Vol.62022.3.22
独自のメガネブランドGROOVER

日本最古のメガネ作りを継承した製法は海外からも熱視線

世界中の著名人に愛用されている独自のメガネブランドGROOVER

メガネナカジマの中島正貴社長

世界中の著名人に愛用されている独自のメガネブランドGROOVERを立ち上げたメガネナカジマの中島正貴社長を取材しました。

アイドルのメガネが特定されるまでわずか2時間

メガネナカジマ Style N ウェブショップ:https://www.style-now.net/

欅坂46(けやきざか)というアイドルグループをご存知でしょうか。ある日、新曲のミュージックビデオがYouTubeに公開されると、いつものようにネット上ではアイドルが身に着けているアイテムの特定が始まりました。そして、わずか2時間でセンターを務めていたアイドルのメガネブランド名と販売されているショップが特定され、メガネナカジマは突然の鳴りやまない電話を受けることになりました。

芸能人の私服がネット上で特定され、話題になることがよくありますが、メガネはサイズと形状から特定が難しいと言われています。ところがセンターを務めたアイドルが着けていたメガネはメガネナカジマのプライベートブランドGROOVER(グルーヴァー) であることが、2時間という速さで特定されたのです。この出来事はGROOVERの存在感を理解するには十分なエピソードだと言えます。また、愛用している著名人についても、GROOVERのオンラインショップで見ることができます。

上記のオンラインショップは2019年7月にはおちゃのこネットで開設。オンラインでもご購入いただけます。

GROOVER 誕生のきっかけ

GROOVER

メガネナカジマは平成不況のあおりを受け、店をたたむことを計画していたが、創業者であるお父様の体調不良により20歳で事業継承。国内の眼鏡市場は6,000億円から3,000億円と縮小していく中、これまでの眼鏡業界における商習慣、デザインに対する考え方など、中島社長にとって、納得できない出来事が多く、これがプライベートブランドGROOVERを立ち上げる原動力となりました。

GROOVERを立ち上げた2007年当時、周囲の反応は冷ややかで、中には嫌がらせする同業者がありました。2011年には全国展開を目的に展示会に出展するも、直後の東日本大震災の影響もあり、仕入れたいという業者は現れなかったのです。そして、日本国内の展開は難しいと感じた中島社長は海外展開を決意。北米、ヨーロッパなど各地をまわり、飛び込み営業を行った結果、徐々に仕入れたいという業者が現れました。

しかし、ここで新たな問題が露見。眼鏡の生産、供給が不安定であるという問題です。眼鏡の生産は取引先の職人によって支えられており、悪く言えば、気分次第という面があったため、海外業者との取引において、これまでの生産体制が事業のボトルネックになってしまったのです。このことが自社工場の必要性につながったのです。

GROOVER

自社工場GYARDを開設

遡ること100年前、現在の眼鏡産地である福井県鯖江市に眼鏡作りを教えたのは東京と大阪の職人でした。東京の眼鏡作りの歴史は古く、江戸時代までの遡ることができます。しかし、時代とともに大量生産かつ安価で提供するトレンドのあおりを受け、2011年の春に途絶えることになりました。一方で、中島社長は海外展開を軌道に乗せるためには、2011年で途絶えた工場を自社工場として復活させる計画を立てたのでした。当時工場で働いていた職人のうち4人から賛同を得ることができ、2015年12月 横浜に伝統製法を継承した工場を自社工場「GYARD」として復活させることができました。

自社工場GYARD

根強い人気のブランドの秘密はローカライズ

メガネナカジマ

プライベートブランドGROOVERは「変わったデザインを作ろう」というコンセプトを持ち、特に30~40代をメインターゲットにデザインされた眼鏡を手掛けています。業界を俯瞰すると、10年前は国内外ともにニーズに大きな違いはなかったのですが、近年は国産眼鏡ブランドの海外進出は減少傾向にあります。これは国内と海外でのニーズに違いが出始めているからです。一方、GROOVER は他社の国内ブランドとは反対に2019年ニューヨークで高く評価され、2020年以降コロナ禍にも関わらず、カナダ、フランス、韓国でも人気が飛び火。海外でも高い評価を得る理由として、中島社長は「ローカライズさせることに強みがある」と言う。毎日、各国の販売代理店とコミュニケーションを取り、顧客ニーズやトレンドの情報収集には余念がない。

また、海外では眼科は脳神経外科の分野であり、検眼そのものが高度な医療行為とみなされています。検眼費用が日本円で1万円ほど掛かることが普通であり、結果的に眼鏡に対するこだわりが国内外の差を生み出していると国内外のマーケットの違いを指摘しています。

メガネナカジマ

JETROの支援による海外展開

GROOVERの海外展開はJETRO(ジェトロ)の支援メニューを活用しています。基準を満たせば、どの事業者でもJETROを活用することができ、各地域での販路開拓などを支援してくれます。GROOVERの海外展開では約5年という比較的長い期間の支援を受け、うまく軌道に乗ることができています。

補足になりますが、海外展開を考えているショップ事業者にはJETROの支援メニューの活用がおすすめです。前述とおり審査があり、事業計画の作成やプレゼンテーションなど様々な準備が必要ですが、このプロセスを経て、自社のビジネスは磨かれるので、公的機関の活用は有効なリソースとなり得ます。また、JETROとは少し異なりますが、各国の大使館も海外展開の支援を行っており、例えば、家族で海外移住する際の子供の学校選びなどを手伝ってくれる大使館がありますので、進出先の大使館への問い合わせをおすすめします。

ユーザーの情熱をどう計るのか?

メガネナカジマ

昨年2021年秋に新しいスポーツメガネのブランドXAZTLAN(ザストラン)を立ち上げました。将来的にはスポーツアパレルやスポーツチーム運営などを目指すスポーツブランドという位置づけで誕生したブランドで、既にアスリートへの提供が行われています。販売当初から問い合わせが多く、アジアを中心に出だしは好調のようです。

また、新しいブランドや商品づくりにおいて、「自分たちが好きなものを出す」信念を持っており、「マーケットの声は社内では一切議論しない」と言います。そのことは逆にバイヤーを説得するコストが高く、売れない長い時間を過ごすことになり、「忍耐が必要」とも中島社長は振り返ります。

しかし、自分たちの商品に強いニーズがあることを理解しているからこそ、エンドユーザーへの訴求に力を入れており、現在は展示会への出店よりも、SNSでの訴求に注力しています。商品に対する「ユーザーの情熱はSNSで測る」ことができると中島社長の正面突破の戦略が垣間見えるのです。

安価で手に入る時代はあらゆるものが平均化、標準化される時代と言うことができ、結果的に個性がなく、どこか寂しさを感じます。しかし、中島社長のインタビューを通して、みんなと同じであることをやめる、平均的であることをやめるという強いメッセージが込められているように思います。GROOVERというプライベートブランドを通して、人として、商売人としてもっとも本質的なテーマを日々探求する姿を感じ取ることができました。

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。