Vol.82022.7.25
アトリエansan

職人歴70年以上の切子職人藤本幸治さんの切子ランプシェード

関西ローカル番組や新聞で多数紹介されている伝統的な切子柄が人気

技を探求するガラス切子職人 藤本幸治さん

アトリエAnsan:https://www.ansan05.net/
藤本幸治さん

切子柄のランプシェードを販売されているアトリエAnsan長野りえさん(大阪市)を取材しました。

今年2022年に93歳を迎える藤本さんは20歳の時、絵が得意な自分はガラス加工に向いているのではないかと弟子入り。当時、内気な性格だった藤本さんにとっては居心地の良い職場でした。最近のテレビ取材の中で、ガラス加工を選んだ理由として、「人としゃべるのが嫌やった」「(ガラス加工)なら黙っとっても仕事ができますからね」と話されています。しかし、今は当時の雰囲気が想像できないくらい、話好きでとても優しい人柄が出ている藤本さんです。ぜひ、テレビ紹介された映像を見ていただきたいと思います。

弟子入りから8年後の1958年(昭和33年)に独立。当時、ガラス加工業が盛んだった大阪は職人を雇い、深夜まで作業しても注文に追いつかないくらいだったそうです。しかし、その後、一度に大量のガラス加工ができる機械を導入した工場が増えていき、これまでの町工場は太刀打ちできなくなり、閉鎖に追い込まれました。また、中国から安価なガラス素材が流通したことで、これまでのガラス細工は壊滅的な打撃を受けました。目に見えて、仕事が減っていく状況を目の当たりにした藤本さんは日銭を稼ぐために、ガラスでできた電球カバーの加工を受けるようになり、約2年間耐え忍んだといいます。このままでは生き残るは難しいと考え、サンドブラストという細かな砂の粒でガラス表面を加工する機械を導入。すりガラスと切子を組み合わせた独自の技法を取り入れた商品が評判となり、新しい一歩を踏み出すことになりました。

ガラスでできた電球カバー

人気は切子柄のランプシェード

アトリエAnsanの長野さんはインテリア関連の仕事をしていたこともあり、既に藤本さんのランプシェードの取り扱いしている実店舗コバルトブルー(大阪市)とのつながり、ネットショップの知見を活かし、2005年におちゃのこネットでネットショップを開設。来店されたお客様には店舗で直接見ていただき、遠方で来店が難しいお客様はアトリエAnsanのネットショップより購入いただくことができます。

また、新作のデザイン案やアイデアは来店されたお客様、購入されたお客様のご意見を集約したものを藤本さんに伝えられ、細かな設計はすべてお任せするスタイルで次回作が生まれていきます。これまで数々の切子ランプが制作販売されてきましたが、長野さんにお気に入り商品3つをお聞きしました。どれも国産ガラスの手作り。きめ細かく丁寧に模様が施されていて、ランプシェードの耀きはもちろん、投影される影も楽しめます。

ポンポン花切子138ペンダントライト クリア
菊つなぎ花切子ペンダントライト200
キャンドル切子A丸型138クリアk

これらの切子ランプシェードは個人のお客様はもちろん、古民家でカフェをされているショップ事業者にも人気で、遠方から来店される方も多いようです。また、テレビ番組での紹介がきっかけで、これまでインターネットで買い物をしたことがないご高齢者の方へのきめ細かな対応もされていて、実店舗、ネットショップとの連動により、オムニチャネル※のような販売チャネルがお客様の高い満足度につながっています。

※オムニチャネルとは
店舗やネットショップ、SNSなど、オンラインとオフラインを問わず、あらゆるメディアを活用して顧客と接点を作り、購入の経路を意識させずに販売促進につなげる戦略のことを指します。

実店舗
コバルトブルー(大阪市)で、藤本さんの作品を直接見ていただくことができます。

今年は展示会を開催したい

コロナ禍において、実施ができなかった奈良での藤本さんの展示会を今年2022年秋に開催予定しています。直接ネットショップの売上にはつながるわけではないが、藤本さんとお客様が交流できる場を設けるという意味を込めての開催で、通常業務のガラス加工をしながら、展示会に出品するための異なる素材のガラスを使った切子ランプが藤本さんによって精力的に進められています。93歳とは思えないエネルギーはお客様の喜びの声、感謝の手紙に支えられ、メールで寄せられたお礼はすべて印刷して、藤本さんに届けられています。

2015年に奈良で開催された展示会の様子
2015年に奈良で開催された展示会の様子

取材を通して、アトリエAnasanは切子職人藤本さんとの共に唯一無二のブランドが確立している印象を受けました。ヒット商品というと、商品そのものに注目されがちですが、ブランド作りという視点では、有形無形問わず、人に選ばれる必然的な理由があり、それが他の違いを作り出すことになります。

アトリエAnasa長野さんに取材させていただきありがとうございました。いつまでもお元気で職人藤本さんの作品が見れることを楽しみにしています。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。