食パンのtonton

カテゴリ:食品、飲料

食パンのtonton

はじめまして!
いつも楽しく「ダメ出し道場」を拝見させていただいております。
実店舗は8年前に独立し、スーパーの中のインストアベーカリーを営んでいました。
あるお客様から「卵と乳製品を使わないパンを作っていただけませんか?」とご依頼をいただき、簡単に引き受けたものの、なかなかおいしいパンを作ることができませんでした。
やわらかくておいしいパンを作るには、卵や乳製品を入れるのがパン屋の常識です。ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返し、やっと出来上がったコッペパン。お客様は大変喜んでいただけました。

調子に乗ったボクは、お客様の笑顔が見たくって… クロワッサン、メロンパンなど、50種類以上のパンを作りました。

このことをブログに書いたところ、全国のアレルギーっ子のお母さんより、通販して欲しい! とのご要望を多数頂きました。 実店舗は焼きたてパン屋なので、焼きたてではないパンを宅配でお送りすることに抵抗がありましたが、背中を押されるように何もわからないまま2年前にネット販売を始めました。

当時はインターネットは検索しか使ったことがなかったので、htmlもCSSもまったくわからない状態でのスタートでしたので、今でも手探りの状態です。

ぜひ当店の至らないところ、改善すべきところの「ダメ出し」をよろしくお願いいたします。

食パンのtonton 井藤修

唐突ですが食品アレルギーの方はいらっしゃいますか?
ご本人でなくとも、お子さん、ご家族、お友達、お知り合いまで広げれば、何名かは食品アレルギーの方がいらっしゃるのではないでしょうか?

それほど珍しくなくなった食品アレルギーですが、当事者や、ご家族がアレルギーをお持ちの場合を除けば、意外と正しい情報や知識は持ってないものですよね。

消費者庁の食品表示についてちょっと調べてみましたところ、意外にも「法令で表示義務」があるアレルゲンとなる食品は下記7品目のみ。

卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生(ピーナッツ)

理由は、「発症件数が多いため、症状が重くなることが多く、生命に関わるため」とのこと。

その他、アレルゲン(原因物質)としてよく聞く下記食品類は、「表示を奨励」とされていますが、あくまで任意表示だそうです。

あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

理由は「過去に一定の頻度で発症が報告されたもの」とのこと。

上記の中でも原因物質としては、特に卵と乳製品 が圧倒的に高く(平成20年度の厚生労働科学研究 発表資料によれば)、この2つだけで59.8% つまり約6割を占めるようです。

今回の「ダメ出し!道場」のお店は石川県から、そのアレルギー原因のトップ2である卵と乳製品を使わないパンに特化したパン屋さんです! 卵と乳製品へのアレルギー体質の方、必見ですね!

それでは「ダメ出し!道場」第61弾スタートです!(^-^)

自店の強みをわかっているのにわかってない!?


EC仙人 太田

上記のご挨拶メールでも店長さん自ら書かれているように…
tonton さんは
「卵と乳製品を使わないパン」
「全国のアレルギーっ子にも食べられるおいしいパン」
に特化したパン屋さんですよね!?

であれば、店名は「食パンのtonton」ではなく
「卵と乳製品を使わないパン屋さん tonton」
のほうが適切ではないでしょうか?
創業時の思い入れや、実店舗との兼ね合いで店名を変えるタイミングや決断ができなかったのかも知れませんが…
名は体を表わす、店名だけでお店の【強み・特徴】を表わすことは、オンラインショップにおいては大切です。

「食パンのtonton」では、食パン専門店であれば悪くはありませんが、貴店の事業内容、商品内容からは適切ではありません。

少なくともオンラインショップでは思い切って店名を変えてみてはいかがでしょうか?

