創業以来90年間皮革工芸品を作り続ける、文庫屋「大関」さん。
東京スカイツリーの足元、東京都墨田区にある工房を訪ね、店主田中さんにお話を聞きました。
そうですね、よく誤解されます。
もともと書籍や手回りの貴重品を入れる手箱のことを、昔は「文庫箱」と呼んでいたんです。
最初は木箱だったのですが、鞣 (なめ)し技術の向上で革を貼るようになり、高級感を出すためにさまざまな装飾をするようになりました。その結果、文庫箱といえば革で装飾された物を指すようになったわけです。
さらに、その革で作成した小物も文庫革と呼ぶようになりました。
こうした歴史にちなんで、文庫屋「大関」という屋号を名乗っております。
今年(2017年)で、創業90周年となります。
文庫革は、播州姫路の地場工芸であった姫路革細工が元になっていまして、江戸時代に姫路から持ち込まれた物が独自の発展を遂げて、当店の文庫革となりました。
横浜で修行していた祖父が墨田区に開業したのが始まりで、今は3代目の私が受け継いでいます。
元々は製造を中心におこない、卸中心で商売をしていました。
しかし特殊な商品なので、問屋さんに卸しているだけでは、購入者にはなかなか商品の魅力が伝わりにくいんです。
文庫革の魅力を伝えることができるのは、製造している職人の私達が一番ですので。
そこで直販を増やしていこうと考えました。
ネット通販であれば実店舗を開く必要もなく始められるので、2000年頃にネットショップを立ち上げました。
最初はモールに出店していたのですが、2007年頃に本店向けのネットショップを本格的に始めたいと思い、いろいろと調査していたところ、おちゃのこネットを見つけました。
コストパフォーマンスがよく、高機能で、使い勝手もシンプルでしたので、すぐに採用しました。
「おちゃのこネットは、1000万円以上売るためには機能が揃っていない」などという人もいますが、まったくそんなことはないですね。十分に必要な機能が揃っています。
ですから今でも、ネットショップをやりたいという方には、おちゃのこネットをオススメしています。
今は、ネットショップ担当が3名で運営をおこなっています。
受注・お問い合わせ対応で2名、ページ作りで1名ですね。
当店は1人2役の体制をとっていますので、ネットショップ担当の人も他に店頭の販売をおこなったりして、別のこともできるようにしています。
そうすることで、1人が休んでも他の人がネットショップを更新できる環境をつくっています。
商品画像をキレイに見せることに力を入れています。
一時期、リスティング広告をしていたのですが、反応が悪く広告をやめようと考えました。
しかし画像系の広告に変更したところ、反応がよかったんです。
これは、お客様が商品画像に注目しているということだなと思い、商品画像にこだわろうと考えました。
撮影は、すべて自社のスタッフでおこなっています。
撮影用のボックスを使いまして、新商品が出るタイミングでまとめて撮影しています。
必ずサイズ感、使ったときのイメージが伝わる商品画像を入れています。
ネットショップですと、どうしても手に取れないですから、細かいところまで伝えようと気を配って撮影しています。
それでも、「実物の方がよかった」とお褒めのお言葉をいただきます。
おちゃのこネットは、商品画像をたくさん掲載できるのが嬉しいところです。
商品1点につき2〜3枚の掲載では、商品の魅力を伝えきることができませんから。最低10枚ぐらいは載せたいですね。
動画は最近始めてみました。
テキストや写真を使って説明するよりも、動画で使い方を説明するほうが機能を伝えやすいと考えています。
実際に財布を開いてお金や小銭を取り出すところを撮影することで、使う人がイメージしやすいようにしています。
商品によっては使い勝手にこだわっている部分もあるので、そこを動画で重点的に見せています。
YouTubeにアップロードして、ネットショップのトップに貼り付けています。
YouTubeからの流入も見込めるので、SEO対策にもなると考えています。
5年前に実店舗をオープンしました。
浅草寺の近く、仲見世通りから一本裏の路地に入ったところにあります。
旅行者が多い場所ですので、実店舗で実物をご覧いただいて、その後ネットで注文をいただくことも多いです。
実店舗からネットへ、ネットから実店舗へと双方に誘導できるのが実店舗を持つメリットです。
ネットだけでは不安という方も一定数はいらっしゃいますので。
当店では受注生産はおこなっていないのですが、その代わりになるのが予約会です。
予約会は毎月おこなっていまして、商品の色柄を選ぶことができる商品を数アイテムご用意して、ヘビーユーザーのお客様に満足していただいています。
予約会の商品は3ヶ月後に納品という余裕を設けていますので、通常の製造ラインに載せることができます。これにより、職人さんの負担にならないようにしています。
リピーターになってくださっているお客様の中には、商品をコレクションしている方もいらっしゃいます。
そういった、既存の商品を買い尽くされているようなお客様にも満足していただける商品作りを常に考えています。
また、お客様の意見を取り入れた商品改良もおこなっています。すぐに実現できそうなことは、すぐ取り入れるといったスピード感を大事にしています。
そのために、職人さんと一体感を持って、商品作りをおこなっています。
実店舗を増やそうと考えています。
まだ、場所は言えませんが、商品にふさわしい場所を選定しているところです。
戦前はアメリカにもオリエンタルな商品として輸出していたそうですので、海外向けの販売も考えています。
海外の方に気に入ってもらえる商品だと思っていますので、挑戦してみたいですね。
職人さんの立場から見ると、良い物が売れないと技術が継承されません。売れない技術を身につけても食べていけないからです。
売れないと、開発もできず、新しいこともできません。何もできなくなってしまいます。
そういう悪循環に陥らないように、良い物を作り、それがきちんと売れていく環境作りを進めていきたいと日々動いています。