旭彫刻所ウェブショップ

旭彫刻所

ネームプレートや表札などの彫刻加工品を製造直売

創業60年近い歴史を持つ「旭彫刻所」は、もともとメーカーの下請けなどで銘板やパネル、名札などの工業彫刻を手掛けていました。しかし仕事の多くが工業系シールに取って代わられ、事業転換を決意。2007年からネットショップでオリジナルのネームプレートなどを受注制作して販売するようになりました。将来を見据えた多額の設備投資も行っています。そんな現在の状況とこれからの展望を、社長の福田信夫さんにお聞きしました。

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このご商売はいつ頃からですか?

先代が商売を始めたのは昭和30年代半ばです。私は1982年から引き継ぎました。仕事の内容は、「工業彫刻」というジャンルです。たとえば機械の「銘板」や操作パネルの表示部分を彫っていました。昔は金属やプラスチックに印刷するコストが高くて、納期もそれなりにかかりました。うちのようなところでやれば、低コスト短納期でできますから、彫刻ですませることが多かったですね。
それが印刷技術の発達で工業系のシールに取って代わられるようになり、われわれも生き残りをかけて方向転換をすることになりました。その一環として始めたのがネットショップです。2007年にスタートしました。

どんなふうに方向転換を考えられたのですか?

それまでは刃物を使う機械で金属やプラスチックに彫刻をして、彫ったところに色を入れることで製品を作っていましたが、個人のお客様を視野に入れるために、応用範囲を広げようとレーザー彫刻の機械を導入しました。それも炭酸ガスレーザーとYAGレーザー(イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザー)の2種類の機械を一気に導入したんですが、まだ世の中に普及していなかったYAGレーザーはすごく高くて、うちに入ったのは量産型の1号機です。

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どうして2種類のレーザー彫刻機が必要だったのですか?

炭酸ガスレーザーは金属の彫刻ができませんが、YAGレーザーはできます。この2台を使えば、刃物でやっていた仕事のかなりの部分を置き換えることができます。ただし、非常に細かい精度が求められる仕事になると、やはり刃物のほうが優れているので、うちではまだ刃物を使う機械も置いてあります。

以前はほとんどがB to Bのお仕事で、事業転換してからは個人向けのお仕事に変わったということですか?

いや、今でも会社対会社の仕事のほうが多いですね。比率的には下請け的な仕事とwebショップが半々くらいですが、webのほうも法人名義の発注が結構あって、webショップのうち3分の1くらいが個人のお客様です。残りの3分の2はクリニックさんとか歯医者さんとか。直接頼んでいただける個人のお客様というのはまだ少ないですね。

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個人客よりも、ある程度数がまとまる法人客ほうが、ご商売としてはいいわけですね。

でもうちは名札ひとつから受注製作しています。1個399円の商品からありますが、データの校正をほしいと言われれば、メールやFAXで校正をお送りしてOKをいただき、それから彫って色入れをして製品にしています。結構手間がかかりまして、色も人の手で入れているため、正直なところ、名札1個だと儲かりません。

そして、今回また新たな機械を導入されるわけですね?

はい。レーザー彫刻機を2台入れたときは年間売上の半分くらいの投資額でしたが、今度は年間売上そっくり使う規模です。カッティングシートの機械、昇華転写の機械、水圧転写の機械、サンドブラストの機械、UVプリンターなどが入る予定です。すべて揃うと、印刷と彫刻を組み合わせた、どこにもない技術の製品が世に出せるようになります。
一般のお客様には知られていないことですが、私どもの技術は他に引けを取らない高度なものです。同じ機械を持っている競合でもバリが出る、色ムラが出る、ヒビが入るといった技術的に困難な仕事でも、うちならきれいな製品として世に出せます。そんな技術をもっと広くアピールするために、思い切った投資をしました。これからさまざまな商品を提供していく予定です。

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こういう技術を残していくことが日本のものづくりをクオリティを上げていくわけですね。

それを認めていただけるといいんですけどね。世の中に。

おちゃのこネットを選んだ理由は何でしょうか?

その当時選んでくれた者が今いないんで、はっきりとはわからないのですが、ネット販売をしようと思ったとき、いろいろなところを検討して、費用と効果を考えて、一番いいと考えたのだと思います。

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ネットショップの運営は何人で?

ネットショップ担当者が受注をして、イラストレーターでデータを作り、その後は加工担当者の手に渡ります。それからパートの人に色を入れてもらって発送作業です。ですから3人ですかね。質問に答えたりするのはネットショップ担当者です。

ネット販売で困ったこととかはありますか?

製作工程を実際にご覧いただけると納得してもらえると思うのですが、外からはこの複雑な工程がわかってもらえないので、「もう少し安くならないのか」とはよく言われます。作っているところを動画に撮ってお見せするようなことを考えたほうがいいかもしれません。

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個人のお客様はどんな方ですか?

「名札をなくした」とか、「建売住宅を買ったが表札が気に入らないのでオリジナルに変えたい」とかのお客様です。あとは鉄ちゃんの方々から鉄道関係のプレートのレプリカを作ってほしいという依頼が来ることがあります。そっくりな書体で、同じ色でと細かく注文されますが、しっかり対応しています。お客様は全国各地に散在しています。

ネットショップで一番力を入れているのはどんなところでしょう。

月並みですが、電話の対応やメールの対応ですね。相手が目に見えないので、気を使っています。

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リピーターの割合は?

ほぼ全員がリピーターの方です。最初にまとめてメンバー全員の名札を作られて、そのあと補充の注文とか、名字が変わったとか、出世したとかで必要な分を注文されます。

サイトに新しい機能を取り入れたりはしていますか?

おちゃのこさんは結構マイナーチェンジをしているんですけど、なかなか気づかないんですよ。気づいたら使っています。いつの間にか変わっているんですよね。ご案内をいただいているのだと思いますが。

おちゃのこネットで「これは便利」という点は?

とくになにがということはないんですが、ヤフーさんや楽天さんにひけを取らないんじゃないかと思います。全体的に「この価格で使っていいのかな」といつも思っています。

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「もっとこれがあったらいいのに」というご要望はありますか?

うちはオーダーメイドの商品が多いので、注文を受注管理画面からこちらで入力することが結構あるんですけど、そのときに郵便番号を入力したら住所が出てくるようになっていると便利なのになと思っています。お客様の注文画面ではできるのに、受注管理画面からはできないので、それもできるようにしてほしいと思います。今は仕方がないのでメールから住所をコピーしています。
あと、楽天さんとかヤフーさんだと、ステップ別に注文が別画面で出るんですけど、そういうふうだと注文残がどのくらいあるのかがわかりやすいんじゃないかと勝手に思っています。
それから、最近はフリマアプリとかでクリックポストを使うケースが出てきているので、CSV出力にそろそろ対応してほしいなと思っています

これからいろいろな製品が登場するわけですね。

ただし、悩みもあります。製品の素材を扱っている日本の会社が扱いをやめてしまったりするんです。今作っているフォトフレームも、中国から輸入していた会社が扱わなくなったので、急遽うちのほうで輸入することにしました。国内でできないかとあたってみたのですが、コストが高くて合いません。
銀行や百貨店の名札でよく見かけるパールの板も、日本のメーカーが製造を止めてしまったので、今後はどうするのか考えなくてはなりません。うちみたいな小さな会社が中国から輸入するというは冒険なのですが、それをやらないと商売を続けられなくなってしまうので、痛しかゆしです。

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※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。