ、意味がわからないからこそ、何か説明がないか? 封筒の中のものすべてに目を通してくれるのでしょう。

私もまんまとその狙い通り、すべてのチラシを広げてざっと目を通してしまいました。たまたま私の興味を引く商品ではなかったのでそこまででしたが、興味に合えば次のアクション(問い合わせ、ホームページを見る、注文する)などに繋がっていたかもしれません。

薄っぺらい封筒の中にポコッとした厚みのある立体物、異物感。それによって開封させる。

ボールペンなど販促物を入れるというのは昔からありますが、1個あたりのコストも高く、ペンだけ確認したらチラシは見てもらえない可能性も高い。小さなスーパーボールなら大量仕入れすれば1個あたり数円で済むでしょうし、何かわからない「謎の玉」だからこそ、「どこかに説明はないか?」と全部のチラシを広げて見てくれる。

もう何十年もやりつくされた感のある郵送DMでも、まだこんなアイデアや工夫があるんですね。勉強になりました。

話は変わりますが、スーパーボールといえば昔は駄菓子屋さんで、カラフルで大小のスーパーボールが当たるクジをよく買って運試ししたなぁ〜!

単色の鮮やかな色のものより、透明で中にキラキラのラメ・星の入ったようなスーパーボールが欲しくて、お小遣いをつぎ込んで何回もクジを引きましたねぇ〜(当たった試しがなかったけど)

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さてさて…

今回のお店は安っぽいスーパーボールではなく、本物のキラキラ!
宝石・輝石・天然石のお店です! 中でも希少性の高い珍しい石をメインに扱うお店のようです。

では「ダメ出し!道場」スタートです!

第一印象:レトロ調なロゴ・書体に分かりやすい商品…だが…


EC仙人 太田

トップページにアクセスすると、ちょっと昭和レトロ調のフォントの「大阪ウエルダー」のロゴマークに、天然石(ルース)類の写った大きな写真。下にスクロールすればさまざまな石の写真を使ったカテゴリー一覧。

ホームページデザイン的にはやや古めいた印象で、今風のスタイリッシュで洗練された感じではありませんが、画像は綺麗ですし、シンプルでわかりやすくレトロ調を個性と見れば良いと思います。

またほとんどの商品ページでルース(石)を指輪に仕立てて手指に装着した写真を掲載し、大きさの目安を示しているのは「ルース屋」としては珍しく、大変わかりやすくて良い試みだと思います!

どうしても拡大写真で石を大きく見せる必要のある商売ゆえ、印象として大きく感じてしまいがちなので、勘違いで「届いた時の小さくてガッカリ感」をさせないのは大事なポイントだと思います。

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宝石店、アクセサリー店、天然石店、パワーストーン店、アクセパーツ・素材店…

これらは素人からすると類似で区別のつきにくい業種でもあると思われますので、大阪ウエルダーは何に強くて何が得意で何ができる(何はできないか)を端的にアピールしておくことも大事だと思います。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

大阪ウエルダーさんは現在、店長の速水宏恵さんと夫の昭彦さんがお2人で運営されています。

「大阪ウエルダー」という店名は、元は昭彦さんの家業で工業溶接(ウェルダー加工)をされていた思い入れのある社名の名残で、そのまま店名にされているとのこと。

ジュエリー・宝石の鑑定士やコーディネーターの資格をお持ちの宏恵さんが仕入と店長を、昭彦さんが撮影や画像加工、WEB管理、バックヤードの管理など。お2人で分担・協力して運営されているそうです。

天然石・輝石の中でも特に珍しく希少性のある種類の石をメインに、おもにレアストーンマニアのコレクターの客層に向けて販売されておられます。

ネットの普及で海外などから写真だけでキズや含有物などの細かい部分を確認できないままどっさりまとめて仕入れをして、その結果質の悪い物を安売りしている業者も多い中、大阪ウエルダーさんでは各地の展示販売会に出向いて1つずつ現物を自らの目で確認して、質の良い物だけを仕入れておられるそうです。

それゆえ、品質には自信がある一方で、数多くの確保は難しく、手間も労力もかかり、利益率が低いのも悩みであるようです。

現状はコレクターのリピーターさんたちの購入比率が高く、新規のお客様獲得も課題であるようです。おちゃのこ店に加え4年ほど前から楽天にも出店され売上は伸びてはいますが、出店費用や売上課金など、コスト高ゆえ値付けも少し高く設定して販売しておられるとのこと。

その他、ハンドメイド系のminne、creamaに出品。ポロポロとは売れている様子です。

楽天で特に広告などは行っておられないので、それほどの伸びもない状況で、おちゃのこ本店のほうは月額2万円程度の検索キーワード広告を試しているものの、広告効果はあるのかないのかよくわからない状況だそうです。