第一印象思いの強さが感じられ、伝わってくる!けれど…


EC仙人 太田

トップページを見れば、パンにかじりつく子供たちの笑顔があふれ、いたるところに「卵・牛乳アレルギー」「卵・乳製品不使用」の文字が目に飛び込んできますので、一瞬でアレルギー対応、特に卵・乳製品アレルギーの人でも食べられるパンを販売しているんだなぁ! とわかりやすいお店です。

また、「初めての方へ」や左メニューのコラムなどから店長の、アレルギーの子たちへおいしいパンを! という熱い思いもすぐに伝わってきます。

ここまでは、正にネット向き!
店舗中心に半径●Kmと言う実地域商圏ではなくて、特定の強いニーズを持った仮想商圏の全国顧客にピタリと適応する商品を宅配便を活用して提供する。
オンラインショップ事業モデルの典型と言えるようなお店です。

けれど…
バーチャルな商圏を想定したお店だからこそ、その対象商圏=お店のコンセプトや顧客層はもう少し明確にしなければなりません。

「卵と乳製品を使わないパン」というのが軸だとはわかるのですが…
商品ページやコラムなどを見ていくと「大豆アレルギー対応パンセット」もあったり。
でも、卵・乳製品に次ぐアレルゲン第3位である「小麦アレルギー対応」に関しては、チャレンジする意思があるのかないのかまだあいまいですね。

パン=小麦粉で作るものという定義だとすれば、米粉パンや他の穀物粉を使うと、もはや「パン」ではないかもしれませんし…
工場設備を二重化して完全分離するのは膨大な費用がかかりますので、同じ工場設備で製造すればコンタミネーション(製造過程での他の商品由来のアレルゲン汚染)によって、意図せずとも小麦粉が混入してしまうことは避けられないでしょうから、小麦無使用は一番難易度が高いことは十分理解できますが…
「小麦アレルギー」に悩む方も多いのは事実ですので、貴店の今後の選択肢の一つとしては可能性はゼロではないでしょう。

その他 下記、あんパン のように、「ごまアレルギー」対応を考えてごまのトッピングをやめた商品も見受けられたり…
http://www.tontonshop.com/product/156
工場に関してはナッツ類も持ち込まないとの表記もあったり。

また「トランス脂肪酸フリーのショートニングを使用」「防腐剤を使用しない 添加物について」などは、コラムやブログでの断片的な説明は見受けられるのですが、率直に外から見るとまだ店長さんとしても迷いや、情報・知識に関して不明確な点が感じられます。

ビジネスは生き物ですし、つねに環境変化があってそれに随時対応し、自らも変化して行く必要がありますが、アレルギー対応と安全安心な食を提供するという部分は、食品店にとっては中核(コアコンピタンス)に関わる部分ですので、これを機会に考えを整理されて、端的にまとめ、トップページにわかりやすく明示・宣言されるのが良いと思います。

何をコンセプトに何を売る店なのか?
(何は売らない店なのか?)

購入への客導線が弱い


EC仙人 太田

では少し具体的にダメ出しです。
まずはトップページにおいては、コンセプトやお知らせ、アレルギーについて等の情報部分にかなりの面積をとってしまっているために、肝心の中央部の商品陳列は、人気ランキングの単品5アイテムと新商品の6アイテムだけです。

一方で、顧客目線で貴店を見ると、本当に買いまわりしようと思うと左メニューの「商品カテゴリ一覧」の
・お得なセット
・食パン・食事パン
・テーブルロール
・ラスク
・惣菜パン
・菓子パン
・ミニ菓子パン
・その他の商品
の8ジャンルページが基点となって、どれを買おうかなぁ〜? と店舗内を巡回するのが客導線ではないでしょうか?

初めてのお客様と、リピーターさんでは若干導線は違うかもしれませんが、商品を一覧で眺めるにはこのジャンルメニューから各ジャンルに入るのが最もわかりやすい流れだと思います。
にも関わらず、トップページにおいて、この左メニューの存在感(目立ち度)は十分に強いとは言えませんね!
トップページ(店頭)の第一画面(スクロールせずに見える範囲)の中央部にちゃんと主導線を設けましょう!

肝心な商品ページが「思い」に負けている


EC仙人 太田

恐らく、初めてのお客さまで最も検討が多いであろう下記お試しセットのページですが…
http://www.tontonshop.com/product/168

何種類もの商品が入っているのでメイン画像はこれで良いにしても、実際にどんな種類のパンが、どのくらいのボリュームで入っているのか?