利益率を上げたくて販売価格を上げたところ、アクセス数は変わらないのに売り上げが上がらなくなり、そのまま今の価格でいくか、以前のように同業他社より安い価格の薄利多売に戻すか迷っておられるとのことでした。

SNSなどは8〜5年前はYoutubeに商品説明の動画をアップしていたそうですが、当時のパソコンでの重い動画編集の時間と手間から、現在はやっていないそうです。twitter、Facebook、Instagramなども手を出せておらず、おちゃのこの店長日記だけ。

お2人での労力・キャパ的には今の1.5〜1.6倍くらいが限界だそうなので、あまり多くのことはできそうにないようです。

総評

第一印象部分にも書きましたが、天然石・輝石・宝石の類の業種は、業界人にとっては種類の異なる商売でも、素人である消費者から見れば、類似で区別のつきにくい業種です。

宝石店、宝飾アクセサリー店、天然石店、パワーストーン店、アクセパーツ・素材店…

大阪ウエルダーはどの部分をメインに何ができて(得意で)、何はできないか?(例えばルースをアクセサリーに仕上げることはできない、スピリチュアルな運気・パワーストーンの効果などは取り扱わないなど)

店舗紹介・店長紹介で明確に掲示されておくと、意図したお客様層が集まりやすくなると思います。

また、お悩みの点(商品価格・利益率・収益性)に関しては、電話インタビューでもご相談いただきましたが、お2人の労力キャパが、2倍も注文がきたらオーバーしてしまうとのことからも、薄利多売戦略は合っていないと思われます。

それよりも、注文数や販売数は現状〜少しUPに留めても、総売上額や利益額を高めるように商品単価、客単価を上げる工夫をしていくことが必要です。

具体的には、単価の高い商品の比率を上げる。
→レア度・プレミアム度が高い石の仕入を増やし商品単価を上げる
→大き目(カラット数)の石を増やし商品単価を上げる
→セット売り商品を増やし客単価・注文単価を上げる
→ディスプレイケース・展示額など「楽しみ方提案商品」、利益率の高い商品をを企画し収益性を上げる

価格帯の高い商品群を目立たせるコーナーを設け、ブランディングSNSなどでプレミア商品を集中的にアピール、今より富裕層を集客。
→全体的な客単価を上げる&リッチ客層を増やす

限られた人員労力の小規模店では、以上のような戦略が向いています。

ライバルとの価格競争を意識しすぎて薄利多売戦略を取るには、現在の何倍も多売をしなければ利益を確保できませんし、業務効率や梱包出荷などの物流効率を上げるには、倉庫やITシステムなどの先行投資も多大に必要になってきます。

ネットショップを「通販業」と考えると、物流・ITシステムによる効率追求型のビジネスなので、多品種大量仕入れ、薄利多数出荷販売ができる資本力のある大手には勝てなくなってきます。

小規模企業・小規模ショップが生き残るには、付加価値を高め、客単価利益・商品単価利益を高めて、少ない注文数や出荷数でもしっかり利益の取れるモデルにしていかなければなりません。

不幸中の幸いで、現在は世の中・世界中でインフレ物価高基調ですので、値上げのチャンスです。ただ、むやみと値上げするだけでは客離れを起こして終わりです。値上げをするだけの理由と価値を示せれば、それでも買ってくれる客層はいるはずです。

大阪ウエルダーさんであれば、希少性の高い他店では入手しにくいレアストーン、大きい石、複数種類の組み合わせ(例3色セット、5色セットなど)や、見て飾って楽しむ意識の部分をくすぐるようなディスプレイケースや額、引き出し家具、キラキラ煌めきを楽しめる照明や回転展示台などの提案など、個人でも部屋の一部の空間をレアストーン展示スペースにして楽しんでいる方はいらっしゃると思います。

単に1個のストーンが欲しいという物欲だけでなく、いろいろなルースレアストーンを飾って楽しめるこんな空間がウチにも欲しい! のように思わせることができれば、大阪ウエルダーさんにとっての上得意客を育てることにも繋がります。

普通の石屋とは一線を画すようなこうしたソフトウェア的な提案があれば、他店と差別化できると思います。(意外と見せ方楽しみ方まで踏み込んだお店は見当たりません)

広義の意味での天然石ショップ業界は、どうしても価格競争になりやすい業種だと思いますが、狭義の意味でのレアストーンショップとしての大阪ウエルダーさんなら、自店の強みを生かした利益率・収益性の高い商売が可能なのではないでしょうか。

新戦略のアイデア出し、新企画など悩まれましたら、お気軽にご相談ください。以上。「ダメ出し!道場」でした!

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。