ずーーーーーーーーっと下に下にとスクロールして、ようやくどんな種類のパンが入っているかはわかりましたが、全体のボリュームに関しては結局個数から想像するしかありません。

まずはこの商品ページ上部でパンの名前付き一覧でざっと説明すると同時に、実際に1箱にどれだけのボリューム入っているかの写真を見せて、文字よりもビジュアルと直感でお客様に商品を感じていただく必要があると思います。

お店の、店長の思いが強いあまりに、お客様の一番の関心事である「どんな商品がどれだけ入ってるの? それを一番に知りたいのに!」になかなかたどり着けずストレスを感じさせてしまいます。

せっせとスクロールしてみれば、ようやく内容説明が始まったかと思うと大きな写真と説明は 食パン、クロワッサン、メロンパン止まりで、あとは「その他にもいろいろ、全10種類!」で画面上では3〜4cm四方程度の小さな画像とメリハリのない説明文。

うーん!そこが一番大事やろっ!
思わず漫才師のごとくツッコんでしまいました(^^;)

毎度のことですが、商品写真の手抜きは即、転換率(注文率)に影響します。食品の場合特に、お客様の本能である食欲に訴えるには視覚に訴えられる写真しかありません。

匂いも味も感じていただけない通販で視覚へのアプローチを妥協するのは、もったいない!の極みです。

個々の商品写真はもっと大きく美味しそうに再度撮影! セットの全商品のボリュームがわかる写真も撮影して、通販ショップとして分かりやすく商品陳列しましょう!

下記、菓子パンのミニパンセットのダンボール箱にどのくらい入ってるかの写真は良い例ですが…
http://www.tontonshop.com/product/169

これに加えて、袋から出して、大皿に全部盛り付けたらこんなにたくさん入ってる! とか、パン屋さんの店頭で自分で選んで載せるトレイに載せてみたらこんなにある!
とか、いずれにせよ、セットモノは、ボリューム感、お買い得感が一目でわかるようなビジュアルはぜひ用意しましょう!

ショップ内のバナーデザインはちょっと遊びすぎ


EC仙人 太田

店舗看板ロゴやメニューボタンの色合い、全体的な色のトーンなどはある程度統一感もあって良いのですが、後からひとつずつ手作りされたんだろうなぁという左上部の各セット商品のバナーは、グラフィックソフトでバナーを作るのが楽しかったのか?(^^;)ちょっと遊びすぎて統一感がなく、お店全体の印象を雑然と散らかった印象にしていると思います。

せめて、正方形なら正方形、角を丸くするならする、周りを枠線で囲むなら囲む、囲まないなら全部囲まない、価格表示の(数字の)フォントは同じものを使う、など一定の統一感は持たせましょう!

ただし、こういうタイプの(バナーデザインに凝るような)店長さんは、本業を忘れ、それに没頭してはダメですよ!(^^;)
努力家でITリテラシーも高く器用なあまり、自ら時間をかけてHTMLだの画像加工だの、バナーデザインだのについのめりこむ(笑)
ほらほらそこの店長さん!(tonton 井藤店長さん以外も!)
あなたの優先すべき仕事は商品開発だったり販売企画だったり、仕入れのコストダウンだったり、物流改善だったり、人材育成だったり!もっと重要で優先すべき仕事がたくさんあるはずですね!

デザインなどはうまく外注を活用したり、バイト・パートのデザイナーさんを探すなど工夫して、経営者として&商品開発者としての時間を作りだしましょう!

送料の見せ方(割高に見える)


EC仙人 太田

パンという比較的単価の安い商品を販売するだけに、送料との対比で送料が高く感じてしまいます。
http://www.tontonshop.com/help#02

例)東京750円、広島850円、宮城850円

でも実は貴社商品はすべて冷凍便でお届けのようですので、210円通常より高いのだと感じてもらえるような説明にしましょう。

一般的に、パンが冷凍便で届くとはお客様はイメージしにくいので
ヤマト宅急便 ( 地域別送料 )
↓↓↓↓↓
ヤマトクール便(全て冷凍でお届けクール便代210円込み 地域別送料 )
のように、さりげなくクール(冷凍)で届ける事を再認識させるか、いっそ210円引いた価格の表を用いて
例)東京 540円、広島 640円、宮城 640円 + クール便 210円
としたほうが印象としては送料が高く感じにくいかも知れませんね。

いずれにせよ、食品ショップにおいては運賃比率は通販利用をためらう切実な問題です。送料ダウンは運送会社との交渉やその他コストダウンで吸収して行くなど、今後の企業努力が必要な点だと思います。

その他ダメ出しモロモロ


EC仙人 太田

「tontonの食パンセット 」(7本分の価格で8本入ってる)
http://www.tontonshop.com/product/171
せっかくの食パン8本のボリューム感をぜひちゃんと8本分の写真を撮影して、しっかり見せましょう!

「大豆アレルギー対応パンセット」
http://www.tontonshop.com/product/174
大豆アレルギー対応パンの表記はこのセットにしかないのですが、個々のパンページにも大豆フリー 表示を一目でわかるようにされると良いでしょう。

卵×
牛乳×
大豆×
ゴマ×
のようなインジケーター表示を全商品に入れられてはいかがでしょうか?

「元祖チョココルネ」
http://www.tontonshop.com/product/157
「コンタミなし」という表記がいきなり出てきますが、このような専門用語は説明なしには使うべきではありません。アレルギーの方や家族を持つ方にとってはある程度は常識ワードかもしれませんが、やはり専門用語ですので使う場合は毎回説明を入れるか、説明ページへのリンクを張っておきましょう。
安易に使うと初心者に優しくない敷居の高いお店の印象になってしまいます。

コンタミ=コンタミネーション(contamination)
製造工程で前に作った製品の原料に含まれる材料によって、次の製品が汚染されてしまうこと。
(例)大豆を使ったパンを作った工程で、次に大豆を使わないパンを作っても、微量な大豆の粉などが混入する可能性があれば後の商品は完全に大豆フリーとは言えない。

総評

今回は正直、お店を見始めてからアレルギーに関するウンチクや食品添加物についての情報など、私もかなり興味をそそられ、他の専門サイトも参照しながらかなり時間をかけて拝見しました。

店長の事業にかける情熱や意気込みも強く感じましたし、動画を用いたりFacebookの活用など具体的なチャレンジも評価できる点です。

何より、卵・乳製品を使わないアレルギー対応パンに特化するコンセプトも明確で、市場の潜在ニーズも大きく、tontonさんのコアコンピタンスもしっかりしているので非常に将来性も感じました。

この店舗に限って言えば、中途半端な妥協や欲を捨て、せっかくのコンセプトをもっと明確に強調しアピールされると良いと思います。

また、法人としての 株式会社トントンハウスさんとしてはこのオンラインショップだけでなく
会社サイト:http://tontonhouse.com/
パン工場:http://factory.tontonhouse.com/
オンラインショップ:http://www.tontonshop.com/
ブログ:http://tontonhouse.com/index.php?QBlog
FBページ:http://www.facebook.com/tontonhouses/
Twitter:https://twitter.com/tontonhouse/
と広く取り組まれておられるようで、今後の取り組み・戦略次第では特にBtoBでは大きく化けるビジネスの可能性を感じます!

ぜひ一度お会いしてお話したいですね!
私もちょっと別のクライアントさんのビジネスとコラボできるのではないか? とアイデアが出てきました。
(あらためてご連絡させていただきたいと思います。)

最後に簡単な 提案ですがこんなキャッチコピーで端的に特徴を明示されてはいかがでしょうか?

卵パンもミルクパンも売ってません!

世間で人気のクルミパンもゴマもピーナツクリームも
あきらめました!

それでも味には妥協しません!
このパン 美味しいっ!と言わせたい!

一人でも多くのアレルギーっ子に
笑顔でパンにかじりついて欲しいからっ! (^-^)

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。